質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

石油製品(ガソリン)輸入計画に対する通産大臣の中止勧告等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年一月十一日

木本 平八郎   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   石油製品(ガソリン)輸入計画に対する通産大臣の中止勧告等に関する質問主意書

 昭和五十九年十二月二十一日、ガソリンの自主輸入等に関する質問に対する答弁書(内閣参質一〇二第三号、以下「答弁書」という。)をいただいたが、その内容に納得できない点がある。
 また、その後、ガソリンの輸入計画に対し、通産大臣による異例の中止勧告が出されるという事態が生じ、その勧告に輸入業者が応じざるを得ない状況も生まれている。
 そこで私は、石油製品(ガソリン)の輸入計画に対する通産大臣の中止勧告がもたらした問題をはじめとする諸点につき、国民経済の立場から、また、一円でも安いガソリンを求めている消費者の立場から、以下改めて質問する。

一 石油販売業者ライオンズ石油(以下「業者」という。)のガソリン輸入計画に関し、答弁書は、「これまでのところ何らの措置も執つていない。」とするが、この点をめぐつて、答弁書をいただいた時点(昭和五十九年十二月二十一日)までの動き、及びその後の動きに関し、通産省の見解と事実関係を、以下明らかにされたい。

(1) 業者から、石油業法第十二条に基づく石油輸入業の届出と石油輸入計画が、通産省の窓口に提出された日時を明らかにされたい。なお、業者からは、昭和五十九年十二月三日、石油輸入業の届出等が提出されたといわれているが、どうか。
(2) 業者からの石油輸入業の届出及び石油輸入計画が、通産省において受理された日時を明らかにされたい。
(3) 通産省は、答弁書が送付された翌日の十二月二十二日、業者を呼び、「石油製品の安定供給を乱す恐れがある」と、輸入自粛を要請したといわれるが事実か。
(4) 答弁書は、「これまでのところ何らの措置も執つていない。」とするが、これは、石油輸入業の届出等が十二月三日に提出されていたが、これを放置し受理していなかつたという意味なのか。しかも、「これまでのところ何らの措置も執つていない」通産省が、答弁書送付の翌日業者を呼び、一方的に輸入自粛を要請したということなのか。
(5) 通産省による輸入自粛の要請に対して、業者は逆に通産省側が指示した書式に合わせた「石油輸入計画届出書」を改めて提出したといわれるが、通産省側の指示した書式でなければ受理できないということか。
 もし、受理できないのであれば、十二月三日ないしその後できるだけ早い段階で、書式を教示すべきではなかつたのか。
(6) 改めて提出された一の(5)の届出に対しても、通産省は、「有効かどうか検討中で、受理ではない。今後も自粛を求める」としている、と報道されているが、一連の通産省の対応は不親切であるばかりか、ガソリンの輸入が自由であるにもかかわらず、通産省の強大な行政指導を背景にした、非力な業者いじめであると思うがどうか。

二 昭和五十九年十二月二十五日付「読売新聞」は、「ライオンズ石油の届出は、まだチェックしなければならない点がいくつかあるため受理していない。」と通産省のコメントを紹介しているが、今回の届出をめぐつて、チェックしなければならない点とは何だつたのか具体的に示されたい。

三 昭和五十九年十二月二十七日、通産大臣から業者に対する石油輸入計画の変更勧告が行われたが、大臣勧告に至つた経緯を明らかにされたい。
 また、この大臣勧告を出すにあたつて、その法的根拠及び妥当性について、事前に、内閣法制局との協議が行われたのか。

四 (1) 過去に、石油業法第十条第二項に基づいて出された石油製品生産計画に対する通産大臣の変更勧告の例があれば、勧告年月日、対象会社、勧告対象となつた石油製品生産計画の内容及び変更内容について、示されたい。なお、勧告例がなければ、その旨を明らかにされたい。
  (2) 石油輸入計画に対する通産大臣の変更勧告は、今回が初めてであるといわれるが、どうか。

五 前記三の勧告内容について、石油審議会に事前に諮つて答申を得ているといわれるが、この点をめぐつて以下尋ねる。

(1) 石油輸入計画に対する今回の変更勧告について、石油審議会に諮問した日時及び答申を得た日時を明らかにされたい。
 また、この日時は、前記一の(2)の石油輸入業の届出及び石油輸入計画の受理日時の前か後かについても明らかにされたい。
(2) 業者から出された石油輸入業の届出及び石油輸入計画の受理を遅延させながら、一方で通産省は、石油審議会を招集して、石油輸入計画に対する通産大臣の変更勧告の内容について、諮問していたということなのか。
 もし、そういうことであるなら、これは、審議会への諮問という公平さを装いながら、勧告内容の不当性をカモフラージュしようとしたのではないか。明らかにされた日時等事実関係に照らし政府の見解を求める。

六 通産大臣による石油輸入計画の変更勧告は、「石油の需給事情その他の事情により、石油供給計画の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるとき」にできる(石油業法第十二条第三項で準用する同法第十条第二項)としているが、前記三の勧告は、この要件のどこに該当すると判断して出されたものか。

七 (1) 業者から出されたガソリンの輸入計画量は、昭和五十九年度において月間いくらか。
  (2) (1)の月間輸入計画量が、わが国で一般に消費するガソリンの月間消費量(平均)に占める率は何パーセントか。
  (3) (1)の輸入計画量ないし(2)の比率でもつて、「わが国の石油供給計画の実施に重大な支障を生じ、又は生ずるおそれがある」と判断し、前記輸入計画に対する通産大臣の変更勧告を出さなければならなかつたのか。
  (4) 輸入計画量とか、それが全体の消費に占める率ではなく、輸入ガソリンの販売予想価格が安すぎることが、通産大臣の変更勧告を出さなければならない事態を生んだのか。

八 石油製品の連産品たる性格並びに重油及び民生用灯油価格にみられる国内の政策を通産省のいうように理解するとしても、わずか三千キロリットルの“微々”たる量の、しかも法的に自由なガソリン輸入に対し、通産大臣の中止勧告をもつて臨むとは、あまりにも“強権的”な零細業者いじめであり、輸入ガソリンを待つ消費者いじめではないのか。
 通産省は、今回のガソリン輸入が、「アリの穴から堤の崩れになる。」とみたのであろうが、極端に多くのガソリン輸入が不可能なことは、流通機構の現状からだけみても明らかである。
 むしろ、一部でも輸入ガソリンが入ることにより、国内のガソリン価格の形成に好ましい影響を与えるとみるが、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。