質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第一号

米国上院外交委員会作成のNATO諸国への核配備情報提供についての報告書とわが国の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年一月二十六日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   米国上院外交委員会作成のNATO諸国への核配備情報提供についての報告書とわが国の対応に関する質問主意書

 本年一月二十二日付朝刊各紙は、ワシントン発共同電を掲載し、米国政府が一九六七年以降毎年NATO諸国に対し、核兵器の配備に関する詳細な情報を提供していた事実が、一九七三年九月の米国上院外交委員会米安全保障諸協定・対外公約小委員会作成の報告書によつて明らかにされたことを大きく報道している。以下、これに関連していくつかの点を質問する。

一 米国上院外交委員会の前記報告書によると、米国政府は、一九六七年以降国防長官がNATO諸国国防相宛の「年次書簡」の形で、核兵器の型、数量、爆発力及び配備場所などにわたる詳細な情報を提供していたことが明記されている。これは、「核兵器の存在については、いかなる国の政府に対しても肯定も否定もしない。」として来た米国政府の従来の方針と明らかに食い違つていると政府は考えないのか。政府の見解を伺いたい。

二 米国政府によるNATO諸国への核配備情報提供は、相互間に締結されている「原子力-相互防衛目的のための協力協定」に基づいて行われている模様であるが、この情報提供は現在も継続されていると政府は承知しているのか。

三 米国を基軸とした場合、NATO諸国とわが国の立場は、戦略観を共有し防衛努力を分担し合うという側面では、明らかな共通性を有していると考えられるが、核兵器配備の情報提供に関する米国政府の対応は、NATO諸国へとわが国へとでは余りにも格差があり過ぎるのではないか。この点について、政府はどのように考えているのか。

四 政府としては、前記米国上院外交委員会の報告書に関して、まず事実関係を精査し、それに基づいて、今後の基本方針としては、少なくともNATO諸国並みの核配備情報の定期的伝達を要請すべきではないのか。

五 政府は、従来、核の存否を明らかにしない米国の政策を全面的に信頼し、また、日米安保条約の事前協議制を踏まえて、米国による核兵器持込みは無かつたとの認識と答弁に終始して来たが、今回の米国上院外交委員会の報告書の存在は、そのような政府の方針に明らかな再検討を迫るものとは考えないのか。

六 政府は、NATO諸国の対米軍事関係と日米安保体制とは、実態が異なるとして、従来通りの曖昧且つきわめて虚構的な対応を続けてゆく方針か。

七 政府は、核兵器の配備状況と持ち込みに関して、かつて一度たりとも米国政府から情報の提供を受けたことはないのか。
 また、同盟関係の強化されている最近の日米関係の下での実態はどうか。

八 核持込みに関する日米両国政府の、今やパターン化された対応や答弁にも拘わらず、日本国民の多数は、非核三原則の厳守について、根深い疑念を抱き続けていることは、殆んどの世論調査に共通している。政府は、今回の米国上院外交委員会報告書にかんがみて、この際朝鮮戦争後から現在まで、横須賀、横田、三沢、岩国、沖縄等の在日米軍基地に対する核兵器の持込みや貯蔵等に関する公式情報の提供を、改めて要請する考えはないのか。

九 米国海軍は、今夏から水上艦艇や潜水艦を対象とした核・非核両用のトマホークの搭載を開始する予定であり、第七艦隊の主要艦はすべてこれに該当することになる。政府は、このような新たな事態に対して、基本的にどのように対応する考えか。

十 日本に寄港するすべての米艦艇に対しては、一艦ごとに核の有無についての問い合せと確認を行うことを、この際ルール化すべきではないのか。

  右質問する。