質問主意書

第95回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質九五第一六号

  昭和五十六年十二月十八日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員藤原房雄君提出カモシカ問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤原房雄君提出カモシカ問題に関する質問に対する答弁書

一について

 毎年度、民有林については各都府県が、国有林については国が、それぞれカモシカによる森林被害を調査し、被害面積を把握しているところであり、引き続き適切に調査を実施することといたしたい。
 なお、昭和五十五年度の森林被害面積は、民有林・国有林合わせて二千八百二十一ヘクタールとなつている。
 また、カモシカの生息の実態については、昭和五十二年度及び昭和五十三年度に環境庁が全国的に調査を行うとともに、昭和五十年度から文化庁の国庫補助事業として都府県教育委員会が各被害地域を中心に順次調査を行つているところである。

二について

 カモシカの生息状況、被害の状況、森林施業に関する計画等を勘案しつつカモシカを保護する地域を設定してその安定的維持繁殖を図ることとし、おおむね数年の間に完了することを目途に、現在、関係者の了解を得ながら順次作業を進めているところであり、その後において地域を限つて天然記念物に指定し、保護する方向で対処してまいりたいと考えている。
 なお、政府としては、右のような考え方を基本としカモシカの保護と被害の防止との両立を図ることとしており、御質問の(3)にあるような考え方を採ることは考えていない。

三について

 カモシカの個体数調整の規模・方法等については、カモシカによる造林木の被害の状況、カモシカの生息状況、安定的維持繁殖との関連等を総合的に考慮して行われてきており、今後とも適正を期することとしたい。

四について

(1) カモシカによる被害を防止するため、防護柵の設置、ポリネットの装着、忌避剤の塗布等の被害防止事業に対する助成を行い、これらによつても被害が防止できない場合には、被害の状況等に応じて麻酔銃等の使用による個体数調整を認め、これに対しても助成を行う等可能な限りの配慮をしてきたところであり、今後とも、できる限りの努力を重ねてまいりたい。
(2) 被害の補填については、被害防止策の実施によつて、カモシカによる被害を防止することが第一であることから、そのための措置に努めることとしている。
 なお、カモシカ被害跡地が復旧造林を必要とする状況に至つた場合は、右の被害防止策を講じた上で現行の造林補助制度を適切に運用し対処していくこととしている。
(3) 被害防止対策の充実とあいまつて、現行制度・施策の適切な運用により最善の対応をしてまいりたいと考えている。
(4) 昭和五十五年四月及び昭和五十六年二月に岐阜県下の被害者代表が文化庁に来庁した際に提出された文書については、その取扱いについて検討しているところであるが、当該被害者代表に対しては、カモシカによる食害について、文化財保護法の規定による損失補償は困難であろうとの説明をしている。