質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第五号

東京新宿「京王プラザホテル」屋上の米軍電波中継施設建設計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年十二月十七日

上田 耕一郎   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   東京新宿「京王プラザホテル」屋上の米軍電波中継施設建設計画に関する質問主意書

 政府は、京王プラザホテル屋上の一角を借りあげて米軍に提供し、米軍の電波中継施設建設の用に供することを計画している。そして五十九年度には数百万円の予算を計上しているが所有者の反対により、予算は未執行の状態である。
 昨年、防衛施設庁は、この施設について、米本国から米軍「赤坂プレスセンター」に送られてくるテレビ画像を直接米軍横田基地に送るためのマイクロウェーブ中継施設である、と説明していた。
 しかし、その後この通信施設は、東京南麻布の米軍「安立会館」にも通じる施設であることが明らかになつた。
 「赤坂プレスセンター」は、「ハーディー・バラックス」という正式名をもつ米軍基地である。ここでは、米軍機関紙「スターズアンドストライプス」(「星条旗」)の編集・印刷を行つているだけではない。米軍横田基地の第五空軍司令部の出先、同司令部東京監理センター、神奈川県の米軍座間基地の出先、米陸軍東京監理施設、米国防調達会計検査局太平洋事務所など、在日米軍司令部機能の一部局がこの「赤坂プレスセンター」におかれている。
 さらに黒いスパイ機関=米陸軍第五〇〇軍事情報部隊の諜報分遣隊なども配置されている重要な軍事施設である。
 また「安立会館」は、米軍の娯楽・宿泊施設であるとともに、日米合同委員会など日米の軍事関係の会議用にも使われていることは、外務省も認めている。すなわち、京王プラザホテル屋上の通信中継施設は、「米軍家族用」というよりは、米軍横田基地、「赤坂プレスセンター」、「安立会館」の三つを結ぶ新たな強力な中継基地で、首都における米軍の作戦、監理、通信機能の強化をになうものであると考える。
 「日本列島不沈空母化」を強調し、レーガン核戦略のただならぬ展開に積極的に協力する中曽根政権の安保軍事路線は、「核の冬」の危機感を多くの国民に与えている。このとき、都心の新宿高層ビルの一角に、米軍通信中継施設が建設されることに対して多くの住民が不安を持ち、反対するのは当然であり、新宿区議会でも問題にされたところである。
 そして、白羽の矢を立てられた京王プラザホテルは、昨年九月に、新宿区長および新宿区議会議長に対し、「八月二十二日付でお断りの文書を防衛施設庁に提出した。防衛施設庁から再度の要請文書がきているが今度も固くお断りする。」と報告している。
 それにもかかわらず防衛施設庁は、日米合同委員会決定(一九八三年六月二日)や一九八三年六月二十一日の閣議決定を根拠に、明年度においても再度数百万円の概算要求を行い、いまなお京王プラザホテル側に、執拗に建設を認めるよう求めている。政府、防衛施設庁のやり方は絶対に容認できない。
 私は、京王プラザホテル屋上の米軍通信施設建設計画の白紙撤回を求めるとともに、以下質問する。

一 前述の日米合同委員会決定や閣議決定にもとづいて、仮に京王プラザホテル屋上に米軍用電波中継施設が建設されれば、そこは米軍「赤坂プレスセンター」と一体になつた米軍「地位協定」上の軍事施設となると思うがどうか。

二 防衛施設庁は、当初米軍家族用のテレビ映像の送信用であることを強調していた。
 しかし、米国は、一九八五年度国防報告で、ワインバーガー国防長官が「われわれの指揮・管制・通信(C3)システムは、われわれの核攻撃と核戦力を支援するのに必要な生存性と持久力に欠けていた」と述べ、指揮・管制・通信施設の近代化をおしすすめている。
 京王プラザホテル屋上の通信施設は、米軍が行つている指揮・管制・通信・情報(C3I)システム近代化のための軍用通信施設強化の一環ではないのか。

三 前述の日米合同委員会決定や閣議決定があるとしても、所有者の京王プラザホテルが建設を認めない限り、私権侵害となるが如き屋上の通信施設建設は不可能であると思うがどうか。

四 京王プラザホテルがあくまで建設を断つている経過からして、電波中継施設建設計画について、政府は、前述の日米合同委員会決定や閣議決定を白紙にもどすべきではないか。また、防衛施設庁の数百万円の来年度京王プラザホテル屋上の電波中継通信施設建設にかかわる概算要求は認めるべきではなく、全額カットすべきと思うがどうか。

  右質問する。