質問主意書

第103回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

米原潜の日本寄港に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年十一月二十八日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   米原潜の日本寄港に関する質問主意書

 今年初頭以来、横須賀、佐世保に寄港する米原潜の数は、既に年間最多の記録を更新しつつあるが、それに関連して質問する。

一 今年一月から現在までに横須賀と佐世保に寄港した米原潜の艦名、艦艇ナンバー、艦長名、寄港年月日、寄港日数を明らかにされたい。

二 米国防総省は、昨年夏、既に核弾頭付き巡航ミサイル「トマホーク」の艦艇配備開始を確認した。また、米海軍は「核トマホーク」積載能力を持つ艦艇のうち、日本に寄港する可能性のある艦艇は四十一隻であることをも否定していない。そこで、日本に寄港した米原潜のうち、「核弾頭付き巡航ミサイル(TLAM-N)」を積載する能力を持つた原潜はどの艦か、明らかにされたい。

三 日本に寄港している米攻撃型原潜(SSN)は、どのような任務を負つていると考えるか。

四 米原潜の大きな任務は、カムチャッカ半島のペトロパブロフスクやウラジオストク周辺を哨区とするソ連の弾道ミサイル原潜(SSBN)及び攻撃型原潜(SSN)の追尾、警戒ではないのか。

五 政府は、このようにも頻繁な米原潜の寄港は、北西太平洋やオホーツク海等、日本周辺でのどのような軍事情勢を反映していると考えるか。

六 一九八二年以来、米海軍の対ソ戦略は柔軟作戦(フレックス・オップス)に転換したが、それに伴つて、重点作戦海域がインド洋から北西太平洋に移動し、ソ連軍の核戦略策源をにらんだ前進配備体制が強化された。カムチャッカ半島のペトロパブロフスク南方八百キロ、ウラジオストク東方八十キロまで近接して展開された「フリーテックス演習」は、まさにそのような作戦構想を踏まえたものであることは言うまでもあるまい。
 一方、ソ連軍の対米核戦略は、なかんずくオホーツク海を聖域化し、デルタIII型原潜等の展開による米本土核攻撃能力を温存することを最大の目的としている。日本への頻繁な米原潜の寄港の背景には、このような米・ソの北西太平洋における「核対峙」の厳しい軍事情勢が投影していると考えるのが軍事常識であろうが、政府の認識はどうか。

七 横須賀基地の修理・補給能力、とりわけエレクトロニクス部門を含めた艦船や兵器の修理能力は、世界の最高水準と目されているが、このことも米原潜の寄港を必要とする大きい理由の一つではないのか。

八 一九八四年一月四日付の毎日新聞に掲載された非核三原則に関する「全国世論調査」によると、「日本国内に核が持ち込まれている」と答えた比率は、実に六十五パーセント、「核を積載したままで寄港または領海通過が行われている」との答えは七十パーセントにものぼつている。
いわゆる事前協議制についての日米両国政府の信頼関係などは、国民レベルでは全く信用されていないことになる。このさめた世論の反応について政府はどう受けとめているのか。

九 米原潜等の艦艇が横須賀や佐世保に寄港する場合、米側からは、どのようなルート、レベル、時期に、どのような形式で通報があるのか。
 また、それは米側が負つている義務なのか。

十 政府は、核の持込みについての広範な国民的不安を鎮静し、非核三原則を今後とも堅持しようとするならば、核巡航ミサイル「トマホーク」を搭載可能とされる米原潜の頻繁な寄港という新たな状況の下で、改めて米側に対し、「日本に対する核持込み」についての解釈をただすべきではないのか。

十一 政府は、従来、「核持込みには一時寄港と通過を含む」との見解をとつているが、米側は伝統的に「一時寄港と通過は持込みの対象外」と受けとめているのではないのか。これは、核問題についての古典的命題ではあつても、この際、外交ルートを通じて明確に確認してもらいたいと考えるが、政府の見解はどうか。

十二 「日本列島は理想的な前方展開基地であり、米国防報告が毎年のように日本を極東の要とか鍵と呼んでいるのも当然である」
 「三海峡の戦略的価値を利用することが米戦略にとつて不可欠であり、それをそうさせまいというのがソ連の戦略である」
 以上は、外務省の岡崎元調査企画部長の著作の中の記述であるが、このような極めて常識的な表現と認識について、政府はどのようにお考えか。

十三 わが国が全体として果たしつつある役割は、米国の対ソ核戦略の重要な前進拠点としての貢献ではないのか。

  右質問する。