質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第四一号

松本市都市計画公園(松本運動公園)に対する補助金の交付に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年八月二日

中山 千夏   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   松本市都市計画公園(松本運動公園)に対する補助金の交付に関する質問主意書

 国が都市公園の建設に補助金を交付することは、きわめて有意義なことであるが、都市公園の建設中に補助金の交付をうけている県が他の目的のためこれを撤去する計画を同時に進めているとすれば、国民の血税をまつたく無駄にしたことになる。
 昭和五十八年十二月公表された会計検査院の昭和五十七年度決算検査報告には、「長野県上伊那郡箕輪町の不正」が報告され、同町が四十七年度から一〇年間にわたつて架空工事や水増し請求等によつて補助金をだまし取つていた事実が明らかにされている。
 この不正事件について、長野県は、会計検査院に遺憾の意を表明した吉村知事名の文書を提出しているが、その長野県が、松本運動公園建設のため、建設省およびその他の省庁から多額の補助金の交付をうけておきながら、その建設中に同公園の重要な一部を撤去することになる県営「松本空港の拡張計画」を推進していることは、まことに許し難い事態といわなければならない。
 また、その事実を知りながら補助金の交付をしたとすれば、それを交付した政府の責任も重大である。
 補助金等の交付の不正な申請および補助金等の不正な使用の防止をはかる目的で制定された「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第二十九条第一項、第二項は、「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者」およびその「情を知つて交付又は融通をした者」に対し、五年以下の懲役もしくは一〇〇万円以下の罰金を科している。
 よつて、以下の点について質問する。

一 長野県の松本運動公園は、県営松本空港の滑走路をはさんでその東西に二分された形で総合運動公園として整備されているが、運動公園のうち、空港東側は目下建設中であり、その計画公園面積は二七・五ヘクタールで、その中にサッカー場、プール、馬場、森林動物広場、野球場およびその他の公園施設が設置されることになつている。
 このうちプール、サッカー場、馬場等はすでに完成しているが、ひとつの運動公園としてはその二分の一弱ができあがつた状態にすぎず、現在毎年長野県が補助金の交付をうけて建設している最中であるが、前記運動公園の補助金交付申請に当たり当初県から提出された計画書に基づいて、総計画および全体面積、各施設の名称を明らかにされたい。

二 次に、前記運動公園のこれまでに建設した年度毎の施設の名称と総事業費およびこれに対して交付された各省庁別補助金額を事業開始年から昭和五十九年度に至るまで年度別に明らかにされたい。また、昭和五十九年度において、まだ補助金が交付されていないとすれば、長野県から提出されている昭和五十九年度事業計画中から、くわしい内容およびその全体事業費とこれに交付される補助金の予定額(予算)を各省庁別に示されたい。

三 前記松本運動公園建設のため、今日まで長野県に対して補助金を交付してきた建設省もしくは他の省庁は、国から補助金の交付をうけて右運動公園を建設中であつた昭和五十二年当時、長野県が県営松本空港の拡張をすでに意図しており、地元松本市の昭和五十二年十二月の定例市議会(十二月十四日)において、同市の和合正治市長が松本空港を拡張するため、第四次空港整備計画への編入を目指し、「県とも十分話し合いを進めている。」旨の発言をしている事実を知つているか。

四 前記松本運動公園に補助金を交付した建設省もしくはその他の省庁は、交付するにあたり、国から補助金の交付をうけて同運動公園を建設中の昭和五十四年六月に、長野県が県営松本空港の拡張を目指して、その可能性の調査を開始しており、さらに同月の定例県議会において、当時の吉村午良副知事(現知事)らが県営松本空港が拡張可能であるとの調査結果が出れば、県営松本空港の拡張を長野県の大規模開発プロジェクトに加えたい旨の答弁をしている事実を知つていたか。

五 また、昭和五十四年十二月、県営松本空港拡張可能調査の調査結果が、これを調査した株式会社日本空港コンサルタンツより長野県に提出されたが、その報告書の中に、補助金の交付をうけて建設中の前記松本運動公園の重要な一部(プール、サッカー場、馬場、森林動物広場等)を撤去して空港の敷地にする県営松本空港の拡張図面がすでに作成されている事実を知つていたか。

六 前記松本運動公園に補助金を交付した建設省もしくはその他の省庁は、長野県が、国から補助金の交付をうけて同運動公園を建設中の昭和五十七年十一月十四日、松本空港整備基本計画調査(修正版)を作成し、その中で、補助金の交付をうけて建設中の右運動公園の中の重要な一部分であるプール、サッカー場、馬場を撤去物件としている事実を知つているか。

七 昭和五十四年に行われた前記松本空港拡張可能調査に基づき、長野県はそれ以来一貫して、県営松本空港拡張を推進し、昭和六十年三月を目途に、建設中の前記運動公園の重要な一部を空港の敷地とする「空港変更許可申請」を提出しようとしている事実を知つているか。

八 三ないし七にあげた事実を知らないとすれば、政府において三ないし七にあげた各質問事項記載のとおりであるか否かを調査し、回答されたい。

九 右調査の結果、三ないし七にあげた事実が確認された場合、長野県は、県民、市民の体育向上、娯楽のために都市公園-総合運動施設-が是非とも必要であると称して国から補助金の交付をうけながら、その建設中に同じ長野県がこれを撤去することになる計画を同時に進めていたことになり、その場合、長野県は「偽りその他不正の手段」により補助金の交付をうけたことになると思うが、血税に苦しむ国民を愚弄したこのようなゆゆしき事態に対し、補助金を交付した政府はこれにどのように対処するつもりか。

十 また、前記松本運動公園の建設に補助金を交付した政府として、長野県に対し、同運動公園を保全するよう厳重に指導、勧告をすべきであると考えるが、どうか。

  右質問する。