質問主意書

第103回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

防衛政策の基本に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年十月十四日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   防衛政策の基本に関する質問主意書

 去る九月十八日決定された中期防衛力整備計画をはじめ、中曽根内閣の防衛政策については、今国会での論戦によつて掘り下げるべきであるが、この際改めて防衛政策の基本にかかわる問題について伺いたい。

一 わが国防衛政策の基本たる専守防衛は、昭和四十五年、中曽根防衛庁長官時代に打ち出されたものであるが、この専守防衛なる概念と、既に軍事用語として定着している戦略守勢とはどのように違つているのか、明確にされたい。

二 政府は、従来、専守防衛と戦略守勢を同様のものと理解しているようだが、専守防衛は防衛上の必要からも相手側の基地を攻撃せず、もつぱら国土とその周辺で防衛行動をとるのに対して、戦略守勢の場合は必要によつては相手の策源地を攻撃することをも含んでいるのではないか。

三 国土防衛を想定した場合、専守防衛の限界は水際撃破か、それとも領海又は領空における撃破を基準とするのか。

四 洋上撃破(公海上)は、専守防衛の枠内と考えられるか。

五 日本への上陸をめざす相手国の実戦力に対して、反撃のため、自衛権を発動するタイミングは、侵攻勢力が領海を犯した瞬間なのか。

六 専守防衛と、政府がめざしている一千カイリ・シーレーン防衛(洋上防空を含む。)とは、一体どのように整合するのか。

七 一千カイリ・シーレーン防衛(洋上防空を含む。)は、わが国にとつて第一義的な防衛範囲と考えるか、それとも、米国側との同盟関係に基づく役割分担の範囲と考えるのか。

八 中期防衛力整備計画が達成された場合、わが国のシーレーン防衛能力は概成されるのか。

九 中期防衛力整備計画がめざす作戦機数(海上自衛隊二百十四機、航空自衛隊四百十五機)によつて、本土防空と洋上防空の最低限の要請は充たし得るのか。

十 昨今濃密になつている日米防衛協力路線や、日米共同作戦の方向は、国土防衛に限局した専守防衛の理念とは基本的に相容れないものではないのか。国民の合意から大きく踏み出す明らかな防衛政策の質的転換ではないのか。

十一 このような方向をめざす日米両国政府には、ソ連による軍事的な脅威が今や飛躍的に高まつているとの共通の認識があるためか。

十二 陸・海・空三自衛隊の兵器体系と装備、配置や編成の現状は、専守防衛を全うするための最善のレベルに到達していると考えるか。

  右質問する。