質問主意書

第103回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一七号

OTHレーダーに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年十二月三日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   OTHレーダーに関する質問主意書

 OTHレーダーの導入については、現在鋭意検討が進められているが、それに関して質問する。

一 元来、OTHレーダーの導入は、米国政府からの要請に基づくのか、それとも日本政府の発意なのか。

二 数年前、航空自衛隊は、OTHレーダーについての基本的な検討を行つたことがあるのか。
 検討を行つたことがあるとすれば、その際、どのような結論を出したのか。

三 今回改めてOTHレーダーについて、調査・検討を行うことになつたのは何故か。

四 OTHレーダーの導入検討は、防衛庁の制服組からではなく、内局の唱導によつたのか。

五 あるいは、防衛庁内局よりも首相官邸サイドが、リーダーシップをとつたのか。

六 昨年秋、防衛庁内局が、OTHレーダーの検討について、統合幕僚会議の第五幕僚室に指示を与えたのか。

七 昨年暮れ、統合幕僚会議の第五幕僚室は、OTHレーダーについての検討結果を、報告としてまとめたのか。

八 報告としてまとめたとすれば、それはどのような内容か。

九 OTHレーダーの性能上の限界については、その報告書には、どのように記されていたのか。

十 OTHレーダーについて、その他の問題点としては、どのような指摘がなされていたか。

十一 OTHレーダーの最大探知距離は、どれくらいか。

十二 OTHレーダーの死角については、どうか。

十三 OTHレーダーの精度は、どの程度なのか。

十四 一部では、東京駅を起点として、西は府中、南は羽田程度の範囲に存在する航空機なら、その機数の判別はできないとも報ぜられているが、どうなのか。

十五 いわんや、OTHレーダーによる機種や艦種の判定は、不可能ではないのか。

十六 OTHレーダーによる高度の測定は、どうなのか。

十七 OTHレーダーによる、敵・味方の識別は、可能なのか。

十八 OTHレーダーは、五メガヘルツから二十八メガヘルツの短波のドップラー効果を利用するのか。

十九 その場合、レーダーから見て縦方向はよいとして、横方向に移動する物体は、把握できないのではないか。

二十 対象物探知の確率は、電離層の不安定性によつて左右されるため、かなり低いのではないか。

二十一 政府は、OTHレーダーの信頼性については、何らの疑念をも有してはいないのか。

二十二 OTHレーダーの検討には、どれくらいの時間をかける考えか。

二十三 米海軍の太平洋地域へのOTHレーダー配置計画は、アンカレジ、アムチトカ島、硫黄島、グアム島なのか。

二十四 運用開始は、いつ頃からと承知しているのか。

二十五 OTHレーダー基地の建設費は、どれくらいと予測しているのか。

二十六 支援要員を含めた必要人員はどうか。

二十七 南方海域にOTHレーダー基地を設置した場合、わが本土とは、どのような通信系統を組むのか。

二十八 通信系統は、海底ケーブルか、それとも通信衛星を考えているのか。

二十九 通信系統に「さくら2号」は使用できないのではないか。

三十 米国側のOTHレーダー基地とは、どのようなネットワークも組まないのか。

三十一 結局、明年から稼動が予定されている米海軍の軍事衛星「リーサット」とリンクする以外に、方法がないのではないか。

三十二 「リーサット」とネットワークを組む場合には、当然、米国側の周波数と器材の使用を要求されることになるし、そのような運用自体が、集団的自衛権とのきわめて微妙な接点を形成することになると考えるがどうか。

三十三 OTHレーダー用の短波は、艦船や国際線の航空機の通信バンド、あるいは、アマチュア無線等で、かねてから過密の帯域であるが、そこに二百キロワットで、二十四波も使用するとされているが、技術的に可能なのか。

三十四 電波障害や衛星通信等への影響は、あり得ないのか。

三十五 中期防衛力整備計画の中では、OTHレーダーとエイジス艦、空中給油機が、いずれも別途検討されるわけだが、この中では、OTHレーダーの優先度はどの程度なのか。

三十六 エイジス艦については、米艦「タイコンデロガ」によるかなり綿密多様な評価試験の結果が、ある程度明らかにされているし、空中給油機については、現用のKC-135はもとより、次期給油機KC-10への信頼度は高い。しかし、OTHレーダーの信頼性や近い将来の運用効果については、相当に問題や疑念が残るのではないか。
 検討研究の結果、確信が持てない場合には、導入中止という選択肢を残しておくべきではないのか。

  右質問する。