質問主意書

第103回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八号

輸入オレンジのミバエ防除手続に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年十一月八日

木本 平八郎   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   輸入オレンジのミバエ防除手続に関する質問主意書

 私は、先般の参議院海外派遣、特定事項調査団の第五班に属し、本年九月四日より約二週間、豪州、ニュー・ジーランド、インドネシア、タイ、フィリピンの五カ国を歴訪、農林水産関係の調査を実施したが、その間見聞した現地事情に関して質問したい。
 主題は、豪州産オレンジの対日輸入についてであるが、同輸入は一九八三年から開始され、本年度からいよいよ本格化するに際し、些細なことから現地側に不満、苦情のあることが判明した。
 すなわち、日本へのミバエ侵入を防ぐため、輸入オレンジには日本政府の指定する規格、仕様に基づき現地でEDBによる燻蒸消毒が条件付けられているが、この消毒には日本から検疫官が出張して立ち会いし、オレンジ一個ごとに消毒済みのステッカーを貼付し、かつカートンごとに密封して合格のスタンプを押すことになつている。
 そこで、この検査方法について、以下具体的に質問する。

一 日本の港でも到着陸揚げ時に同様の燻蒸消毒を行つているようだが、どういう場合に二重燻蒸するのか。また、防疫的見地から二重に燻蒸する必要があるのか。

二 過去他国の例で、現地での燻蒸が不完全のため、果物が日本到着時、一部にミバエが生存していた例はあるのか。

三 二重燻蒸を止め、彼我いずれか一回で済ます可能性は将来ともないのか。

四 いずれの国に対しても、検疫官派遣の海外出張旅費は相手国負担となつているようだが、貿易摩擦が感情論になりつつある折柄、この費用は日本側で負担してはどうか。
 現地での説明によれば、昨年度豪州側が負担した検疫官派遣関係の出張旅費は二五、二〇〇豪州ドル見当で、一豪ドル一七〇円換算として四二八万円である。輸入総額約一億円に対して四・三パーセントだが、こんなわずかな金額で現地の対日感情を刺激することはないと思われる。
 現在、豪州との間には日本側の入超でさして大きな貿易摩擦は発生していないが、将来にわたつてその保障はない。
 かかる国際間の職員派遣費用はレシプロカルに輸出側が負担する原則は承知しているが、現在日本が貿易摩擦上置かれている国際的ポジションを考えれば、かかるわずかな費用は、対外経済協力費(ODA)的に考えて、日本側での負担がベターではないのか。政府の政治的判断を伺いたい。

五 消毒済みオレンジは一個一個ステッカーを貼り、さらにそれを十六キログラム入りカートンに詰めて密封シールし、日本の立会検疫官がスタンプを押捺することになつているが、オレンジ一個ごとのステッカー貼付は不要ではないか。
 農水省の説明では、かつて検査後カートンの中味を未消毒のものと入れ替えられた例があるとのことであり、日本陸揚げ後も流通経路をトレースできるようにとの措置らしいが、いかにも過剰な対応で、もつと簡単な方法でカートン中味の入替えはチェックできるのではないか。
 現地側ではオレンジ一個ごとにステッカーを貼る費用として、ステッカーが一枚十セント、貼る手作業の人件費が一個当たり三十セントで合計四十セント(一豪ドル一七〇円換算でオレンジ一個当たり約六八円)かかり、C&F価格に対しては約二パーセントの負担になつている。
 ステッカー貼付は、最終消費者である国民にとつては、コスト負担ばかりで何のメリットもないので、これをやめることについての政府の見解を問う。

六 かかる日本側のダブル・インスペクション(彼我両地での二重消毒)やオレンジ一個ごとのステッカー貼付要求は、輸出国側から、オレンジ輸入に対する非関税障壁、あるいは日本側の嫌がらせと受け取られる可能性があり、金額的には些少なだけに残念である。
 この際、日本政府は、外国産品の輸入増に対して、誠意と積極的な姿勢を示すべきではないのか。

七 ミバエ防除については、現在日本が果実輸入を行つている南アフリカ、イスラエルのオレンジ、グレープフルーツ、ハワイのパパイヤ、フィリピンのマンゴ、台湾のライチ、ポンカン、タンカン、アメリカ合衆国ワシントン州のチェリー等に対し、同様な厳重消毒措置を要求し、現地側からその改善を要求されていると聞くが、実体はどうか。

八 ミバエ防除について、防疫当局がそれなりに安全を目指し、一連の措置を講じて、事務や手続も完璧を期していることは了解できるが、現在、日本が貿易摩擦を踏まえて対処せねばならぬのは、「外国品を買つてやる」態度ではなく、「なんとか売つていただいて輸入を増やさなければならない」立場であると思われるので、この際、事務方の完璧主義はある程度緩和して、最低安全基準、必要最少限度主義に変え、輸入をスムース化する政治的判断と対策が必要と思うが、政府の考え方を伺いたい。

  右質問する。