質問主意書

第98回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

シーレーン防衛上の問題点に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年五月二日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   シーレーン防衛上の問題点に関する質問主意書

 シーレーン防衛問題は、今後総合安全保障関係閣僚会議等の作業を通じてより総合化されるものと思われるが、これに関連したいくつかの問題点について、政府側の見解を伺つておきたい。

一 シーレーン防衛上の基本的な問題点の一つは、国としての有事の緊急輸入計画、つまり主要資源の最低所要輸入量の策定ではなかろうか。これについては、既に数種の試算が官・民双方から一応出されているが、政府としてのオーソライズされた試算とはなつていない。少なくとも、石油、食料(飼料を含む。)、鉄鉱石、石炭等の主要資源については、今や政府としての最低所要輸入量の基準、目標を設定すべき時期ではないのか。

二 最低所要輸入量が設定されてはじめてそれを輸送するための必要船腹量、配船計画、更には護衛計画、ひいては所要兵力等が計測されるのではないか。その意味では、最低所要輸入量の策定は、一つの基本であり必須のものではないのか。

三 従来の最低所要輸入量に関する試算は、ほとんどが七年前か、四~五年前の実態を踏まえたもので、今日性に乏しい。政府として、新たに計数を積み上げ、分析して、適当な年次、例えば、一九八五年を基準とした所要量を算出することは考えないのか。

四 次に、有事に備えた国としての総合的備蓄計画の整備が重要であろう。本年四月四日参議院において可決、成立した金属鉱業事業団法の一部を改正する法律によつて、タングステン、モリブデン等の希少金属の備蓄については、一定の方向が打ち出されたが、更にこれを拡大して、石油、鉄鉱石、食料、石炭等についても総合的な備蓄計画を持つべきではないのか。

五 その際には、かなり長期にわたつて海上輸送が阻害される事態を予見して、推定備蓄量を算出すべきではなかろうか。また、これも前述の最低所要輸入量と整合させるため、一九八五年を基準としてはいかがか。

六 海上保安庁の「海洋情報システム」が対象とする海域と船舶はどの範囲か。
 また、同システムは、いつから稼動が可能か。

七 海上保安庁の「海洋情報システム」と自衛隊の指揮・管制・通信及び情報システム(C3I)との間の連係、情報移転の円滑化、協力は、シーレーン防衛上、不可欠ではないのか。

八 自衛隊法第八十条第二項に、有事に当たつての自衛隊と海上保安庁の関係は政令によつて行うとあるが、その政令は平時からあらかじめ十分整えておく必要があると考えるか、それとも有事の際の緊急対応の一環として可能と考えるか。

九 いずれにせよシーレーンの防衛をめざす場合、特に海上自衛隊と海上保安庁の協力体制を格段に改善、強化して、その総合力を高めるべきであると考えるが、改府の見解を示されたい。

十 自由民主党の国防部会と安全保障調査会が、シーレーン防衛に関連した有事法制の検討をめざしており、海運、航空、通信、民間船舶の運航統制などの分野にまたがる研究に意欲的と聞く。これについては、本年四月四日参議院予算委員会での私の質疑に対して、中曽根総理は、「法の定むる範囲内において予備的にいろいろ勉強しておくことは結構であると思つている。」と答弁している。シーレーンと有事法制の問題は、海上輸送の危機管理のあり方を全体としてとらえる場合避けては通れぬ分野であろうと思うが、改府のとらえ方はどうか。また、今後どうする考えか。

  右質問する。