質問主意書

第98回国会(常会)

質問主意書


質問第一三号

シーレーン問題の基本的認識に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年四月二十八日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   シーレーン問題の基本的認識に関する質問主意書

 今国会での防衛論議においてシーレーン問題は、さまざまな角度から検討されたところではあるが、ここに改めてシーレーン問題についての政府の基本的認識についてただしておきたい。

一 シーレーンとはそもそも何であるのか。政府の認識と理解を伺いたい。

二 シーレーン防衛とは何か、またその目的とは何か、政府による概念を伺いたい。

三 米国側のシーレーン防衛についての基本的見解は、「日本周辺一千海里のシーレーン防衛は中東・韓国など西側にとつてきわめて重要な戦略地域に紛争が発生した際に、アメリカ本土からの大規模な軍事力投入とその長い補給路確保のために不可欠な要素だ。何も日本自身の防衛のためだけではない。世界的拡がりを持つた重要問題だ。」(米統合参謀本部ビグリー第五部長の発言)によつても明らかだが、これに対して政府は、どのように考えるか。

四 レーガン政権は、対ソ世界戦略を踏まえ同盟国との適切な役割分担を強く求めているが、千海里防衛も日本に対する一つの役割分担要請ではないのか。

五 政府の在来の考え方は、「一千海里防衛はわが国の輸入資源確保のため」であり、米国側のいわば戦略的なとらえ方とは明らかに次元が違つているのではないのか。

六 一千海里以内の防衛は、日本が主体であり、日米共同で対処する局面はあり得ないのではないか。

七 シーレーン防衛が必要となるのは、日本への単独侵攻ではなく、欧州や中東などの有事が波及するケースであるというのが、米国の描くシナリオの一つであるが、これは政府の認識とも共通しているのか。

八 有事におけるシーレーン防衛の第一義的な目的は何か。

九 鈴木前総理のいわゆる「はりねずみ防衛論」は、一種の国土防衛優先論であり、一千海里防衛論とはなじまない発想であろう。中曽根内閣においては、「はりねずみ防衛論」なるものは現在どのように整理され、位置づけられているのか。

十 政府は今後シーレーン防衛を重要な国家戦略、防衛構想の一環として重点をおいてゆくのか。

十一 シーレーン防衛は、それだけでは自己完結しない総合の中の一部門であり、広くわが国の対米・対ソ政策、対ASEAN政策、西側との協力関係、有事に備えた備蓄持久政策など総合政策の中に正しく位置づけるべきであると考えるが、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。