質問主意書

第97回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

住宅建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十七年十二月十五日

田代 富士男   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   住宅建設に関する質問主意書

 住宅は、単に人間が住まうだけではなく、家族とのコミュニティを形成し、明日への活力と英気を養う場であり、国民生活の安定と向上に欠かすことの出来ない基盤と考える。
 しかるに最近の住宅建設戸数は、大幅に後退しており、その原因は、基本的には人口の都市集中の緩和という都市環境の変化を背景に、主として地価、建築費、所得等の動向から住宅価格と国民の住宅取得能力との乖離が拡大したためと考えられる。
 政府は、かかる深刻な事態を踏まえて速やかに実効ある措置を講ずべきである。
 ここに、次の事項について質問する。

一 政府は、昭和五十六年三月、第四期住宅建設五箇年計画を策定し、昭和五十六年度から五年間で七百七十万戸の住宅を建設することにしている。しかし、現実の建設戸数は、建設計画戸数を大幅に下回つている。
 昭和五十六年度の建設戸数は、百十四万戸と十四年ぶりの低水準になつており、昭和五十七年度も低迷を続けている。このような状況では第四期住宅建設五箇年計画は事実上破綻したも同然である。
 この際、この五箇年計画を見直す考えはないか伺いたい。

二 最近、大都市地域を中心に公共賃貸住宅を指向する都市勤労者が多く見受けられるが、現実には公団、公社等は、公共賃貸住宅より公共分譲住宅の供給に偏向していると考えるが、政府の見解を伺いたい。
 また、学識者、都市勤労者、業界等の中には、集合住宅の建設に際して、公団、公社等は、民間が果たし得ない賃貸住宅需要層を対象に、良質で低家賃の公共賃貸住宅の供給に専念し、分譲住宅についてはいたずらに民間と競合することなく民間に分担させるべきであるとの意見もあるが、政府の見解を伺いたい。

三 都市防災と環境整備、土地の有効利用とスプロール現象抑制の視点から地方公共団体、公団、公社等が都市再開発事業を重点的に推進できるよう国庫補助、公的融資等を優先的に行い、また木賃住宅の不燃建築への建て替えや市街地住宅の中高層化を並行して推進すべきである。
 これらの事業の推進にあたつては、民間のエネルギーを積極的に活用するため効果的な金融税制の助成措置を講ずべきだと考えるが政府の見解と具体的対策を伺いたい。

四 住宅建設のネックとなつている宅地開発が困難な理由として、(1)用地取得が困難、(2)開発用地の価格が高く事業収支の見通しが困難、(3)公共公益施設の整備水準や負担金が高く採算上困難、(4)地方公共団体との事前協議、開発許可期間の長期化等の問題があるが、これらに対して政府の具体的対応策を伺いたい。

五 居住水準の質的向上を図るため老朽化した公共住宅の建て替え、再開発を推進すべきである。
 耐用年数を経過した公営住宅は全国で十七万戸以上にのぼり、また、既設の公営住宅では浴室のないものや2DK中心の狭小なものが多い。さらに公団住宅や公社住宅にも1DKや2DKなど狭小なものが多い。
 これらの耐用年数の経過した公営住宅の建て替えや増改築を推進すべきだと考えるが、見解を伺いたい。

六 大都市地域では、新築住宅取得者のおよそ八割が買い換えによるものである。したがつて、中古住宅が流通しなければ新築住宅の需要も生まれないのが実情であり、中古住宅の流通が活発化すればライフサイクルや世帯家族構成に応じて住み替えも可能になる。しかも、中古住宅は新築住宅より一五%から二〇%安く取得できるので、中古住宅の安全で効果的な流通システムの整備が不可欠であるが、政府の見解と具体的対策を伺いたい。

七 マンション取得後における契約上の問題や欠陥設備の問題等に関するトラブルを解消するための施策を講ずるとともに、老朽化したマンションの建て替え等を促進するために「建物の区分所有等に関する法律」等の改正を急ぐべきであると考えるが、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。