質問主意書

第94回国会(常会)

質問主意書


質問第九号

酪農経営の安定対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年二月二十八日

藤原 房雄   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   酪農経営の安定対策に関する質問主意書

 現在、わが国酪農は、四年間にわたる加工原料乳保証価格の実質的据置きに加え、乳製品の輸入外圧、生産調整、購入飼料など生産諸資材の価格高騰、乳用雄仔牛など個体販売の不振等にも追撃され、まさに危機に直面している。この危機克服は、すでに酪農家の自助努力をはるかに越えるものとなつている。
 とりわけ北海道に多く見られる大規模酪農のような場合においては、短期間で近代化を成し遂げてきたことから多額の負債をかかえ死活にかかわる窮状にあるが、自給飼料への依存度の高い酪農の健全な発展は、食糧の安全保障確保の見地からも不可欠な課題である。従つて、これまで国の方針に従い生産、近代化への努力を重ねてきた酪農家に対し、長期展望を明示し、抜本的救済措置を講ずることは国の当然の責務であると言わねばならない。
 このような基本的認識に基づき、以下、重点的に政府の見解を問うものである。

一 酪農経営危機に臨む基本的考え方について

1 政府は、窮迫する酪農家の現状をどう認識し、いかなる展望を持つているか。今後、いかなる基本的施策を講ずる用意があるか。
2 現在、政府は、昭和五十六年度産の加工原料乳価格など一連の酪農政策の決定を目前にしているが、昨今の窮迫した酪農経営の実情掌握は極めて不十分である。的確かつ速やかな救済措置を講ずるためにも、政府は、緊急に酪農経営の実情調査を実施すべきであると考えるがどうか。

二 金融対策について

1 北海道の酪農家のように、これまで急速な近代化を図つてきた大規模酪農家においては、一戸当たり三千万円~四千万円程度、ないしは、それ以上の多額な負債をかかえている場合が多い。従つて、これらの酪農家は、負債償還に加え、不足する運転資金を補うため農協のプロパー資金への依存を余儀なくされており、固定化負債は実質的に累増する傾向にある。こうした実情に照らしてみても、政府による負債対策の実施は、酪農経営救済策のキーポイントと言える。このような意味からも、政府は、借替資金の斡旋ならびに既往制度資金の枠の拡大、限度額の引上げ、金利の引下げ、償還期限の延長等について思い切つた措置を早急に講ずる必要があると考えるがどうか。
2 大規模酪農の特殊性を考慮し、他の先進国の例にならい各種制度資金を統合した大型の超長期超低利の酪農金融制度を創設することについて積極的に検討すべきであると考えるがどうか。

三 昭和五十六年度産加工原料乳の保証価格および限度数量について

1 政府が、昭和五十六年度産加工原料乳の保証価格を決定するにあたつては、加工原料乳の生産費と生産農家の所得を補償することを旨とし、生産者団体が納得できる価格で決定すべきであると考えるがどうか。
2 保証価格の算定にあたつては、本年一月以降の購入飼料価格の値上げ相当分を十分反映させるとともに、乳脂率三・二%換算を改め実乳量に即した計算をすることとし、また、自給飼料生産にかかわる家族労賃については他産業従事者なみに評価すべきであるがどう考えるか。
3 限度数量については、乳製品の輸入抑制および消費拡大等を図ることにより、枠の大幅拡大を行うべきものと考えるがどうか。

四 生乳・乳製品の過剰対策について

1 現在の生乳・乳製品の過剰基調は、大量の輸入を前提として創出されたものである。従つて、政府は、乳製品の輸入については、実効ある規制策を講じ、とりわけ偽装乳製品の輸入にみられる脱法的行為については即刻是正すべきであるがどう対処するのか。
 また、「生乳需給計画」の策定にあたつては、年間輸入の見通しについても明示すべきであると考えるがどうか。
2 生乳の需給均衡回復のため、乳製品の過剰在庫解消策をはじめ生乳・乳製品の消費拡大対策については一層強力に推進すべきであるが、政府は、いかなる具体策を講ずる用意があるか。

五 飼料価格安定対策および乳肉一体化政策の推進について

1 配合飼料価格安定基金への助成強化など飼料価格安定のための施策については、一層の拡充強化を図るべきであるがどうか。
2 酪農経営の安定を図るためには、酪農と肉用牛の複合による乳肉一体化政策を強力に推進すべきものと考える。この意味から、政府は、牛肉の価格・輸入対策および仔牛生産振興事業の継続、肥育素牛価格の安定対策等について特段の措置を講ずべきであると考えるがどうか。

  右質問する。