質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第三九号

砂糖価格の安定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年八月一日

鈴木 一弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   砂糖価格の安定に関する質問主意書

 砂糖は、国民の食生活にとつて不可欠な甘味料である。ところがよく知られているように、我が国における砂糖の小売価格は、世界でも有数の高さである。その最大の原因は、砂糖に課されている諸税や課徴金があまりにも高いことにある。現在、諸税や課徴金が小売価格に占める割合は約四割、形成糖価のそれは約五割にものぼるといわれる。
 このような砂糖の高価格水準は、国民の大きな負担となり、消費を低迷させる一因となり、ひいては国内産糖の振興にも暗い影を投げかけている。加えて、このような重い公租公課を課されていない他の甘味料と砂糖との競争条件に不公平を生じさせ、構造改善中の精糖工業界の金利負担を増大させるなど、様々な問題を引き起こしている。
 そこで、次の諸点について、政府当局の見解を明らかにしてもらいたい。

一 輸入粗糖の関税について

 我が国は、国内で供給される砂糖の約七割を外国から粗糖として輸入しているが、輸入粗糖には、トン当たり四万千五百円の関税が課されている。本年七月上期における粗糖の平均輸入価格は、トン当たり三万九千八百四十円であることから、関税は平均輸入価格の実に一〇四・二パーセントにも達している。
 これは、近年国際糖価が低迷していることにもよるが、輸入されている生活必需品のなかで、これほど高率の関税を課されている例が他にあるであろうか。これが、仮にコストの高い国内産糖を保護するための措置であるとするならば、そのための目的税とすべきであろう。しかも、関税については、蚕糸砂糖類価格安定事業団(以下、「事業団」という。)による売買操作によつて、すでに輸入粗糖から課徴金(調整金)として徴収されていることからみても、これが国内産糖保護のためだとする考えは説得力に欠けるといわざるをえない。
 また、砂糖と競合関係にあるぶどう糖、異性化糖等の原料となるとうもろこしの場合は、そのほとんどが無税で輸入されている。このため、高い国産澱粉との抱き合わせ制度という負担はあるものの、ぶどう糖、異性化糖等は、コスト面、したがつて製品価格の面において砂糖よりも優位に立つているといわれる。
 これらの事実からみて、輸入粗糖の関税は、早急に大幅引下げを実施すべきではないのか。
 また、長期的には関税を撤廃し、これらに代わるものとして、国内産糖価格支持のための目的税を創設することも検討する必要があるのではないか。

二 砂糖消費税について

 砂糖には、最終消費の段階で消費税が課されている。その税率は、最も消費量の多い上白糖において、キログラム当たり十六円であり、現在形成糖価がキログラム当たり二百二十円であることから、その七・三パーセントに当たる。昭和五十七年度における徴収額は四百三十八億円である。
 砂糖消費税は、戦費調達のため奢侈品に対する課税制度として明治三十四年に創設された。しかし、今日、砂糖を奢侈品と考える者はいないし、いわんや戦費調達の必要性に至つてをやである。
 それにもかかわらず、本制度が今もつて存続しているのは、砂糖が今や国民の必需品になつたため、税収が比較的安定し、徴税技術上の問題も少ないことによるものであるといわれている。
 これらの事実に照らしてみても、政府は課税の理由はともかくとして、徴収しやすいところから徴収するためにこの税を存続させているのだといわれても仕方がないのではないか。
 砂糖消費税は直ちに撤廃すべきではないか。

三 糖価安定資金について

 事業団は、輸入粗糖の売買操作を通じて、粗糖の平均輸入価格が安定下限価格を下回る時には糖価安定資金を徴収して積み立て、平均輸入価格が上限価格を上回つた時にはその資金を放出することによつて、砂糖の安定価格を図つている。
 しかし、粗糖の平均輸入価格は、安定上限価格を上回ることは少なく、逆に、安定下限価格を下回ることは多い。このため、事業団内部には、巨額の糖価安定資金が積み立てられていることが多い。それが払底し、支払不能に陥つた事態は、昭和四十年に事業団が発足して以来、わずかに昭和四十九年に起こつただけである。
 糖価安定資金の事業団内部の積み立ては、本年三月末において、約三百八十一億円にのぼり、今後も増大を続ける見通しにあるといわれる。だが、現在のように、事業団による安定資金の徴収額が大きくなつていくような時には、精糖会社の安定資金支払いに伴う金利負担が増大し、その経営の圧迫要因となる。それはまた、砂糖の卸売価格を押し上げる要因にもなりやすい。
 したがつて、粗糖の平均輸入価格が安定下限価格を下回つても、安定資金の徴収は無制限に続けるのではなく、事業団内部の積み立て額が一定の水準に達した場合、その徴収額を減じるなり、徴収を中止するなりの措置を取り得るよう、制度の改善を図るべきではないか。

四 調整金について

 事業団は、粗糖の平均輸入価格が国内産糖合理化目標価格を下回つた場合には、国内産糖価格支持の財源とするため調整金を徴収している。その額は、昭和五十八年度において五百四十九億円である。
 昭和五十八年度において国内産糖の価格支持は、この調整金と、政府が事業団に交付した二百八十六億円とによつて行われた。即ち、財源の大半は輸入粗糖から徴収した調整金にあおいでいるのである。これもまた、最終的には消費者である国民が負担しているのである。
 政府は、現行の国内産糖価格支持政策を改めて、大豆等で行われている不足払い制度とすることを検討すべきだと思うがどうか。また、その財源としては、前述したように関税(昭和五十七年度において八百八億円)を撤廃し、そのかわりに創設する目的税をもつてしてはどうか。

  右質問する。