質問主意書

第93回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質九三第一〇号

  昭和五十五年十二月九日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員鈴木一弘君提出食糧備蓄対策の改善等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員鈴木一弘君提出食糧備蓄対策の改善等に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 現在、国は不測の事態においても十分対応できるよう二百万トン程度の米を保有することとしているが、これは、豊作の年には増加し、不作の年には減少するという性格を有するものであり、豊作時、不作時を通じて固定的に二百万トンを保有するというものではない。
 この在庫水準を拡大することについては、品質保持の観点から毎年その全量を回転・更新するという現行の仕組みの下では、不作時でなくても大量の古米を主食用として供給することとなるので、消費者の納得が得られず、また、その結果、工業用等への処理により膨大な財政負担をもたらすおそれがある等の問題がある。このため、米の備蓄方式、その規模等について今後検討を進めていく必要があると考えている。
(2) 最近における飼料穀物、大豆及び小麦の国際価格は、今夏の熱波による米国の飼料穀物及び大豆の減産等を背景として上昇し、高水準で推移している。このような国際価格の上昇に起因する飼料穀物、大豆かす等を原料とする配合飼料の価格の上昇に対しては、畜産経営に与える影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度の適切な運用に努めてまいる所存である。また、輸入に係る小麦については、政府が一元的に取り扱うとともに、小麦の標準売渡価格は、食糧管理法に基づき、家計費の伸びの範囲内で、輸入に係る小麦のみならず国内産小麦のコスト価格、精米の消費者価格等を参酌し、消費者の家計を安定させることを旨として定めることとされており、この趣旨に沿つて適切な運用を行う考えである。

二について

 備蓄は、海外からの食料供給がおびやかされる事態に対処するための有力な手段の一つであると考えており、このため、食料の安全保障の一環として、実際に不測の事態が生じた場合における最低限確保すべき栄養水準、潜在生産力の発揮の在り方、食料供給ルートの在り方等との関連において、備蓄の規模、主体、負担の在り方等を中心に検討を進めていく考えである。その際、民間備蓄についても、その特質を勘案しつつ検討を進める必要があると考えている。また、米の備蓄方式の在り方については、必要な備蓄水準を維持しつつ、良質の米を志向する消費者の要望にもできるだけこたえることができるよう、検討を進めていく必要があると考えている。

三について

 主要輸出国との二国間の中・長期にわたる輸入協定の締結は、穀物の安定的輸入を図る上で有力な手段の一つと考えている。しかしながら、今直ちにこれを結ぶべきかどうかについては、国際的な穀物需給動向、主要輸出国の意向、国際小麦協定のような多国間の協定による需給安定の確保への国際的な動向等を慎重に見極める必要があると考えている。日米農産物定期協議は、二国間協定に代わる効果を持ち得るものであり、当面はこの協議の枠組みを通じて穀物の安定的輸入の確保に努める所存である。
 また、毎年カナダあるいはオーストラリアとの間で、それぞれ輸出を一元的に管理している機関と行つている年間取引目標の合意は、数年にわたる実績を有し、麦類の安定的輸入の確保に寄与していると考えているので、今後ともこれを継続する所存である。

四について

 国際緊急食糧備蓄は、世界食糧計画(国連及び国連食糧農業機関の共同計画として設立されたもの)における食糧援助事業の一環として、各国からの国際緊急食糧備蓄に対する任意拠出に基づき食糧不足に陥つた開発途上国に対する緊急食糧援助事業として実施しているものである。我が国は、世界の食糧需給の安定及び人道上の観点からこの国際緊急食糧備蓄の有用性を認めているところであり、これに対し昭和五十三年度には五十万ドル、昭和五十四年度には八十万ドルの拠出を行うとともに、昭和五十五年度には百万ドルを拠出することとしている。
 今後も、我が国の援助政策の一環として、これに対する協力を検討していく所存である。

五について

 アジア・ポート構想は、ブラジルを始めとする中南米諸国の豊富な鉱産物、農林産物をアジア地域に大量かつ安定的に供給するためのシステムを確立しようとするものであり、昨年八月の第二回日伯閣僚協議会においてブラジル政府から話題に出され、その後検討の要請があつたものである。
 同構想の実現の可能性については、経済的、技術的側面等において検討すべき多くの問題があると思われるのみならず、関係する国及び分野も多岐にわたるので、政府としては、関係各省庁間で協議しつつ、長期的観点から対応振りを検討していく必要があると考えている。
 なお、運輸省においては取りあえず、関連データの収集等の基礎的研究を行うため、省内関係者等から成る「アジア・ポート構想研究会」を発足させたところである。