質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

大韓航空機〇〇七便撃墜事件の真相究明に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年五月二十二日

梶原 敬義   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   大韓航空機〇〇七便撃墜事件の真相究明に関する質問主意書

 昭和五十八年九月一日、大韓航空〇〇七便がソ連のミサイル攻撃を受け撃墜された事件について、本院は同年同月十三日、全会一致の決議で政府に対し、「あらゆる方途により、事件の真相究明に努め、大韓航空機が領空侵犯するに至つた原因を含めて可及的速やかに全容を明らかにすること。」を要求しているが、政府が現在まで本院に対し、一片の調査報告もしていない事実は容認し難いことである。
 遺族をはじめ広範な国民の間に事件の真相を明らかにし、事件の責任の所在を明確にすることを求める声が高まつているので、以下の諸点を質問したい。

一 政府がICAO(国際民間航空機関)に対し、本事件の真相解明に協力する立場から、提供した資料及び情報の全容はどうであるのか、その(1)表題、(2)内容の要旨、(3)ICAOに提供した各年月日等について具体的に明らかにして、お答え下さい。

二 大韓航空〇〇七便及びその約五分あとを飛行していたと言われる大韓航空〇一五便が、米国及び我が国の航空管制当局との間でおこなつた通信は、それぞれ、同一人物の音声であると解析されているか、仮に、同一人物の音声ではない通信があれば、それを具体的に特定して明らかにして下さい。

三 運輸省が、昭和五十八年十月五日、「東京国際対空通信局とKE〇〇七便との間の交信テープの解析結果について」と題する文書により、大韓航空〇〇七便の同年九月一日午前三時二七分一〇秒から同二五秒までの交信内容の解析結果を公表しているが、右公表の根拠及び右解析結果のその後の取扱い経過について、次の諸点を明らかにしてお答え下さい。

(1) 右の解析結果が同年九月十六日に運輸省が公表していた交信内容とも、また同年十二月にICAO事務局長報告書が公表した交信内容とも全く違つた内容になつている理由。
(2) 右公表の根拠とした音声の解析図等を国会に提出して、右公表が科学的に正しいものであることを国民に対して明らかにする考えはありませんか。仮に、それを公表できない場合はその具体的理由。
(3) 右公表によると、ONE TWO DELTA の ONE TWO の部分から「音声の周波数がやや高くなつており、心理状態に変化があつたものと推定される」とされているが、KE〇〇七便の三時二三分〇五秒、三時二七分〇〇秒及び三時二七分一〇秒以降の各通信の、各英単語ごとの具体的な周波数。
(4) 右解析結果のICAOに対する報告は、いつ、誰(職・氏名)が誰(職・氏名)に対して、どのような方法でおこなつたのか、仮に、報告しなかつたとすると報告しないという決定をした者(職・氏名)及びその決定理由。
(5) 右解析の資料として使用された交信テープの管理を担当していたのは誰(職・氏名)ですか。また、そのテープの複製は誰(職・氏名)がいかなる目的でおこなつたものですか、日本音響研究所(鈴木松美所長)が昭和五十八年九月十七日付毎日新聞でその解析結果を公表している事実との関連で、原テープ管理の責任体制を明らかにして下さい。

四 自衛隊は、大韓航空機事件発生の約十五年前、シーボード航空のDC8型機に対し国際緊急周波数一二一・五メガヘルツの無線通信で、「そのまま行くとソ連領にはいるから針路を南にとれ」と警告した事実があるが、大韓航空〇〇七便に対してはなぜ同様の警告をしなかつたのか、次の諸点を明らかにした上でお答え下さい。

(1) 昭和四十三年七月一日の事件以降、昭和五十八年九月一日の事件に至る間、政府が航空自衛隊のバッジ・システム関連で支出した国費の概ねの合計金額。
(2) 昭和五十八年九月一日午前三時現在、左記の職にあつた者の公式職名、階級、氏名、及びその者の前日から当日にかけての勤務時刻。

