質問主意書

第103回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二三号

公営住宅の入居収入基準等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  昭和六十年十二月二十一日

藤原 房雄   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   公営住宅の入居収入基準等に関する質問主意書

 昭和二十六年に公営住宅法が制定されて以来、全国で二百三十万戸を超える公営住宅が建設され、管理戸数は昭和五十九年度末で百九十万戸に達している。
 公営住宅制度は、住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃の賃貸住宅を供給するものであり、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与するところは極めて大きく、政府においても計画的な事業の推進に努めてきていると思われるが、入居収入基準等に関して質問する。

一 公営住宅法施行令の規定によると、現在、入居収入基準は、第一種公営住宅が八万七千円超十四万一千円以下、第二種公営住宅が八万七千円以下となつている。
 入居収入基準は、住宅に困窮する低額所得者に対して住宅を供給するということから、所得分位の下から三分の一をカバーするというところで定めているわけであるが、現在、カバー率はどのような状況になつているか。

二 現行の入居収入基準は、昭和五十七年八月に改定されたものである。従来、二年ないし三年ごとに改定されてきており、前回改定より既に三年を経過していることから、現行の入居収入基準は、その後の所得水準の向上等により、実態にそぐわないものとなつていると思われるがどうなのか。

三 現行の入居収入基準は、第一種・第二種ともに、地域・地区にかかわらず全国一律の基準となつている。
 大都市と地方では給与水準も違えば生活費も異なるわけであり、現に、公営住宅建設工事費単価や用地費単価は数地区に区分して設定されている。
 これらに準じて、入居収入基準においても地域ごとに、所得や住宅事情等を考慮して定めるべきであると考えるがどうか。

四 入居者の選考については、公営住宅法第十八条において、「事業主体の長は、入居の申込みをした者の数が入居させるべき公営住宅の戸数をこえる場合においては、住宅に困窮する実情を調査して、政令で定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、当該公営住宅の入居者を決定しなければならない。」と定められているにもかかわらず、現実には公開抽せん方式が一般的である。
 この方法では、応募者の住宅困窮度の高低に関係なく一律に選定されるため、困窮度の高い者が長期間放置され、困窮度がそれほどでもない者が早期に入居する場合があるという不都合が生ずることとなる。
 真に住宅困窮度の高い者から入居させようとするためには、一定の選考基準に従つて、困窮度を点数で表わして点数の高い者から入居させる制度や、住宅に困窮する者をあらかじめ登録し、登録期間の長さに応じて入居できるようウエーティング・リストを地方自治体で作成するなど、登録簿により困窮度を判定して入居者を決定する制度等の普及を促進すべきと考えるがどうか。

五 会計検査院の昭和五十九年度決算検査報告によると、入居基準を超える収入がありながら、そのまま住み続けている世帯が全体の三割にものぼつていることが指摘されている。
 公営住宅制度の本来の趣旨に沿つて、入居できずにいる低所得者層との公平を欠くことのないよう適切に対処すべきと考えるがどうか。

  右質問する。