質問主意書

第94回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

平城京西市跡の保存に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年三月二日

市川 正一   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   平城京西市跡の保存に関する質問主意書

 奈良県大和郡山市九条町の水田下に埋没している平城京西市跡は、同東市とともに奈良時代の二大国営市場として、いわば経済の中心地だつたところである。この遺跡の保存は、奈良県文化財保存対策連絡会が、本年一月五日の「平城京西市跡の保存を要望する声明書」で、「この遺跡の発掘は古代都城としての平城京の性格を明らかにする上で決定的な重要性をもつている」と述べているように、古代史研究にとつて欠くことのできないものである。
 ところが、西市跡は、このような重要遺跡であるにもかかわらず、これまで史跡指定も受けず、その一部は市街化区域にすらなつてきた。
 そして最近では、同遺跡の西南部に七階建て、約八千七百平方米のマンション建設計画がすすめられようとしている。私自身も現地を調査したが、すでにマンション建設予定地では遺跡の一部が破壊され遺構確認ができなくなるという事態もおこつている。マンション建設が強行されると遺跡の破壊がさらに進行するという憂慮すべき事態にたちいたつている。
 奈良県文化財保存対策連絡会や全国各地の歴史学者、考古学研究者もこうした事態を憂慮して、古代史研究のうえで欠くことのできない西市跡の保存を強く要望している。たとえば、奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部長の岡田英男氏も、「平城宮跡や寺院ばかりでなく、特に奈良の都の重要な拠点であつた地域については特別の配慮と対応が必要である」と述べ、西市跡での開発計画に深い懸念を表明している。
 以上の現況と西市跡の重要性にかんがみ、国として早急に次の措置をとるよう求める。

一 奈良国立文化財研究所による一部調査が終り西市跡の重要性はいよいよ明らかであり、早急に文化財保護法にもとづく史跡に指定すべきではないか。

二 また、必要に応じて国費による買いあげも検討すべきではないか。

三 特に、マンション建設計画など西市跡の開発計画は、ただちに中止措置をとるべきではないか。

四 国として、西市跡保存のためにこれまでどのような対策、手だてを講じてきたのか。

  右質問する。