質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第四五号

全斗煥大統領来日についての日・韓合意に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年八月七日

立木 洋   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   全斗煥大統領来日についての日・韓合意に関する質問主意書

 中曽根内閣が、全斗煥大統領来日の「今秋実現」で韓国側と合意したことは、きわめて重大である。
 従つて、次の事項について質問する。

一 軍事クーデーターで成立した全斗煥政権は、それに反対して起ち上つた光州市民・学生を銃剣で弾圧し、数多くの人士・学生を虐殺し、韓国でも前例のない凶暴な軍事独裁を強行したといわれている。また、全政権は、国会を解散し、八十一人の立法会議議員全員を任命し国会に代えて、二カ月で百十八件もの法律を可決。そして、政治風土刷新法により八百三十五人の政治家、言論人、宗教家などを追放し、今だに九十九人が追放されたまま今日に至つており、また一言論、報道、集会、結社の自由も禁止されるなど、自由と民主主義に反した文字どおりのファッショ独裁政権である。
 全斗煥大統領を来日させることは、全政権のこうした反人道的、非民主的行為を政府が追認し免罪することになるのではないか、政府の見解を問う。

二 一九八三年の日・韓共同コミュニケで政府は、「朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含む東南アジアの平和と安定にとつて緊要」であり、「韓国の防衛努力が……朝鮮半島の平和維持に寄与している。」とのべている。

(1) 政府は一九六九年十一月の日米共同声明第四項の「韓国の安全が日本自身の安全にとつて緊要」とのべた認識と変わりはない(一九八三年三月二二日、野間友一衆議院議員提出「日韓首脳会談・共同声明に関する質問」に対する政府答弁書)と表明しているところであるが、だとすれば、「韓国の防衛努力」が日本の安全にも寄与するということになるのか。
(2) 韓国側は、韓国は日本の安全にとつての「防波堤」論などを展開しているが、政府はこのような主張をどう考えるか。
(3) 対韓経済援助は四十億ドルをメドとして、本年までで、すでに八百四十六億円の借款が約束された。これは、結果として韓国の軍事力強化に寄与するものとなることを認めるか。
(4) 一方、韓国の第五次経済開発五カ年計画は修正されたが、メドとして約束された対韓援助の総額四十億ドルも変わらざるをえないのではないか。
(5) 朝鮮の統一は、自主的及び平和的方法によつて行われなければならないと思うが、政府の基本的見解を問う。またそれは、在韓米軍と日米両政府に支えられた韓国主導の「統一」であつてはならないと思うが、政府の見解はどうか。

三 最近、日・韓の軍幹部の交流が増加しているが、この交流の機会を利用して、日韓の軍事情報の交換を行つているのではないか、明らかにされたい。

四 日韓の間では軍事関係のいかなる条約も存在しないので、日韓間の軍事関係について軍事情報を含めて一切の軍事関係は持ちえないのではないか。

五 「韓国防衛」のための軍事演習「チーム・スピリット」が毎年行われている。教育、訓練の名目であつても、わが国自衛隊が、この「チーム・スピリット」に参加することは、「韓国防衛」という他国防衛に参加することになり、集団的自衛権の行使を禁じているわが国憲法上参加できないと思うがどうか。

六 大韓航空機撃墜事件でソ連の責任は当然であるが、損害賠償について大韓航空会社に第一義的責任があることは明らかである。

(1) 政府は、大韓航空機事故遺族会の賠償交渉がすみやかに解決するため、韓国政府にどのような内容で、いつ、いかなるルートを通じて申し入れたか。
(2) 政府は、韓国政府から大韓航空会社に誠意をもつてすみやかな解決を行うよう指導すると確約をえているのか。
(3) 大韓航空機事故遺族会は、損害賠償訴訟を行い、裁判にもち込まれているが、政府はこれにとらわれず、今後も韓国政府に賠償のすみやかな解決を申し入れてゆく考えか。
(4) 本件に関する損害賠償訴訟が行われていても、大韓航空機撃墜事故の真相究明のための関係資料の提示に積極的に協力するか。

  右質問する。