質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

疎開船「対馬丸」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年十二月八日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   疎開船「対馬丸」に関する質問主意書

 過ぐる大戦末期の昭和十九年八月二十二日、沖縄から九州への疎開船対馬丸が船客一六六一名を乗せて航行中、悪石島西北方六・七カイリの海上で、米国の潜水艦の雷撃により沈没した事件は、今日では、比較的によく知られた事実である。
 この時の遭難により、学童八百余名中、生存者は、わずかに五九名で、氏名の判明している死者は、七八九名にのぼる。一般乗客の生存者も、九八名だけである。
 沖縄では、遭難四十年忌に当たり、去る八月二十二日、那覇市で「小桜の塔」慰霊祭、八月二十六日、遭難現場悪石島沖における海上慰霊祭が執り行われた。遭難から四十年を経た現在、既に老齢に達した遺族の心情を思う時、それは誠に察するに余りあるものがある。
 さて、私はおよそ十年前の昭和五十年一月六日と同二月四日の二回にわたり、この件に関して質問主意書を提出した。まず、船体の引上げに関する質問事項に対する答弁で、「対馬丸の沈没したとみられる箇所は水深八百メートル以上あり、引上げは技術的に不可能である。」と言うことであつた。また、「遺骨のみの引上げはできないか。」との質問事項に対しては、「潜水可能な水深は五十メートル程度であり、遺骨のみの引上げもできない。」旨の答弁であつた。
 しかし、科学技術は日進月歩である。あれから、既に十年の歳月を経過した。従つて、今日では、潜水技術の分野でも長足の進歩を遂げたものと思う。例えば、五十六年十月に完成した海洋科学技術センターの有人潜水調査船「しんかい二〇〇〇」は、七、八百メートルの深い海底の調査が可能である。
 よつて、以下の質問をしたい。

一 「しんかい二〇〇〇」による、現在までの最深調査地点は、水深何メートルか。

二 現在の潜水能力によれば、対馬丸の船体の引上げは可能であると思われるが、どうか。

三 遺骨のみの引上げは、技術的に可能か。可能であれば、その意思はあるか。実施の見通しはどうか。

四 対馬丸の正確な沈没地点と船体の現況を調査することは、技術的には可能であると思うがどうか。

五 四の調査を実施する際の費用は、どれ位かかると考えるか。概算を示されたい。

六 少なくとも、四の調査を早急に実施してもらいたい。それは、国の責務であると考えるが、この点に関して、政府はどのような認識を持つているか。

  右質問する。