質問主意書

第96回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質九六第一三号

  昭和五十七年五月十一日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員鈴木一弘君提出租税負担の不公平是正についての政府の基本的な考え方に関する質問について、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員鈴木一弘君提出租税負担の不公平是正についての政府の基本的な考え方に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 少額貯蓄等利用者カード制度は、郵便貯金及び少額預金の利子所得等の非課税制度(少額公債の利子の非課税制度を含む。)の公正な運営と利子所得、配当所得等の適正な課税の確保等に資するため導入するものであり、その趣旨は、所得税法第十一条の二第一項に定められているところである。
(2) 少額貯蓄等利用者カード制度をめぐる最近の批判、論評等については、本制度の趣旨等につき十分な理解を得ていないことによるものもあると考えられるので、政府としては、本制度の趣旨及びその細目について国民の理解を得るよう今後ともその周知に努めてまいりたい。
 なお、少額貯蓄等利用者カード制度は、既に法律によつて昭和五十八年一月一日から発足することが定められており、これを実施する準備をしているところである。
(3) 最近一年間の産業用を含めた非貨幣用金(塊、片、粒)の輸入金額は、約五千百億円(昭和五十六年)であり、また、ゼロクーポン債の国内販売量は、約二千六百億円(昭和五十六年度)である。我が国の個人金融資産の大きさ及びその増加額に対する両者の割合は小さく、国内経済に大きな影響があるとは考えていない。
(4) ゼロクーポン債は、外国証券取引口座を通じて取引されており、その償還差益は、所得税法上、雑所得等として総合課税されることになつているが、今後の取引等の状況によつては、償還差益に対する支払調書の提出、中途売却による譲渡益に対する課税等について適切な措置を講ずることも考えている。
(5) 所得税の最高税率の在り方については、従来から課税標準の総合の程度とも関連して考えられてきたところであり、昭和五十五年十一月の税制調査会の「財政体質を改善するために税制上とるべき方策についての答申」においても、利子・配当所得の総合課税への移行等租税特別措置の整理合理化の実現による課税標準の拡大等を踏まえつつ、検討を加えることが必要であるとされているところである。所得税の税率構造については、この答申を踏まえ、今後、個人所得課税の負担水準の在り方等の問題として検討してまいりたい。
(6) 所得税減税の問題については、衆議院大蔵委員会に設置された「減税問題に関する特別小委員会」において、減税の財源対策を含む税制全体の在り方について、中長期的な観点に立つて、検討されることになつており、政府としても、その審議の状況等を踏まえつつ、幅広い観点から検討してまいりたい。
(7) 所得税の各限界税率適用納税者数は把握していないが、所得税の納税者全体に占める三十四パーセント超の所得税率の適用される者の割合を税務統計等から種々の仮定の下に推計すれば、一パーセント強と見込まれる。
(8) 昭和五十五年三月の所得税法の一部改正により少額貯蓄等利用者カード制度が導入され、昭和五十九年以降における利子・配当所得等の総合課税への移行が決定されているところであり、政府は、これを円滑に実施する方針である。

二について

 所得の捕捉格差の問題を含め税の執行に関する問題については、先般、国税庁が実施した税の執行に関する実態調査結果及び既往の税務調査結果等により、その実態についての資料が相当に得られていると考えており、重ねて調査を実施する考えはない。
 なお、所得税の調査について法令上の調査権限を有しない第三者機関による調査に、この種の問題に関する適正な調査結果を期待することは困難であると考える。

三について

 所得税減税の問題については、一についての(6)において述べたところである。