    記

1 航空自衛隊航空作戦管制所(府中)の長たる者及び夜間当直の長たる者。
2 北部航空方面隊(三沢)の長たる者及び夜間当直の長たる者。
3 北部航空警戒管制団(三沢)の長たる者及び夜間当直の長たる者。
4 北部防空管制指令所(三沢)の長たる者及び夜間当直の長たる者。
5 第十八警戒群(稚内)及び同防空監視所の長たる者及び夜間当直の長たる者。
6 第二十八警戒群(網走)及び同防空監視所の長たる者及び夜間当直の長たる者。
7 第二十六警戒群(根室)及び同防空監視所の長たる者及び夜間当直の長たる者。

(3) DC3型機の大きさの目標でも、四百キロメートルまで安定して捕捉可能である旨、「防衛白書」「防衛アンテナ」等で公表されている稚内レーダーが、事件当時、レーダーによる目標物の捕捉の障害となる何らの気象条件等が存しなかつたのに、レーダーから約一六〇海里、即ち約二百九十六キロメートル以遠の巨大な目標(ボーイング747型機)を捕捉できなかつたとする具体的原因。

五 事件当日の朝、千歳、三沢の航空自衛隊員に対する非常呼集は、誰(職・氏名)が何時何分頃、いかなる理由に基づいておこなつたものであるか、次の諸点を明らかにした上でお答え下さい。

(1) 非常呼集の対象となつた部隊名及び総人員。
(2) 昭和五十八年九月一日午前三時現在、左記の職にあつた者の公式職名、階級、氏名及びその者の前日から当日にかけての勤務時刻。

    記

1 航空自衛隊千歳基地の各飛行隊の隊長及び夜間当直の長たる者。
2 同三沢基地の各飛行隊の隊長及び夜間当直の長たる者。

六 事件当日の朝、大湊、八戸の海上自衛隊員に対する非常呼集は、誰(職・氏名)が何時何分頃、いかなる理由に基づいておこなつたものであるか、次の諸点を明らかにした上でお答え下さい。

(1) 非常呼集又は出動命令の対象となつた部隊名及びその総人員。
(2) 昭和五十八年九月一日午前三時現在、左記の職にあつた者の公式職名、階級、氏名及びその者の前日から当日にかけての勤務時刻。

    記

1 事件当日根室沖に出動した五隻の、各艦艇の艦長及び夜間当直の長たる者。
2 事件当日根室沖に出動した二機の、各P-2J対潜哨戒機の機長及び夜間当直の長たる
者。

(3) 海上自衛隊が行方不明になつた外国籍の民間航空機の救難を目的として、艦艇を出動させた前例の日時及び出動規模。

七 大韓航空〇〇七便のノッカ予定通過時刻の三十分経過後である午前三時五六分頃東京航空交通管制部が自衛隊の機関に対し同機が行方不明である事実を通知した以前に、自衛隊は同機がモネロン島付近で撃墜された事実を知つていたのではないか、次の諸点を明らかにした上でお答え下さい。

(1) 大韓航空〇〇七便のコンピューターフライトプラン等を航空自衛隊のバッジ・システムのコンピューターに入力する任務を担当していた自衛隊員の職、階級、氏名(仮に、右の者が存在しない場合、事件当時、大韓航空〇〇七便のコンピューターフライトプラン情報及び同機の位置通過報告情報等が航空自衛隊のバッジ・システムのコンピューターに入力された方法)。
(2) 午前三時五十六分頃、運輸省側から自衛隊側に対しておこなつた右通信捜索の依頼通信の発信者及び受信者の各職・氏名。
(3) 事件当日午前三時頃、左記の職にあつた者の正式職名、階級、氏名及びその者の前日から当日にかけての勤務時刻。

    記

1 航空自衛隊AMIS(入間)の長たる者及び夜間当直の長たる者。
2 航空自衛隊RCC(入間)の長たる者及び夜間当直の長たる者。
3 北部防空管制指令所(三沢)と入間基地内のAMISとの間で、大韓航空〇〇七便に関する通信をした発信者及び受信者。

  右質問する。