質問主意書

第94回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇号

昭和五十五年度「農業の動向に関する年次報告」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年六月四日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   昭和五十五年度「農業の動向に関する年次報告」に関する質問主意書

 政府は本年三月、農業基本法第六条第一項の規定に基づき表記の報告(以下「農業白書」という。)を国会に提出した。以下この農業白書で指摘された農業及び農政に関する事項について質問する。

一 既往の農基法農政二十年の評価について

(1) 農業白書は、その三一頁に、「農工間の比較生産性は大幅な是正をみるに至らなかつた」が、「主として農外所得の増大により農工間の生活水準の均衡が達成されることとなつた」としている。これに対し、農業基本法は、農政の目標を、その第一条で農業の生産性の向上と農業従事者と他産業従事者との所得の均衡の二点と規定しており、さらに前文後段の規定で明らかなように、所得の均衡は、生産性の向上を通じて達成すべきものとしている。したがつて、

(イ) 農政の目標は所得の均衡しか達成されず、しかもそれは生産性の向上を通じて達成されたのではなく、主として農外所得に依存して達成したのであるから、日本農業はゆがんだ形で伸びたとみざるをえない。この点についての具体的な政府の見解を明らかにされたい。
(ロ) 日本農業が今日のように問題をかかえていることについては、その理由が問われなければならない。特に過去二十年間の農基法農政が何に寄与し、何に寄与しなかつたかを明らかにすべきである。この点の見解を(イ)にあわせて示されたい。

(2) 農業白書は、農業の労働生産性は農業としては国際的にみて高い水準で伸びたとしている。もつとも昭和五十年代以降の安定成長期に入つてからはそれ以前にくらべその伸びはほぼ半減している。高度成長期の農業の労働生産性の伸びが高かつた理由は、規模拡大、機械化、省力的効率的な作業仕組みの開発普及などの積極的な対応による面も少なくないが、非効率な零細経営の脱落や作業の省略ないし簡略化などの消極的な対応による面も大きいと考えられる。その意味では、わが国農業の労働生産性の伸びは実質的には見掛けほど高くなかつたといえよう。また、施設型農業と土地利用型農業とではこの面の差も大きいであろう。私は今後消極的な対応の余地がせばまり、それだけに積極的な対応を助長する必要性が高まると考えている。そのためには農業経営の規模拡大と効率化及び今後も不足基調が継続しあるいは増大する飼料用、油脂用、加工用農産物等の生産振興に必要な諸措置を効率的、体系的かつ強力に推進すべきである。この点について政府の見解を明らかにされたい。
(3) 農業基本法は、農業白書の論調に比べると、食糧の備蓄の規定がなく、食品産業に関する視点や価格のもつ需給調節機能重視についての規定がきわめて不鮮明であるなど、総じていえば国民経済ないし国民生活全体からみた農政のあり方についての方向付けが不十分である。それ故、国民的合意のもとに正しい農政を強力に推進するため、この際、農業基本法を根本的に再検討すべきであると考えられる。この点について政府の見解を明らかにされたい。

二 農産物価格政策について

 農産物価格政策については、農業基本法は価格の所得機能を重視した規定をしており、昭和五十年の「総合食糧政策の展開」では価格の資源配分機能を重視し、今回の農業白書では価格の需給調節機能を強調している。このように、価格政策が場当たり的では農業者も消費者も戸惑わざるをえない。この際、政府は価格が持つ三つの機能をどのような基準で調整する方針であるのか明らかにされたい。

  右質問する。