質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第四二号

在日米軍に対する「思いやり予算」による米軍用家族住宅の建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年八月三日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   在日米軍に対する「思いやり予算」による米軍用家族住宅の建設に関する質問主意書

 在日米軍経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」によつて、在日米軍用の家族住宅の建設が進められている。青森県三沢市、神奈川県横須賀市、沖縄県等において特に顕著である。
 ところで周知の通り、沖縄県には、在日米軍基地の実に四十四パーセントが集中している。(なお、一時使用を除く専用施設のみをみると、驚くなかれ、なんとその七十五パーセントを占めている。)
 とりわけ、沖縄本島中部の市町村の中には、例えば、嘉手納町の八十四パーセントを筆頭に、北谷町五十七パーセント、読谷村四十七パーセント、沖縄市三十八パーセント、宜野湾市三十四パーセント等々、これ等の市町村の全面積に占める米軍基地の比率は、実に、驚くばかりの高率であり、「基地の中に沖縄がある。」と言われるゆえんである。
 しかも、これらの基地用地は、住民が進んで提供したものではなく、第二次大戦による軍事占領の結果が、今だに尾を引いているものなのである。現在の基地の中には、懐かしい故郷のわが家もあれば、田も畑もあつたのである。
 では、これ等の土地のかつての居住者たちは、いわば故郷を喪失して、何処へさすらつているのだろうか。各地に四散して行つた者も多いが、故郷に残つた人たちは、接収を免れた土地の片隅で、それぞれの「なりわい」を営んでいるのである。
 その中のある者は、米軍用地料の一括払い金と銀行借り入れ資金によつて、米軍家族用の貸住宅を建築して、その家賃収入によつて生計を立てている。それが沖縄の現実である。
 沖縄の貸住宅業者は、決して大資本家等ではない。その大部分は、零細な庶民業者で、せいぜい、貸住宅の一~二棟程度を所有するに過ぎない。
 沖縄の米軍基地は、基本的には、質・量ともに整理縮小されるべきである。しかし、現状は、基地依存の生活を余儀なくされている人々の窮状を、看過する訳にはいかない。
 そこで、こういう沖縄の現実を踏まえて、特に最近、問題が深刻化している在日米軍用家族住宅の建設に関して、以下の質問をする。

一 昭和五十四年度以降、昭和五十八年度までの在日米軍経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」による米軍用住宅の建設実績と建築費の総額を、年度別に示されたい。なお、沖縄県に係るものについては、それぞれ別に示されたい。

二 昭和五十九年度における前記予算による建設計画戸数と予算総額及び進捗率を示されたい。なお、沖縄県に係るものについては、別に示されたい。

三 来年度以降については、何年度までにどれだけの戸数を建設する計画であるのか、おおよその予算額とともに、年次別にその概要を示されたい。

四 沖縄県における米軍用住宅の需要戸数は、どれくらいと考えているのか。

五 現在、沖縄県における基地内家族住宅と民間貸住宅の戸数の実態は、それぞれ、何戸と掌握しているか、示されたい。

六 現在の沖縄県における米軍要員の家族住宅の需給状況については、どのように認識しているか、伺いたい。

七 政府が現在進めている、米軍への「思いやり」の住宅建設は、沖縄の人々の首を締めつける結果とはならないか、政府の認識を伺いたい。

八 (1) 政府が、今後も、引き続き、米軍への「思いやり予算」を膨脹させて、米軍用住宅の大増設を推進すれば、沖縄の民間貸住宅業に、深刻な影響を及ぼすことが懸念されるが、この点に関して、政府はどのような認識をもち、どのような対応策を考えているのか伺いたい。
  (2)米軍用家族住宅を大幅に増設することにより、これ等沖縄県民の生活不安や県内経済の混乱に対しては、どのような施策を講ずる考えなのか、見解を伺いたい。

九 在沖米軍は、民間住宅の老朽化や質の問題に言及しているようだが、政府は、民間の貸住宅業者に、長期・低利の融資を行う等、その保護育成について、「思いやり」のある配慮をする考えはないか、政府の見解を伺いたい。

十 今後の米軍用住宅の建設と供給に当たつては、現地の貸住宅業団体の関係者とも、十分協議の上で、進めて貰いたいと思うが、政府においては、その意思があるかどうか、伺いたい。

  右質問する。