第102回国会(常会)
質問第二二号
沖縄県金武町における殺人事件と日本の捜査権に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和六十年一月二十九日 喜屋武 眞榮
沖縄県金武町における殺人事件と日本の捜査権に関する質問主意書 本年一月十六日未明、沖縄県金武町で、県民が就寝中何者かに包丁で刺殺され、現金一万数千円が奪われた。新聞報道等によると、その後の県警の捜査により、容疑者はキャンプハンセン第三部隊支援群第九工兵支援大隊所属ケルビン・L・ルイス一等兵と判明し、十七日県警当局は、同一等兵の逮捕状を取り、身柄の拘束を図つたところ、米軍当局が身柄を拘束したため、現在日本側は同一等兵の出頭は得ているものの、任意の取調べしか行えない状態である。
一 本事件の概要並びに現在までの捜査状況を明らかにされたい。 二 (1) 本年一月二十三日の参議院決算委員会における私の質疑に対し、法務省当局は、沖縄の本土復帰後、日本人を被害者とする米軍人による殺人事件は、沖縄県においては、本件を除き七件発生し、本土においては六件発生していることを明らかにしているが、それらの事件の概要、身柄の拘束が日本側によるのか米側によるかの別、判決、刑の執行状況等について明らかにされたい。
三 今回の事件の裁判権は日米いずれにあるか、また、その法的根拠は何か。 四 今回の事件の捜査権は日米いずれにあるか、また、 その法的根拠は何か。 五 現在、ルイスの身柄は米側にあるが、ルイスはどのような状態にあるのか。拘禁されているのか。拘禁されているとすれば、その容疑は何か。 六 本事件に関し、捜査当局並びに外務省等は、米側に何らかの措置をとつたか。それらの措置について、いつ、日本側の誰が米側の誰に、どのような内容の措置をとつたか、明らかにされたい。 七 捜査当局は、米側にルイス一等兵の身柄の引渡しを求めたのか。求めたとすれば、いつ、誰が米側の誰に行つたのか。また、その法的根拠は何か。 八 米側から身柄の引渡しの拒否、その他何らかの回答があつたか。拒否したとすれば、いつ、誰が誰に行つたのか。 九 身柄に関しては、「地位協定」第十七条5(a)と5(c)が問題になるが、言うまでもなく(a)は基本原則、(c)は例外を定めたものである。本件は、日本側に第一次裁判権があり、広い意味での裁判権の発動としての捜査において、日本側が被疑者の身柄引渡しを求めている以上、米側が身柄の引渡しを拒む理由は何か。
十 昭和五十七年三月、同じ金武町で発生した米兵による日本人殺害事件では、基地内で容疑者を日本側が逮捕したとの報道があるが、事実か。事実だとすれば、何故本件についてもそれができなかつたのか。米軍司令官や日本側の姿勢の差によるのではないのか。 十一 被疑者ルイスは日本側の取調べに対して、犯行を否認していると聞くが、現在のような任意の取調べを続ければ、日米合同委員会合意による期間内に捜査を完了し起訴することも困難となり、たとえ起訴したとしても公判の維持に障害が生ずるおそれはないか。そのようなおそれがあるからこそ、報道されているように日本側は身柄の引渡しを求めたのではないのか。 十二 (1) 以上の問題は、根本的には日本側に裁判権があるにも拘わらず、捜査権に制約があることによるものと思われる。たとえ基地内といえども、日本側が制約なしに逮捕できるように関係規定を改正し、「地位協定」が不平等条約であるという非難に応えるべきであると思うが、この点に関する政府の見解はどうか。
十三 報道によると米側は遺族への補償については善処を約していると伝えられるが、従来の補償の実態を明らかにされたい。 十四 今回の事件に関連して、在日米軍の最高幹部に対して、日本政府から米軍の軍紀の粛正を強く申し入れるべきことは当然であると思うが、政府の考えはどうか。 右質問する。 |