質問主意書

第100回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一〇〇第三号

  昭和五十八年十月十四日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員下田京子君外一名提出輸入自由化攻勢下の肉用牛生産振興に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君外一名提出輸入自由化攻勢下の肉用牛生産振興に関する質問に対する答弁書

一について

1 肉用子牛価格の低落については、最近の農産物貿易問題が生産者の心理に微妙な影響を与えていることによる面もあると考えられるが、基本的には、供給面で肉用子牛の生産が増加している中で、需要面では、昭和五十四年度及び昭和五十五年度の肉用子牛価格の高騰時に導入した肥育素牛の肉用牛としての出荷時期を迎え、肥育経営の収益性が悪化し、肉用子牛の購買力が停滞しているという事情等によるものと考えている。

2(1) 肉用子牛価格安定事業は、肉用子牛価格の異常な低落が生産者の経営に及ぼす影響を緩和するために実施しているものであつて、生産費を保証する趣旨のものではない。
 (2) 肉用子牛価格安定事業において生産者補給金の交付準備金に不足を生じた場合には、社団法人肉用牛価格安定基金全国協会から所要の資金を無利子で貸し付けることとしているところである。
 昭和五十九年度以降については、最近の肉用子牛価格の動向、交付準備金の状況等を考慮の上、適切に対処する考えである。

3 肉用子牛価格の低落に対しては、肉用子牛価格安定制度の適切な運用を図るとともに、子牛生産奨励金の交付等を行い、肉用牛経営の安定を図つている。また、昭和五十八年九月から、新たに、特例措置として雌子牛購入飼養奨励金等を交付することとしたところである。
4 配合飼料価格については、適正な価格形成が行われるよう関係業界を指導するとともに、配合飼料価格安定制度の適切な運用を通じ、畜産経営に与える影響の緩和に努める考えである。

二について

1 先般の日米協議における米側提案の内容は公表できないが、日米両国の考え方の間には大きな隔たりがある。
 また、米国に対しては、これまで機会あるごとに、米国自身が食肉輸入法により自国の肉用牛生産を保護している事実を指摘するとともに、我が国が輸入自由化要求に応じ難い諸問題があることについて、説明を行つているところである。
2(1) 農業と農村は、国民生活にとつて最も基礎的な物資である食料の安定供給を始め、就業や居住の場の提供、国土・自然環境の保全など我が国経済社会の発展と国民生活の安定に重要な役割を果たしている。
 自由貿易体制の維持拡大は我が国の基本政策の一つであるが、農産物の市場開放については、関係国との友好関係に留意しつつ、国内農産物の需給動向等を踏まえ、我が国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要である。
 農産物貿易問題については、このような立場から適切に対処していくことが必要であると考えている。
 (2) 農産物貿易問題についての政府の見解は(1)において述べたとおりであるが、政府としては、政府広報等を通じ国民各層に対し我が国農業及び農産物貿易の実情等を説明し、その理解が得られるよう努めてきているところであり、今後ともこのような努力を続けていく考えである。
 (3) 牛肉の輸入の自由化については、我が国の肉用牛の生産事情等からすれば応じ難い諸問題があると考えている。

3 牛肉については、昭和五十五年十一月七日に閣議決定された「農産物の需要と生産の長期見通し」において、将来の需給見通しが明らかにされている。
 また、牛肉の輸入に関しては、国内生産で不足する部分について需給の動向に十分配慮した計画的な輸入を行つていくこととしている。