質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第二一号

沖縄の空の安全確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年一月二十五日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   沖縄の空の安全確保に関する質問主意書

 運輸省は、本年一月十六日、沖縄の民間航空路整備について、来る四月一日から沖縄路線にVOR(超短波全方向式無線標識)を六線、NDB(無指向性無線標識)を三線導入し、また、嘉手納基地にあつたVORTAC(航空機の方向・距離を知らせるための航行援助無線施設)を那覇に移すと発表した。これ等の措置は、民間航空路の整備と安全対策を目的とするものと思われる。
 ところで、航空管制官等で組織する全運輸省労働組合沖縄航空支部(甲斐一範委員長)は、昨年十二月に、「航空黒書」なる報告書を発表し、その中で、那覇航空管制部の経験するニアミス及びコンフリクション(管制基準で決められた安全間隔を割つた状態)は、全国平均と比べて多いと報告している。ちなみに、那覇航空管制部に勤務する管制官一一三人を対象にした昭和五十九年七月の調査によれば、昭和五十八年六月から昭和五十九年五月までの一年間に、ニアミスまたはコンフリクションを経験した管制官は四〇人(三五パーセント)に達するとしている。そして、その対象機種は、民間機対軍用機が全体の六二パーセントを占めているとのことである。
 この様なニアミスやコンフリクションの多発の原因として、同報告書は、(一)処理能力を超える交通量、(二)前近代的な管制方式との混在、(三)思考能力を低下させる繁忙時の通信負荷率、(四)沖縄の米軍が制空権を握り続けていること、(五)米軍の軍事空域が「見えざる空の軍事フェンス」になつて民間機の安全飛行を妨げていること、の五項目を挙げている。
 以上の点を踏まえて、以下具体的に質問する。

一 この度の運輸省による沖縄空域における民間航空路の整備措置により、その安全性の点において、従来と比べてどの様に改善されるのであるか、具体的に示されたい。

二 前記労働組合が指摘したニアミスまたはコンフリクション多発の原因は、五項目あるが、それぞれの項目に関する政府の認識を示されたい。そして、今回の運輸省による航空路の整備措置により、これ等五項目に列挙する原因が解消若しくは軽減されることとなるのかどうか、各項目ごとに説明されたい。

三 前記労働組合の報告書によれば、沖縄空域におけるニアミスやコンフリクションの防止対策としては、制空権を握り続けている米軍との空域構成の改善が急務であると結論づけ、特に安全を阻害している、次のワースト・スリー空域たる、(1)「ホテル・ホテル空域」(2)「伊江島空域」(3)「沖縄北部訓練空域」の三つは返還が望ましいとしている。政府はこれ等三空域の返還交渉をすべきであると考えるが、その意思があるか。全部返還が無理なら、対象面積を縮少する一部返還についてはどう考えるか。

四 更に、前記労働組合の報告書によれば、沖縄の米軍空域のうち、(1)「ゴルフ・ゴルフ訓練空域」(2)「赤尾嶼空域」(3)「沖大東島空域」(4)「インディア・インディア空域」の四空域は、現在ほとんど使用されていないので、早急に返還せしめて、空の安全を図るべきであると言つている。政府は、これ等四空域の即時返還を求めるべきであると考えるが、これに対する見解を承りたい。

五 現在、沖縄周辺に存在する米軍の軍事空域の箇数、名称、位置、それぞれの面積及び総面積、各空域の使用状況、そして、これ等は全てわが国の領域内にあるのか、公海上にもまたがるのか、示されたい。

六 最近五年間の沖縄空域における米軍による「アルト・ラブ」の回数及びその占有時間を各年度ごとに示されたい。

七 沖縄における陸上の「目に見える」米軍基地の整理縮少の促進は、政府の公約であるが、同時に、海域及び空域にも「見えざる軍事フェンス」が存在し、民間の船舶及び航空機の安全運行を阻害していることを重視し、遊休化している施設は、早期に返還を求めるべきであると考える。これに対する政府の見解を示されたい。

八 沖縄空域の「航空交通管制権」を現在、米軍が一元的に行使していることは、わが国の主権を侵害しているとの議論もある。この点について、政府はどう考えるか。
 また、米軍に「航空交通管制権」を委ねている昭和五十年五月の日米合同委員会合意を改め、「航空交通管制権」を、主権国家であり、且つ、高度の科学技術水準を誇るわが国自ら行使すべきではないのか。それを敢えて米軍に委ねている理由は何か。

  右質問する。