質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第六一号

スパイクタイヤ粉塵公害対策の促進強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年六月二十五日

藤原 房雄   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   スパイクタイヤ粉塵公害対策の促進強化に関する質問主意書

 積雪・寒冷地におけるスパイクタイヤの使用による道路の損壊及びそれに伴つて発生する粉塵は、道路周辺の生活環境を悪化させているのみならず、人体に対しても悪影響を及ぼしていることが明らかになりつつあり、深刻な公害問題として認識すべき時期にきている。
 水俣病や四日市ゼンソク等のように、悲惨な健康被害が発生して、初めて公害対策が実施されるという誤ちを再び起こさないことが、公害行政の原点であることを肝に銘じておかなければならない。
 政府はこれまで「スパイクタイヤ問題関係省庁会議」を設置し、対策を進めてきているが、各省庁によるバラバラな対策が行われ、かつ、根本的問題に触れない小手先の対応に終始している。
 住民の健康を守るため、地方自治体は具体的な対応策に苦悩している現状にある。
 今こそ、政府は、スパイクタイヤによる粉塵公害対策を抜本的かつ効果的に確立する必要がある。
 以上の立場から、以下、具体的に質問する。

一 政府及び地方自治体等における対応の効果について

 前記の関係省庁会議によつて打ち出された諸施策は、順次進められているとはいえ、その効果については疑わしく、地域住民からは厳しい批判が寄せられている。

(1) 五十八年九月に環境庁大気保全局長より、二十三道府県知事あてに「スパイクタイヤによる粉塵等に係る当面の対策について」の通達を行つたが、この通達を出した以降、スパイクタイヤの使用期間制限等の当面の対策によつて、スパイクタイヤの装着率、使用期間等に効果がみられたのかどうか。みられたとすれば、どのような効果があつたのか示されたい。
(2) 環境庁の、スパイクタイヤによる環境影響に関する実態調査結果では、スパイクタイヤ装着期と非装着期との粉塵濃度及び環境基準との関係性を明らかにされたい。
(3) 五十八年度以降、運輸省で検討している「スパイクタイヤ等対策技術調査」における現在までの検討結果及びそれに基づく構造基準等の策定方針並びにその基本的考え方を示されたい。
(4) タイヤ業界の第一次基準施行による粉塵削減効果の見込みと実績を明らかにするとともに、第二次基準策定の遅れている理由、策定の見通し及びその内容の概略をどのように把握しているのか。

二 人体への影響について

 スパイクタイヤ粉塵による人体への影響については、最近かなり解明されてきている。

(1) 東北大学医学部の滝島教授(仙台市健康影響調査専門委員長)が、肺磁界測定装置を用いて磁性粉塵の体内蓄積について一定の結論を下し、医学者の立場から「長時間吸入すれば、じん肺症、肺がんの発生にもつながる可能性あり」と警告された。このことをどのように受けとめているのか。
(2) 環境庁は、「スパイクタイヤの粉塵の生態影響調査」を実施しているが、より早急に、野犬などのフィールド調査及び住民の疫学調査を実施すべきであると思うがどうか。

三 当面の対策の強化等について

 スパイクタイヤの法規制等を実施するにしても、相当の猶予期間と過程を経なければならないことはいうまでもない。それまでの間、当面の施策を強力に進める必要がある。

(1) 内閣官房長官は、去る三月二十五日の参議院予算委員会において、現在の関係省庁会議による取り組み方の不備を認め、より強力な組織の設置を含む対策の強化を約束しているが、具体的にどのような措置を考えているのか。
(2) 道路の損耗その他の、地方自治体の財政負担をどのように把握しているのか。また、今後必要とされる道路の維持管理対策の強化、道路構造の改造、スパイクタイヤ使用制限の推進、使用自粛期間の拡大及び交通安全対策の推進等に要する予算の確保及び地方自治体の財政負担への配慮等についての方針を明らかにされたい。
(3) 通産省工業技術院は、形状記憶合金による可変式スパイクタイヤの開発を行つているというが、実用化の可能性はどうなのか。
 一方、一部の自動車メーカーは、電子制御によるスパイクの要らない積雪・凍結路対応技術の開発を進めており、その実用化は極めて有望であると報道されているが、政府はこれを、どう受けとめているか。
 一層の技術の開発・利用に、強力なインセンティブを与える施策が必要であると考えるが、どうか。

四 スパイクタイヤの法的規制について

 北海道、東北六県議会議長会等が、「新タイヤが実用化されるまでの間、スパイクタイヤの法律による使用規制を講じること」を要請している。このことは、現在の方式である行政指導や条例等による規制には限界があることを物語つている。また、スタッドレスタイヤの開発状況とその安全効果、次第に解明されつつあるスパイクタイヤ粉塵公害の健康への影響及び脱スパイクタイヤの要件としての道路管理の強化並びに道路損壊における損失の拡大などから、スパイクタイヤの法的規制の条件が次第に整いつつあると考えられる。
 政府は、スパイクタイヤの法的規制についてどう考えているのか。

  右質問する。