質問第一八号
防衛施設周辺地域における住宅防音工事及び住宅防音家屋空調施設維持管理費の助成に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。
昭和六十年十二月六日
喜屋武 眞榮
参議院議長 木村 睦男 殿
防衛施設周辺地域における住宅防音工事及び住宅防音家屋空調施設維持管理費の助成に関する質問主意書
政府は、防衛施設周辺における航空機騒音対策として、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第四条に基づき、第一種区域に所在する住宅について、防音工事の助成を行うこととしている。
しかしながら、この住宅防音工事の助成は、「当該指定の際現に所在する住宅」だけを対象としており、また第一種区域の指定基準である「うるささ指数」(WECPNL値)は過去二回改訂され、それに伴い第一種区域も拡大されてきた結果、例えば、沖縄県嘉手納町のように、昭和五十三年十二月二十八日に全町域がWECPNL値八十五以上の指定がなされた区域にあつては、それ以後に新築された住宅には防音工事の助成はなされず、これに引き換え、昭和五十六年七月十八日と昭和五十八年三月十日の告示に基づき区域指定がなされた近隣市町村では、嘉手納町に較べると爆音被害が軽いにもかかわらず、昭和五十三年十二月二十八日以降に新築された住宅についても防音工事の助成が受けられるという大きな矛盾が生じている。
このことは、私が昭和五十九年四月十七日に提出した「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の運用に関する再質問主意書」に対する政府の答弁書(内閣参質一〇一第一二号)の中で、政府も認容しているところである。
また、一方、住宅防音工事に伴い、空調施設の維持管理に要する経費は地域住民に過大な負担を強いる結果となつており、沖縄県議会が、昭和五十六年三月に提出した「基地周辺防音住宅維持管理費の国庫負担に関する意見書」でも指摘されているように、「電気料金が月額平均五千円の負担増となるため、防音施設等を利用しない世帯が増えつつあり、騒音被害による生活環境に逆戻りせざるを得ない状況にある。」といわれている。ここにおいても、政府の施策に矛盾が生じているといえよう。
したがつて、以下の点について政府の見解を伺いたい。
一 住宅防音工事の助成について
前述のような矛盾が典型的にあらわれている地域として、例えば、嘉手納飛行場周辺では嘉手納町、北谷町等がある。特に、嘉手納町では町面積の八十五パーセントの土地が軍用地に接収され、居住地域がせばめられ、他に代替地がないために宅地造成難を招き、その結果、人口密度は一平方キロメートル当たり、昭和六十年九月現在で、六千四百四十二人と異常な高さとなつている。
さらに、沖縄は一般的に親族関係の結びつきが強く、また国土庁が昭和六十年四月に発表した地価公示では県内の地価上昇率は東京に次いで全国二位の上昇率であり、住宅地の価格も九州の中では二番目に高いという実態にある。そのため、子供が結婚して独立するとき、親の敷地内に家を建てるケースも多く、その場合には、告示後に新築した住宅は助成の対象外となり、他地域はおろか、同じ敷地内であつても、助成を受けられる住宅と受けられない住宅が出るなど、住民の生活感情上、微妙かつ深刻な問題が生じている。
しかも、嘉手納飛行場等周辺における爆音は、沖縄県議会が昭和五十九年十二月に提出した「米軍飛行場周辺の爆音被害解消に関する意見書」の中でも指摘されているように、国の定めた航空機騒音に係る環境基準をはるかに超えており、人体への影響が憂慮される状況にある。
政府は、前回の答弁書(内閣参質一〇一第一二号)の中で、「住宅の防音工事の助成に関し、御指摘のような差異があることは認識している。」と答弁しているが、加えて、このような「沖縄の特殊事情」については、どう認識しているのか。
地元住民の困苦に真剣に配慮するならば、告示後の住宅防音工事の助成についても、その救済策を具体的に検討する時期にきているのではないか。政府の所見を伺いたい。
二 住宅防音家屋空調施設維持管理費の助成について
(一) 「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」と「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」との立法趣旨が同じであることは、私が昭和五十九年四月十七日に提出した「防衛施設周辺地域における民家防音家屋空調施設維持管理費に対する国の助成に関する質問主意書」に対する政府の答弁書(内閣参質一〇一第一三号)により明らかである。
それにもかかわらず、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律第八条の二に基づいて防音工事が行われる住宅に対しては、空調施設の維持管理費についても助成が行われているのに較べて、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第四条に基づき防音工事が行われる住宅については、そのような助成措置はない。
特に夏が長いため、空調施設を使用する期間も長い沖縄の事情を考える時、このようなアンバランス是正について、政府の態度はどうなのか。
また現在、具体的に検討している対策はないのか。前回の答弁書(内閣参質一〇一第一三号)では、この点に対する政府の答えがなかつたので再度伺いたい。
(二) 1 空調施設の維持管理に要する経費は、地元住民にとつて過大な負担となつており、中には防音施設を使用しない世帯もあるといわれている。政府はこのような状況を認識しているか。
2 また、国の予算で防音工事が行われた住宅が、そのような使い方をされているとするならば、まさに施策の破綻を示すものに他ならない。したがつて、予算を有効に使うために、防音工事を行つた住宅に対しては、空調施設の維持管理に要する経費についても補助し、整合性のある施策を実施するべきではないのか。
(三) 住宅防音工事に伴う空調施設の維持管理費についても、防衛施設庁は、生活保護世帯を対象に、昭和五十四年度から予算要求しているが、いまもつて認められていない。生活保護世帯に対しても配慮することのない財政当局の態度は、誠に遺憾であるが、認めない理由を具体的に明らかにされたい。
右質問する。
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