質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第四二号

飼料価格と飼料の安定供給に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年五月三十日

小笠原 貞子   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   飼料価格と飼料の安定供給に関する質問主意書

 酪農・畜産農家の経営安定と酪農畜産業の発展のために、生産費の相当部分を占める購入配合飼料の価格安定と引下げは、欠かせない重要課題となつている。
 例えば酪農経営をみると、生産者保証乳価は昭和五十二年度八十八円八十七銭、それが五十九年度九十円七銭で、わずかに一円二十銭(一・四%)のアップにすぎないのに、他方で、配合飼料価格(乳牛用)は、五十三年当時トン当たり五万六千円が昨年で七万円と、二十五%もアップし、これが生産費を大きく引き上げ、農家経営を圧迫している。
 去る四月一日参議院予算委員会で、私は、国の畜牧場では一般農家より、トン当たり二万円も安く飼料を購入している事実をあげ、農家により安く供給するよう対策を要求したが、飼料需給安定に果たす政府の役割にかんがみ、強力な対策が求められている。
 以下、具体的な点について質問する。

一 エサ価格の地域格差

 北海道は日本の食糧基地ともいわれているが、生産農民から「北海道のエサ価格は割高だ」の声がよせられている。各県農協連に聴き取り調査したところ、別表のように北海道の場合トン当たり数千円ほど割高になつている。政府としてこの事実を承知しているか。事実なら、その原因はどこにあると考えているのか。
 また、農林水産省として、「飼料月報」等で飼料の流通・価格等について公表しているが、地域別の価格をも公表する考えはないか。

二 飼料流通合理化とメリット還元

 近年全国的に、大型飼料コンビナート基地がつくられ、本船のはいる港湾と直結する大型サイロによつて原料運賃が低減され、新型工場による製造原価の縮減、製品運搬送距離も近くなるなど、エサ価格を引下げる条件も拡大している。

(1) 釧路飼料コンビナート

 背後に道東酪農の一大需要地を抱え、原料の積出し地の北米に最も近いという地の利を生かして、釧路市西港で飼料基地整備が進められている。ホクレンくみあい飼料釧路西港工場建設の総事業費五十五億円のうち、国と道の利子補給を受ける農業近代化資金四十四億円の融資を受けており、商社系釧路飼料の場合も北海道東北開発公庫の低利融資を受けている。
国民食糧の安定供給と北海道開発に貢献すべく公的資金の援助を受ける際、それぞれの事業主体における投資効果とメリットの内容を明らかにされたい。

(2) メリットの試算

 農林水産省の流通飼料課長は月刊誌「飼料」(一九八三年一二月号)で、八戸コンビナートを例に「トン当たり数千円安く供給しうる。」と報告している。釧路の場合、生産・流通の合理化によるメリットは少なくとも、(イ)主原料の本船からの直接搬入(トン当たり約三千円)、(ロ)新型工場による製造コストの減少(生産能力、機械設備などについて「配合飼料産業報告書」より試算千~二千円)、(ハ)製品搬送の短縮(北見・苫小牧方面から飼料運送減、苫小牧港から道東への原料運搬減、約二千円)などが考えられる。そこで、釧路の場合のメリット試算内容を示されたい。

(3) メリットの還元

 昨年暮れの全日農道連との交渉の席で、ホクレンは、釧路のメリットは「必ず生産者の皆さんにお返しする」と答えている。全国的には昨年七月と今年一月に計千二百円のエサ価格引下げが行われ、北海道では一部先取り値下げが行われたものの値下げ幅は全国同様にすぎず、これでは昨秋操業開始した農協系統飼料価格のメリットの生産者還元はあまりにも微少である。政府として、メリットの農民への還元、さらに食糧の安定供給に資するよう、十分な指導をすべきではないか。

三 配合飼料価格安定基金の適用拡大

 自家配合飼料原料の安定供給に関する取扱いについての農林次官通達(昭和五十一年三月二十七日)が出されて以降、自家配合の原料となる、いわゆるとうもろこし主体の混合飼料は三倍近くにふえた。
 しかし、配合飼料には適用される飼料価格安定基金が単体飼料には適用されない。だから、単体飼料が少しでも高くなると農家は使えない。
 そもそもこの基金は、飼料原料の価格変動で農家経営が大きな影響を受けないように設けられたのではないか。ストレートに価格変動を受ける混合飼料や単体飼料をこそ、この基金の対象とするよう再検討することを求めるが、政府の見解はどうか。

四 配合内容の公表

 エサの品質を厳密に比較し、農家が安心して使えるようにするためには、配合内容を公開することが必要である。そうすれば、家畜の性能や経営目標に応じて飼養体系や経営の改善をはかることができるのではないか。配合内容の公表を指導すべきと思うがどうか。

五 自給飼料基盤の拡大強化

 日本の畜産の安定的発展のためには、飼料穀物の大部分を外国に依存している状態を改善し、自給飼料基盤の拡大強化が求められている。北海道においても、乳価の実質据置きに対して、泌乳量をあげて対応しようとすることから、濃厚飼料多給型になりつつある。北海道の飼料資源を生かした酪農経営の確立を含めた飼料自給率の総合的計画的向上を、積極的にはかるべきではないか。

  右質問する。

(別表) 各道県経済連の各単位農協への卸価格(トン当たり) 1/1