質問主意書

第98回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

軍事技術の対米提供に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年一月十四日

黒柳 明   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   軍事技術の対米提供に関する質問主意書

 政府は、中曽根内閣総理大臣の訪米を前に、鈴木前内閣以来の懸案となつていた軍事技術の対米提供問題について、政府基本見解を発表した。
 この問題は、昭和四十二年四月の武器輸出三原則及び昭和五十一年二月の政府方針に照らし重大な問題であるので、以下数点について質問する。

一 今回の基本見解によると、アメリカが紛争当事国になつた場合にも武器軍事技術の輸出を行うことが可能となる。これは、従来すべての紛争当事国を対象にしてきた武器輸出三原則の「政府は紛争当事国へはわが国からの武器輸出は禁止する」との文言を破るものであるが、その認識はあるのか。

二 鈴木前内閣においては、前項につき、アメリカが紛争当事国になつたら新規提供を拒否して、武器輸出三原則を守る立場であつたはずである。この考え方は、国連憲章の下で、安保条約を履行し武器輸出三原則を遵守して行く場合の矛盾のない選択の一つであつたと思うがどうか。この考え方をどう評価するか。この考え方を否定し変更した理由を明らかにされたい。

三 アメリカに対して、武器軍事技術輸出をしても「紛争の助長」にはならないから紛争当事国でも武器輸出三原則上、支障ないとの考えかどうか明らかにされたい。

四 アメリカに対する武器等の実際の輸出については、アメリカ側の武器の輸出入業者と国内企業との契約は今後、全面的に許可されることになるのか。その場合、世界のいたるところの紛争地域にメイド・イン・ジャパンの兵器が出回ることも理論的には考えられると思うがどうか。そうしないための歯止めは何があるか。

五 アメリカから輸出要請のあるものは、国内の企業の企業秘密に属するものがあり得ると思う。その場合、政府は対米協力のために如何なる対応策をとるのか。

  右質問する。