質問主意書

第98回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律の適用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年五月二十六日

上田 耕一郎   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律の適用に関する質問主意書

 政府は、「日米防衛協力の指針」を作成して以降、自衛隊基地の米軍一時使用を認める地位協定第二条第四項(b)の基地を急増させている。
 地位協定第二条第四項(b)の基地はすでに合計十九基地(三億三千五百万平方メートル)にもなつている。
 昭和五十七年度以降だけでも航空自衛隊新田原飛行場(宮崎県)、千歳飛行場(北海道)、小松飛行場(石川県)など八基地と関連するレーダー施設などが米軍と共同使用になつている。
 このことは地元住民に大きな不安を呼びおこし、新田原飛行場の場合、米軍機の使用を認めた町長のリコール問題が起き、小松飛行場では住民が自衛隊機とともに米軍機の離着陸差し止め訴訟を行つている。
 政府はこうした自衛隊基地を米軍に使用させる際適用する「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律」(以下、略して「国管法」と呼ぶ。)の第七条「国が、第二条の規定により合衆国に対して政令で定める国有の財産の使用を許そうとするときは、内閣総理大臣は、あらかじめ、関係行政機関の長、関係のある都道府県及び市町村の長並びに学識経験を有する者の意見を聞かなければならない。」という規定を何故か一度も適用していない。そこでこの法律に関して以下質問する。

一 歴代内閣総理大臣は、自衛隊基地を米軍に一時使用を認める際「国管法」第七条にもとづく関係者の意見を何故法律制定後三十年間一度も聞かなかつたのか。

二 沖縄返還協定に伴つて米軍に提供された基地は、一九七二年五月十五日で八十七基地、二億八千六百六十万平方メートルである。これらの沖縄の米軍基地は復帰に伴つて「国管法」が適用されたが、その際内閣総理大臣は同法第七条にもとづく「関係行政機関の長、関係のある都道府県及び市町村の長並びに学識経験を有する者」の意見を聞くべきであつたと思うが何故これを行わなかつたのか。

三 「国管法」第七条にもとづく政令(昭和二十八年政令第二百八十五号)で内閣総理大臣はアメリカ合衆国に国有財産の使用を許す場合、「産業、教育若しくは学術研究又は関係住民の生活に及ぼす影響その他公共の福祉に及ぼす影響が軽微であると認められるもの以外」のものは、関係行政機関の長、関係都道府県及び市町村の長並びに学識経験者の意見を聞くことが義務づけられている。政令にいう「軽微」の基準は何か、その基準細目は定められているのか。

四 神奈川県米軍厚木基地の米軍機騒音は住民に大きな被害を与えている。現在防衛施設庁は厚木基地にかわる米軍機訓練飛行場を検討している。米軍機の騒音問題の抜本的解決は米軍機の飛行中止しかない。
 政府が厚木飛行場にかわる米軍機訓練基地として自衛隊飛行場を検討する場合は、「国管法」第七条にもとづく関係者の意見を聞かなければならないと思うがどうか。

五 政府は、米軍の山王ホテルの代替施設として安立電機株式会社(本社・東京南麻布)に「アンリツ会館」(東京南麻布)を建設させ、防衛施設庁が借り受けて米軍に無償提供しようとしている。これに対して付近住民のみならず近くに存在する多くの学校関係者が反対している。
 政府は「アンリツ会館」を米軍に提供しようとする場合、内閣総理大臣は「国管法」第七条の「関係行政機関の長、関係のある都道府県及び市町村の長並びに学識経験を有する者」の意見を聞かなければならないと思うがどうか。

  右質問する。