質問主意書

第93回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

下水道の整備等国土保全及び環境保全に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年十一月十九日

小平 芳平   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   下水道の整備等国土保全及び環境保全に関する質問主意書

 今日、下水道は、生活環境の整備と環境保全への国民的要求の高まりの中で、国家的事業として大規模に遂行されている。今後、昭和五十六年から六十年の五年間にわたつて行われる第五次下水道整備計画の実施は総額約十七兆四〇〇〇億円という巨額の経費を必要とされている。
 したがつて、国民の多額の税金を費して遂行される下水道事業が無駄なく効率よく、将来に対しても問題や禍恨を残さないように適正に行われなければならないことはいうまでもない。将来に対して問題や禍恨を残さないということは、現在の下水道整備の方向や方法が将来にどのような問題を惹起させるか、また、その問題の解決は容易か否か、そのコストベネフィットは、等々について、はつきりした見通しと洞察を持つていなければならない。
 今日の下水道整備の現状と方向は、こうした将来展望に立つた場合、多くの危惧と問題を生じさせかねないものを含んでいると感ずるものである。以下、下水道問題に関連する問題について質問する。

一 今日の下水道の多くは工場排水を受け入れているが、工場排水の受け入れは、除害施設を設置させることで、その弊害が取り除かれる訳ではなく、活性汚泥法の処理能力、機能の低下または破壊、処理し切れない重金属や有機化学物質等の公共用水域への放流、あるいは下水汚泥に重金属等の含有することによる下水汚泥の大地還元(リサイクル)の困難化または不可能化等の問題をもたらすことが容易に推測される訳であるが、

(1) 下水道に工場排水を受け入れる理由と根拠は何か。
(2) 工場排水の受け入れによる処理能力、機能の低下または破壊が指摘されているが、現状においてどの程度か、また、それをどのように克服しているか。
(3) 現在、下水汚泥に含まれる重金属や有害化学物質の量と濃度はどの程度か、工場排水を受け入れている下水道とそうでない下水道とに別けて最高、平均、最少値を対照して示せ。
(4) 重金属等の含まれる下水汚泥の大地還元(特に農地)は危険を伴うものと考えるが、農地還元を含めそうした方向を今後も推進する考えか、もし推進するとすれば重金属等の問題にどう対応する考えか。
(5) 下水汚泥の発生の現状と将来予測を示せ。
(6) 工場排水は、従来のように水質汚濁防止法に基づいて公共用水域に流すことが、公害監視、自己処理責任に基づく処理及び排水の循環再生利用等の点から有利かつ正しいと考えるがどうか。

二 河川の水系毎に数カ市町村合同で建設される流域下水道は、わが国の下水道整備の大きな流れとなつているが、その規模の巨大化はそのスケールメリットはともかくとして、多くの問題を顕在化しつつあるのではないかについて、

(1) 流域下水道を推進する理由は何か。
(2) 流域下水道を供用することによつて、その流域の水質がどのように改善されたか、実例を五カ所を挙げて説明せよ。
(3) 流域下水道のほとんどは各市町村の下水や雨水を下流の終末処理場に集めて処理し、河口下流または海に処理水を放流するものであるが、そのために河川の流量を著しく減少させること(例えば相模川や多摩川等が将来は河川に水がなくなる可能性がある)、中流域等における水の多段階循環利用を不可能にすること、あるいは土壤から水を切断することによる地下水の枯渇を促進すること等の環境保全や水資源の保全、利用上、大きな障害を惹起させることにならないか。
(4) 河川の流量の減少は環境保全上、自浄能力の減少や生態系の破壊または水辺景観の損傷等をもたらすことになると考えるが、そうした事態が現在、生じていないか、生じているとすればどこか。
(5) 現在の流域下水道より規模の小さい下水道として第二種流域下水道が今後、取り入れていくことが予定されていると聞くが、どのような内容のものか。
(6) 現在、「毛管浄化研究会」の新見正氏等によつて提唱、実施されている、土壤の微生物の浄化力を活用した汚水処理技術としての「土壤浄化方式」が、(イ)リン、チッソ、BOD等の除去能力(ロ)汚泥の少ないこと(ハ)管理の簡単なこと(ニ)悪臭防止に効果のあること(ホ)病原菌の除去に有効なこと等の諸点において、今後、大いに有望視される汚水処理技術と考えられるが、政府の認識と考えはどうか。
(7) (6)の「土壤浄化方式」が、先に改正された「し尿浄化槽構造基準」において、検討されながら採用に至らなかつたと聞いているが、その理由を説明せよ。

三 都市域等における道路、建造物等の建設による緑地や空地等の減少は、水の土への浸透空間の減少となつて現われ、そのことによつて都市河川における氾濫の増加、下水道における雨水の集中と氾濫または処理不能あるいは水の不浸透による地下水涵養の減退と枯渇等環境保全及び国土保全上の様々な問題を惹起させていることが指摘されていることについて、

(1) 東京都、大阪市及び仙台市における、水の浸透する空間(緑地、空地、道路等)面積と水の不浸透空間の面積の推移を示せ(昭和四十五年から五十五年)。
(2) 道路等の舗装においては浸透性舗装も一部において試みられているが、今後、こうした舗装を拡大していく考えか、また、道路等の建設において全面不浸透舗装ではなく一部に土を残すか浸透性舗装との併用を行うべきではないか。
(3) 現在、工場立地法第四条に基づく「工場立地に関する準則」により一部の特定工場について工場敷地面積に対する緑地、環境施設及び生産施設の割合が義務付けに近い形で担保されているが、対象は九千m2以上という制限がある。この特定工場の対象を拡大する考えはないか。また、特定工場以外の工場についても準則に準じて緑地等の割合を定めるべきではないか。
(4) 都市施設、生産施設及び生活環境施設等の舗設は国土保全、環境保全及び水資源の保全等あらゆる面の調和を考慮して行われるべきである。都市計画や再開発あるいはマクロ的な国土建設にあたつて、こうした総合的調和をいかにして図つていく考えか、具体的に説明せよ。

  右質問する。