質問主意書

第93回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

税制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年十一月二十六日

鈴木 一弘   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   税制に関する質問主意書

 財政再建に対する政府の姿勢は、行政改革・補助金の整理合理化による歳出の削減という国民が望む方法は今もつて具体的に示されてない。それに対して、大衆課税の強化による増税という安易な財政再建に対しては、極めて意欲的に取り組んでいると言わざるを得ない。それは、十一月七日に示された政府税制調査会の中期答申でも明らかである。
 国民の生活が一段と厳しくなつている中で、更に負担増加を強いる政府の税制改正の姿勢は疑問がある。
 よつて、以下の諸点について質問する。

一 所得税について

(1) この三年間、所得税減税が連続して見送られているが、三年間の所得の伸び率より所得税納税金額の伸び率がはるかに高く実質増税が続いている。昭和五十三年度以降の三年間において、所得階層別の一世帯(標準家庭)の所得税の実質増税額はいくらになるか示されたい。
(2) 今度の税制調査会答申で述べているように、昭和五十八年度まで所得税減税を見送つた場合、給与所得者等の可処分所得の減少及び実質賃金所得の低下は避けられないと思うが、その推移について具体的試算を示されたい。
(3) 最近、個人消費の落ち込みが顕著であり、景気の先行き見通しは決して明るくない。更に、ここ連続して国民の賃金所得は、対前年同月比で実質マイナスが続いている。
 諸般の事情からみて、所得税減税を行うべきと思うがどうか。
(4) パートタイムとか内職に就業する家庭の主婦が増加している。このパートタイムによる所得に対して現行法上では、給与所得控除の五十万円、配偶者控除の二十万円の合計七十万円を上回る所得の場合には配偶者控除が適用されず、また所得が七十九万円以上になると本人にも課税される仕組みとなつている。
 この制度は、昭和四十九年以来据え置れたままである。六年前と現在では、パートタイムの名目賃金の上昇にしたがつて、課税額も増加しているし、またパートタイムを必要とする経済環境の変化から考えて当然改善されるべきと思うがどうか。
 また、内職の所得に対する課税面も同様に改善すべきではないか。
(5) 所得の捕捉上生ずる税負担の不公平を是正する必要があると思うが、政府は、具体的にいかなる方策を考えているか。
 また、今回の中期答申において、大型消費税の導入について、「全体として実質的公平を確保できる税制を維持していく観点から」もこの大型消費税が必要であるという文言があるが、これは具体的にいかなることを示すのか、その意味を示されたい。

二 法人税について

(1) 政府は法人税について、わが国の場合は諸外国との比較で法人の税負担の増加は可能とし、二%の税率のアップを言つているが、それによる法人税増収額及び二%アップの根拠を示されたい。
(2) 企業倒産件数は、危機ラインをはるかに超し、また、これから先の景気の落ち込みが心配されている中で、二%の税率アップの景気に対する影響及び物価への波及をいかに考えているか示されたい。
(3) 中小企業に対して現在、軽減税率制度が適用されているが、先の中期答申では、この制度発足当初に比較し基本税率との差が五%から十二%に拡大しているとし、今後、基本税率との差を縮小する方向を言つているが、具体的にどう考えているか、特に来年度税制改正ではこの制度の改正も行うのか示されたい。
(4) 交際費の損金算入の縮減が検討されているが、その具体的内容を示されたい。

三 相続税について

 中期答申において、事業用財産の取り扱いについては現行制度でよしという方向を示しているが、中小企業者の事業用財産と農業の農地等の相続の際の税制上の不公平は事実として存在する。
 何らかの対策は必要と思うがどうか。

四 間接税について

 政府は、新たな税の増収は広く消費に着目する間接税の創設を強調しているが、先に国民より否定された一般消費税と同様のものか、あるいは別のものか、違うとすればいかなる点が異なるのか具体的に示されたい。

  右質問する。