質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第五号

「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年二月七日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


 「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の運用に関する質問主意書

 沖縄本島にアメリカ合衆国軍隊の施設たる「嘉手納飛行場」が存在し、その運用により生ずる音響に起因する障害が著しいことは、政府の認定するところである。
 そこで、政府は、その障害を防止し、又は軽減するため必要な住宅の防音工事に関し、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四九・六・二七、法律第一〇一号)を適用し助成の措置を採つておられる。甚だ当然のこととは言え、その御努力には敬意を表する次第である。
 しかしながら、その助成措置に関して若干の矛盾が生じていることは、すでに御承知のことと推察する。つまり、同法第四条の規定により、防衛施設庁長官は、区域指定の告示を嘉手納基地関係では三度出している。すなわち、第一回は昭和五十三年十二月二十八日、第二回は昭和五十六年七月十八日、第三回は昭和五十八年三月十日である。以上の告示による区域は、騒音源を中心に、小・中・大とほぼ三つの同心円になると仮定すれば、後の告示の区域程騒音源から遠ざかることとなる。従つて、騒音の程度もWECPNL(加重等価感覚騒音基準)が、八五以上、八〇以上、七五以上と、次第に低くなつている。
 ところで、今ここで問題となるのは、同法第四条にいう「当該指定の際現に所在する住宅」に関して助成措置を採るとの文言である。前記のごとく、防衛施設庁長官の指定は、三度にわたつて行われているから、例えば、最初の区域では、昭和五十四年一月一日に建てられた住宅でも、防音助成が受けられないにもかかわらず、最後の区域では、昭和五十八年三月十日に建てられた住宅に対しても助成が受けられることとなる。その間、実に四年以上の時期的ずれがある。従つて、騒音源に近い地域で先に建てた住宅よりも、騒音源に遠い地域で後に建てた住宅が助成措置を受けるという矛盾が生じているのである。
 この様なことは、法の下の平等の原則に照らして、明らかに矛盾であり、早急に是正されるべきものであるとの観点に立つて、以下、若干の点に関して政府の見解を質したい。

一 前文で述べたような問題点が発生していることに関して、政府は、確かな認識を持つておられるか否か承りたい。

二 現実に生じている不公平を是正するためには、まず、法の運用を適正に行うべきである。そこで、昭和五十三年十二月二十八日と昭和五十六年七月十八日の二回の防衛施設庁長官の「指定」という行政行為を「撤回」して、最後の昭和五十八年三月十日の「指定」に合わせて、「指定日」を統一するのも一方法だと考えるが、政府の見解を承りたい。

三 もし、二において述べたような日時に「指定日」を統一することが不可能ならば、前記三回の指定をすべて「撤回」して、新たに、例えば、昭和五十九年三月十日に統一した「指定」をするという方法についてはどうか、政府の見解を承りたい。

四 以上は、行政処分を手直しすることによつて、実質的矛盾を解消し住民の被害を救済するという観点から尋ねたが、もしそれが不可能であるならば、立法論として「法の改正」をすべきであると考える。何故ならば、現実に騒音を発生させている「嘉手納飛行場」をアメリカ合衆国に防衛施設として提供しているのは政府の責任であり、その施設から発生する航空機の爆音による被害をもろに被つているのは、「嘉手納飛行場」周辺地域に住まざるを得ない沖縄県民だからである。
 よつて、政府は、同法第一条の「防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置」を講じて、「関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与する」という理念を実現するために、同法第四条の不備を正すため、改正の手続を採るべきであると考えるが、これに対する見解を承りたい。

  右質問する。