質問主意書

第101回国会(特別会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一〇一第八号

昭和五十九年三月二十一日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員小笠原貞子君提出スパイクタイヤによる粉塵公害対策強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小笠原貞子君提出スパイクタイヤによる粉塵公害対策強化に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 環境庁においては、昭和五十七年度に札幌市においてスパイクタイヤによる粉じん及び騒音の実態調査を実施したが、昭和五十八年度は、仙台市において同様の調査を実施しているところである。昭和五十九年度は、実態調査のほか新たにスパイクタイヤによる粉じんの生体影響について動物実験を主体とする調査を実施する予定である。
 その後の具体的な計画については、これらの調査結果等を踏まえて検討することとしている。
(2) 御指摘の調査結果については、環境庁においても関心を有しており、スパイクタイヤによる粉じんの生体影響に関する知見の一つとして受けとめている。
 また、御指摘のような助成を行うことは考えていない。
(3) 環境庁においては、スパイクタイヤによる粉じんが人間の健康に及ぼす影響の把握に資するため、(1)において述べたとおり昭和五十九年度に動物実験を主体とする調査を実施する予定である。その後の計画については、この調査結果等を踏まえて検討したいと考えている。
 また、地方自治体に対し御指摘のような助成を行うことは考えていない。
(4) 検討会の構成員については、(1)において述べたとおり昭和五十九年度にスパイクタイヤによる粉じんの生体影響について動物実験を主体とする調査を実施する予定であるので、その際、医学的専門知識を有する者を追加することを考えている。

二について

(1) スパイクタイヤは、凍結路面等における制動性能等に優れ、交通事故防止の面で相当程度効果があると考えているが、スパイクタイヤの性能を過信し、雪道において乾燥路面の場合と同様なスピードで運転することが交通安全上問題であることは一般に指摘されているところである。スパイクタイヤの性能及び雪道での安全運転方法について正しい知識を広く国民に認識させ、その理解と協力が得られるよう、積極的に広報、指導等に努めてまいりたい。
(2) 政府においても、昭和五十九年度からスパイクピンに先端材料を利用したスパイクタイヤの低公害化技術に関する研究を実施することとしている。
(3) JIS規格については、関係省庁等で実施しているスパイクタイヤの安全性及び公害に関する調査研究結果等を踏まえ、必要に応じ検討してまいりたい。
(4) 現在、社団法人日本自動車タイヤ協会が、自主的に、ピンの打込本数及び突出寸法のより一層の削減、ピンの軽量化等を内容とする、現段階で最良の基準を策定中と聞いている。
(5) いわゆる自動着脱チェーンについては、民間において技術評価が行われている段階であり、政府としても、こうした動向を注視してまいりたい。

三について

(1) 積雪地域における冬季のスリップ事故と装着タイヤの種類に関し、秋田県、新潟県、山梨県、富山県及び石川県において昭和五十九年一月十六日から同年二月十五日までの間に発生した交通事故について調査したところによれば、次の表のとおりであり、警察庁においては、スパイクタイヤの装着は、交通事故防止の面で相当程度効果があると考えている。

図 表 スリップ事故実態調査結果(五県合計) 1/2

図 表 スリップ事故実態調査結果(五県合計) 2/2

(2) 現時点で直ちにスパイクタイヤの使用を全面的に禁止することは、交通安全上問題があると考えている。しかしながら、現にアスファルト粉じん、路面の損傷等の問題が生じていることも事実であるので、警察庁においては、当面の対策として、スパイクタイヤが不必要な期間において、その使用自粛の呼び掛けをきめ細かく行うなど必要な措置を講じるよう指導しているところである。

四について

(1) スパイクタイヤ等に係る道路の維持管理上の問題、粉じんによる環境問題、交通安全上の問題等について現在調査中であり、その結果を踏まえ、具体的方策を検討してまいりたい。
(2) 道路の維持、修繕に関しては、一定の基準以上の修繕等に限つて補助の対象としている。スパイクタイヤ等による舗装の摩耗により必要となる事業の大部分は、補助の対象となるものではない。