第101回国会(特別会)
質問第八号
スパイクタイヤによる粉塵公害対策強化に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和五十九年三月十日 小笠原 貞子
スパイクタイヤによる粉塵公害対策強化に関する質問主意書 道路の車粉塵問題は、自動車がスパイクタイヤを装着して走ることにより生じ、路面を削り、粉塵を生じさせて大気を汚染し、騒音を増大させるのみならず、生活環境の悪化や長期的には人体にも悪影響を及ぼすものとして、今や大きな社会問題となつている。
一 人体への健康影響調査について 車粉塵によつて人間の喘息や慢性気管支炎などが悪化することはすでに明らかになつている。野良犬の解剖や、マウスやラットなどの動物実験の結果、動物の肺の中にスパイクピンとアスファルトの成分が発見されていることや、車粉塵を吸つている動物がそうでない動物より成長が遅いことなどの事実が次々に明らかになつてきている。
(1) 環境庁は、五十七年度に「自動車用タイヤによる粉塵等対策調査検討会」を発足させ、五カ年計画で研究を進め対策を講ずるといわれているが、その具体的な年度計画と調査内容はどのようなものを考えているのか明らかにされたい。
二 スパイクタイヤ並びにピンの改良について スパイクタイヤによる問題では、環境・公害問題のほかに、道路の摩耗による補修費の増大(経済的負担増)や、交通安全上の根本にかかわる制動効果の問題などがあり、他面スパイクタイヤの使用者は、公害面では「加害者」であり「被害者」でもあるという複雑な問題を内包している。 (1) スパイクタイヤ“万能論”について スパイクタイヤは、凍結した道路上では確かに威力を発揮するが、積雪路上では他のタイヤ(スタッドレスタイヤ等)とほとんど差がないし、逆にアスファルト上(乾燥した路上)ではスパイクタイヤの方が制動距離が伸びて危険だといわれている。
(2) スパイクタイヤのピンの改良について 北海道開発局土木試験所の久保宏部長(工学博士)の研究によると、ピンの突出量を一・五ミリから一ミリに減らすと二二パーセント、ピンの底部のフランジ径を一〇ミリから八ミリに減らすと二三パーセント、両方を組み合わせると五一パーセント、いずれも摩耗量が減ることが明らかになつている。(『土木試験所月報』三五九号)。更に、ピンの本数、形状、重さ、硬さなどを研究すれば、摩耗も更に減少することは確実である。
(3) スパイクピンを対象としたJIS規格の検討について 現在までスパイクピンについては、規格がなく、ピンメーカーにより材質・形状もバラバラで野放し状態が続いている。しかもピンメーカーは、タイヤメーカーと違い、中小業者がほとんどである。タイヤチェーンに厳しいJIS規格が定められているように、まさに安全と公害の問題に密接に関係があるスパイクピンにこそJIS規格を検討すべきだと思うが、通産省の考えはどうか。 (4) スパイクピンの規制について 日本自動車タイヤ協会では、今年五月までにピンの二次基準を設けることにしているといわれているが、その具体的内容はどのようなものか。
(5) 自動着脱チェーンの開発について スパイクレスタイヤの研究・開発の一環として、自動的に着脱ができるチェーンの実用化について、通産省は、本格的研究に取り組むべきだと思うがどうか。
三 警察庁のスパイクタイヤ問題に対する取組みについて 警察庁はスパイクタイヤの規制・禁止は、交通事故の多発につながるという考え方のようだが、その根拠となる科学的な研究及びそのデータを明らかにされたい。
四 当面する緊急課題について (1) 除雪・排雪・融雪等への政府の助成の強化について スパイクタイヤによる車粉塵被害は、特に初冬や春先などの融雪期に極端に悪化する。関係自治体は、特にこの期間に集中して除・排雪や融雪を徹底して行い、スパイクタイヤが不必要な状況にする為に努力を強めている。これを効果あるものにするには、除雪車・融雪車の増車、体制(人員)の強化等の新たな財政的負担がどうしても必要である。
(2) 道路の摩耗による維持補修費の助成の拡大について 北海道開発局によると、ひと冬にスパイクタイヤによつて削られる国道、道道、市町村道の道路補修費の合計は百億円、札幌市だけで二十億円ということである。また仙台市でも十四億円かかつている。
右質問する。 |