質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第四三号

北海道米作をはじめ、当面する米作問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年六月一日

小笠原 貞子   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   北海道米作をはじめ、当面する米作問題に関する質問主意書

 いま、北海道の米作とその農家経営は、長年の自民党政府の農政のもとで、重大な困難に直面している。
 生産資材の上昇のもとでの七年連続の実質米価の据置き、水田面積の五割におよぶ減反のおしつけ、転作奨励金の削減等に、あいつぐ冷災害も加わつて、政府自身が、「農家総所得をみると五十四年度以降は五十三年度の水準に達せず、農家経済は悪化傾向にある」(農林水産大臣官房北海道農業対策室「北海道農業の現状」昭和五九年五月)と指摘しているほどである。
 米作農家の経営悪化は、農家負債を急増させ、一戸平均で一〇七八万円(北信連調査、昭和五九年末)となり、ほとんどの農協で高額負債農家が組合員の一割前後を占めるに至つている。
 また、米作減反面積の傾斜配分に見合つて、北海道に多く割り当てられた他用途利用米は、農民に生産費を大幅に下回る低米価を強いるなど、生産現場にさまざまな混乱と犠牲をもたらし、北海道における米作の条件を厳しいものとしている。
 加えて、昨年の日米諮問委員会による、将来はコメをやめて野菜、草花をつくればいいとする提言や、米国からの「穀物一千万トン輸入」要求、中曽根首相の「農業は聖域でない」との発言などは、農民の間に「やがて米も自由化されるのでは」との不安を強め、わが国農業の発展可能性を著しく狭いものにしている。
 米作は、北海道農業の基幹作物であり、その行方は、北海道農業ひいては北海道経済全体をも大きく左右するものである。厳しい状況の中にある北海道の米作と農家の経営を守り発展させる立場から、以下具体的に質問する。

一 農産物輸入の拡大阻止

 市場開放の名による農畜産物の輸入拡大は、畑作農家はもとより、転作の途もとざし、米作農業を含め北海道農業全体に重大な打撃を与えずにはおかない。農畜産物の輸入拡大は、今後いつさいやめるべきだと考えるが、どうか。
 また、昨年の日米諮問委員会の提言を含めて考えると、米国のわが国に対する農畜産物輸入自由化枠拡大のねらいの一つに“コメ”があると見ざるをえない。国民の主食であり、国内生産で十分まかなえる米は今後いつさい輸入しないという確固たる方針を明言すべきであると思うがどうか。

二 ゆとりある米需給計画

 米の単年度均衡方式は、昨年の韓国米輸入にみられるように、米の安定需給をあやうくするものであることは明らかである。国民主食である米の綱わたり的需給操作をやめ、豊凶変動がさけられない米の生産実態に即して、加工用・備蓄用を含めた、ゆとりある米需給計画を確立し、減反を大幅に緩和すべきではないか。

三 北海道米作の位置づけ

 北海道農業は、水田面積の半分近くに達する過大な「減反・転作」という極端な傾斜配分を受け、輸入拡大ともあいまつて、もう一つの柱である一般畑作物の「過剰」をもたらし、その畑作物も作付制限をひきおこしている。今後、このような北海道農業を破壊するやり方を改め、こうした傾斜配分を是正し、北海道の米作農家が安心して営農を続けられるようにすべきであると考えるが、北海道の米作をどう位置づけているのか。

四 他用途利用米について

(1) 他用途利用米の廃止

 他用途利用米制度は、その目的とする加工原料米の確保や不作時の主食転用のため、本来「食管法」に基づき政府の米穀需給計画において処理すべきものであり、政府買入価格はもとより、生産費以下の価格を生産者におしつけるのは極めて不当であり、廃止すべきものと考える。政府はこれを恒常的なものと考えているのか、それとも水田利用再編第三期対策限りの暫定的措置と考えているのか。

(2) 他用途利用米の作付け

(イ)農家の自主選択

 他用途利用米の作付けは、あくまで転作の内数となつており、農家の自主選択によるものとされているが、どうなのか。

(ロ)ペナルティや強制の中止

 北海道のいくつかの市町村では、あたかも他用途利用米の目標未達成によつて限度数量配分の上でペナルティをかけるとか、水田利用再編第三期対策後の差別も当然であるかのような指示が行われている。これらを政府は承知しているのか。また、それは制度上正しいと考えているのか。

(3) 指導の撤底

 農林水産省の要綱にある「農家の自主選択」性をおかす、他用途利用米の“強制”を改めさせ、要綱の趣旨が撤底されるよう指導すべきではないか。

五 ひきあう米価の実現

(1) 「米価引下げ論」について

 全国農協中央会の要求米価も六月五日に決められ、いよいよ本格的な米価シーズンに入つていく。日米欧委員会なる組織が本年一月に「支持米価の引下げ」提言を行い、これに対し、佐藤農相は四月二十三日の記者会見で、「重大に受けとめてみたい」とのべている。また、政府部内にも同様の主張が強まつているという報道もなされている。こうした米価引下げ論に対して、政府はどう認識し、対処しようとしているのか。

(2) ひきあう米価の実現

 農林水産省などの政府統計によつても、平均生産費でみても、昭和五十四年度以降、生産者米価は第二次生産費を下回り、家族労働報酬も農村雇用賃金を大幅に下回つている。この事実をどう考えるのか、こうした米価決定を正常なものと考えているのか。
 昭和六十年度の生産者米価の決定にあたつて、農民の米作労働をつぐない、再生産が保障されるためにも、生産者米価を引き上げるべきと思うが、その基本的考え方はどうか。

(3) 生産資材の引上げ

 米の第二次生産費(十アール当たり)はこの十八年間で四・七倍になつたが、肥料費・農機具費は六・四倍にはねあがり、生産費に占める割合は大きくアップし、これが米作経営悪化の原因ともなつている。とりわけ北海道に多い、資本装備の大きい大型水田農家にとつてその影響は大きい。米作経営と米価を安定させるためには、これら生産資材の値上げストップ・引下げに本格的に取り組むべきではないか。

六 米作農家の負債対策

 昨年北海道米作は、作況指数一一四という豊作年となつたが、逆に一戸平均負債は増加する状況すら生まれている。例えば、近代化路線=規模拡大を積極的に進めてきた西当別農協をみても、昨年の場合でも農家経済余剰がマイナスとなり、なかでも返済利息、元金、租税公課が急増している。また、北農中央会が昨年七月にまとめた調査によつても、米作農家負債の大きな要因として、全国一の「転作・減反」をあげている。今や負債対策は、北海道米作にとつて緊急、重要な課題となつている。

(1) 酪農なみの負債対策

 私は去る四月一日の参議院予算委員会で、畑作問題で同様の質疑をしたが、水田農家に対しても、酪農なみか、より抜本的対策をとることが、北海道米作発展に責任をおうためには不可欠と考えるがどうか。

(2) 当面する具体策

 現在、公庫資金等政府関係資金が経営の良・不良を問わず優先的に返済され、それが借換えによる農協プロパー資金と短期高利負債となつたうえに固定化されるため、経営がひつ迫する例が多い。政府の政策上の責任で、返済が困難になつている公庫資金等の返済については、経営再建の見通しが立つまで償還を棚上げ(利子を含めて)する措置をとるべきではないか。

(3) 規模縮小の際の免税

 規模拡大投資が経営圧迫要因になつている農家が、経営再建のため農地等を一部処分する場合の免税措置の拡大を再検討する必要があると思うが、どうか。

  右質問する。