第103回国会(臨時会)
答弁書第一号
内閣参質一〇三第一号 昭和六十年十一月五日 内閣総理大臣 中曽根 康弘
参議院議員秦豊君提出靖国問題の基本的認識に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員秦豊君提出靖国問題の基本的認識に関する質問に対する答弁書 一から三までについて 内閣総理大臣その他の国務大臣の公的な資格での靖国神社への参拝(以下「靖国神社公式参拝」という。)については、去る八月十五日、国民や遺族の方々の多くが、靖国神社を我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとし、同神社において公式参拝が実施されることを強く望んでいるという事情を踏まえ、祖国や同胞等のために尊い一命を捧げられた戦没者の追悼を行い、併せて我が国と世界の平和への決意を新たにする目的で実施したものである。
四について 去る八月十五日の靖国神社公式参拝は、憲法第二十条第三項で禁止されている「国の宗教的活動」に該当しないから同項に違反せず、したがつて、憲法第九十九条に違反することもないと考える。 五及び六について 靖国神社は宗教法人法に基づく宗教法人であり、アーリントン墓地は国立の墓地であるという点で異なる面はあるが、去る八月十五日の靖国神社公式参拝は、国民や遺族の方々の多くが同神社を我が国における戦没者追悼の中心的施設であると考えているという事情を踏まえて実施したものである。 七及び十四について 日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)第十一条により、我が国は、極東国際軍事裁判所の裁判を受諾している。 八、九、十二及び十三について 去る八月十五日の靖国神社公式参拝は、戦没者の追悼を行うことを目的とするものであり、過去に我が国が行つた行為を正当化するような意図によるものでは全くない。また、我が国は、過去においてアジアの国々を中心とする多数の人々に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立つて、平和国家としての道を歩んで来ており、かかる反省と決意にはいささかの変化もない。 十及び十一について 中国側が種々の機会を通じて表明した見解は十分承知している。今後の日中関係については、両国が、率直な意見交換を通じ、相互理解を増進し、両国友好関係の一層の増進に引き続き取り組むという折り目正しい態度を堅持していくべきものと考える。 十五について 去る八月十五日の靖国神社公式参拝は、戦没者の追悼を行う目的で実施したものであり、御指摘のような問題とは関係がない。 十六について 御指摘のような打診をしたことはない。 十七について 靖国神社公式参拝は制度化されたものではないので、今後、これを実施するかどうかは、その機会があるたびに、内閣総理大臣その他の国務大臣がそれぞれ判断することとなるものと考える。 十八について 次回東京サミットでは、各国の元首等に対して靖国神社への参拝を要請する考えはない。 十九について 靖国神社の合祀対象者の範囲は、同神社が決定しているところである。 二十について 去る八月十五日の靖国神社公式参拝は、国民や遺族の方々の多くの要望にこたえて実施したものであり、御指摘の「戦後の総決算」といつたようなことを意図して行つたものではない。 |