質問主意書

第94回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七号

内閣参質九四第一七号

  昭和五十六年五月二十九日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員市川正一君提出振動病対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員市川正一君提出振動病対策に関する質問に対する答弁書

一について

 チェーンソーの導入当初においては、チェーンソーによる振動障害の発生は予見されていなかつた。
 チェーンソーによる作業が振動障害の原因となることの確認がなされてからは、国は、振動の少ない機械及び代替機械の開発導入、振動機械操作時間の規制等の予防対策の実施、特殊健康診断の実施等に努めているところである。

二について

 振動障害に係る業務上外の認定については、し界の専門家からなる専門家会議において検討を願い、その結果に基づいて昭和五十二年五月に業務上外の認定基準を定め、これによつて迅速かつ公正な認定に努めているところであり、労働者災害補償保険収支の悪化を理由に認定基準を改定することはない。
 なお、認定基準は、最新の医学的知見に基づいて策定されるべきものであり、医学の進歩に遅れないよう情報の収集に努め、必要に応じて見直しを行うこととしている。

三について

 林業におけるチェーンソーを取り扱う労働者及び一人親方等を対象とする委託巡回方式による特殊健康診断は、昭和四十八年度以降昭和五十五年度までに延べ約九万六千人について実施されており、その措置等もあつて昭和四十八年度以降昭和五十四年度までに約五千七百人が業務上として認定されている。
 また、振動障害にり患している疑いがあると認められる労働者に対しては、労働者災害補償保険給付の請求書を提出するよう指導しているところである。

四について

(1) 労働者災害補償保険の目的の一は、業務上の事由又は通勤による労働者の疾病等に対しての迅速かつ公正な保護にあることから、業務上外の認定基準及び業務起因性判断のための調査実施要領の作成、関係職員の研修、職業病認定調査官の増員等により、林業労働者の振動障害も含めた業務上の疾病等の迅速かつ公正な認定に鋭意努力しているところである。
(2) 業務上外の認定に当たつては、その適正を期するため、被災労働者の業務従事歴、作業内容、他の疾病の既往歴等の調査を要し、事案によつては、他の類似の疾病との鑑別等を必要とする場合もあるので、請求書の受理から認定までに相当期間を要しているものもある。
 なお、請求事案の迅速な処理については、今後とも努力してまいりたい。

五について

 業務上外の認定に当たつて行政庁は、必要があると認めるときは、労働者災害補償保険法第四十七条の二の規定に基づき、行政庁の指定する医師の鑑別診断を受けることを命ずることができることとされている。この鑑別を必要とする場合としては、被災労働者に類似疾病の既往歴がある場合、チェーンソー等の振動工具を取り扱う業務を離れてから相当期間を経過して保険給付に係る疾病が発症している場合、当該業務に従事してから短期間に当該疾病が発症している場合等が挙げられる。
 なお、鶴岡労働基準監督署長及び相模原労働基準監督署長に対して保険給付の請求があつた事案については、鑑別のための診断が必要であるとの行政庁の判断によつて当該診断を受けるべきことを命じたものであり、「たらい回し」に当たる事実はない。