質問主意書

第92回国会(特別会)

質問主意書


質問第七号

成田空港と羽田空港を両者とも国際空港とする供用方式に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年七月二十五日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   成田空港と羽田空港を両者とも国際空港とする供用方式に関する質問主意書

 去る三月十七日の参議院予算委員会の総括質疑の中で、成田空港と羽田空港を両者とも国際空港とする供用方式に関し、運輸省側の御答弁を賜つたのであるが、その根拠とするところが不明確であつたと思料されるがゆえ、若干の質問を追加し、以下、塩川正十郎新運輸大臣の御答弁を改めて賜りたい。

一 羽田空港が法令上現在も国際空港であり、したがつて、国際空港として実態的に機能させるべき責務が運輸大臣以下に存在することについて、

(1) 羽田空港と成田空港とは、空港整備法(以下「空整法」という。)上どちらも同じ第一種空港ではないのかと質問したところ、松本操運輸省航空局長が、

(イ) 羽田空港を東京国際空港とは呼ばず、あえて「国際」をはずし、東京空港であると呼称した理由は何か。
(ロ) しかも空整法上政令で定められるべき第一種空港の限定要件としての「国際航空路線に必要な飛行場」に言及しなかつた理由は何か。

(2) また松本航空局長は、羽田空港を「空整法の定めるところに従つた一種空港として扱つていく」と答弁されているが、この「空整法の定めるところに従つた一種空港として扱つていく」とは、次の(イ)・(ロ)のうちいずれだつたのか。理由を付して示されたい。

(イ) 国際航空路線に必要な飛行場として、絶えず必要な整備をし、需要に応えていく。
(ロ) 右(1)における松本航空局長の対応から連想される如く、また地崎宇三郎運輸大臣(当時)の答弁の如く、全国的な基幹空港として地方ローカル航路の乗り入れを受け入れる国内線専門の空港として整備・供用していく。

(3) 右(2)において、(イ)が選択されるのであれば、羽田空港の供用方式に関し松本航空局長と地崎運輸大臣との間に意見の対立があつたことになる。対立の具体的な内容と原因を示されたい。
(4) 右(2)において、(ロ)が選択されるのであれば、松本局長は地崎運輸大臣ともども空整法、同法施行令、したがつて閣議決定に違反して羽田空港を供用させていることになるが、松本局長や地崎運輸大臣が法令や閣議決定に違反せざるを得なくなつた事情は何か。
(5) 地崎運輸大臣は「羽田空港は成田開港以降国内線専門であつて、全国的な基幹空港として地方ローカル航路の乗り入れの希望が非常に多い」ことを挙げ、「羽田空港に国際航空を入れることは現実的ではない」と答弁されていたが、

(イ) これでは、羽田空港を事実上第二種空港として実態的に機能させていくことにならないのか。なぜか。
(ロ) 第二種空港の第一種空港に対する空港機能上の違いは何か。
(ハ) 羽田空港が第一種空港であるにもかかわらず、地方ローカル航路の乗り入れによつて、国際航空が排除されねばならない理由は何か。
(ニ) 第一種空港が公共用地の取得に関する特別措置法の適用対象とされたのは、国際空港であるからと立法時に行政権により説明されていたところからして、第一種空港たる羽田空港では国内航空によつて国際航空が排除されるべきではないのではないか。
(ホ) 「地方ローカル航路の乗り入れの希望が非常に多い」としても、松本航空局長の答弁のごとく、「現在の羽田は何せ過去のピークに比べますと非常に便数も減つて」いるのであるから、「国際航空を入れることは現実的でない」というのこそ、現実的でないのではないのか。

(6) 地崎運輸大臣は「何らかの手当てをしなければ、現在の羽田空港の機能が発揮できない」ことを挙げ、「羽田空港に国際航空を入れることは現実的ではない」ことの理由とされていたが、

(イ) であればこそ、現在の羽田空港の機能が発揮できるよう、何らかの手当てをし、第一種空港としての機能を回復させ、国際航空を乗り入れさせることが、運輸大臣以下の法令上の責務ではなかつたのか。
(ロ) 松本航空局長は羽田空港について「空整法の定めるところに従つた一種空港の扱いをしていく」と答弁されたが、成田開港以後、羽田空港は国際航空路線に必要な飛行場として、どのように整備・供用されてきたのか、具体的に示されたい。

二 羽田空港が国内線専用空港でないのと同様、成田空港も法令上国際線専用空港ではないことについて、

(1) 新東京国際空港が新東京国際空港公団法第二条第一号の要件として長期にわたつて対応することができねばならない航空輸送需要とは、国際航空路線に係わるものに限られるのか。とすれば、なぜ国際航空輸送需要と表現されていないのか。
(2) 新東京国際空港がみたすべき空港公団法第二条第二号要件は、国際航空路線の世界的なネットワークで主要な位置を将来において占める、したがつて、国際航空路線に将来において登場する新機種が受け入れられる質をもつというにとどまり、国内航空路線の用に供することを排除していないのではないのか。
(3) 松本航空局長は「将来における主要な国際航空路線の用に供する」を「現時点において、主として国際線の用に供する」と読み替えて答弁されているが、なぜこのような読み替えを必要としたのか。
(4) 空港公団が空港公団法第一条によりその目的の一つとして総合的な発達に資すべき航空には、当然に国内航空も含んでいるのではないのか。なぜか。
(5) 空港公団が空港公団法第一条により円滑化を図るべき航空輸送には、当然に国内航空輸送を含んでいるのではないのか。なぜか。

三 成田空港の許容発着回数の限界と国際航空需要に対する東京地区における供給力の確保について、

(1) 松本航空局長は、成田空港の許容発着回数の限界を規定するものとして「油だけとは申しませんけれども、油が非常に大きな理由の一つとなつていることは事実でございます」と答弁されている。それでは、航空燃料の安定供給の限界以外に、許容発着回数の限界を規定するものを全て挙げ、限界規定への寄与の度合を示されたい。
(2) 塩川新運輸大臣や松本航空局長は、成田空港の航空燃料供給に係る問題の深刻さについて、それぞれどのような認識をもつているのか、具体的に示されたい。
(3) 羽田空港及び成田空港における定期便及びチャーター便を含む不定期便の発着回数(単位回)を、昭和五十三年六月以降同五十五年五月に至る迄の月毎に、国際線・国内線の別に示されたい。
(4) 羽田空港及び成田空港における右(3)に係る航空燃料の供給量(単位KL)を、昭和五十三年六月以降同五十五年五月に至る迄の月毎に、国際線・国内線の別に示されたい。航空燃料税の違いから、国際線・国内線の別は、国税庁の協力を得て容易に判明するはず。
(5) 昭和五十三年六月から同五十五年五月の二カ年間を通じて、成田空港における国際線一発着回数当りの平均の航空燃料供給量は、羽田空港における国内線のそれの何倍か。
(6) 航空燃料供給限界下にある成田空港から国際線の発着ワク(スロット)を一つ、航空燃料供給限界下にない羽田空港へうつすことにより、右(5)で与えられる倍数の国内線のスロットが成田空港で、したがつて、東京地区で創出されることになると、航空行政上とりあえずはみなしてはならない理由があるか。どんな理由か。
(7) 成田空港が航空燃料供給限界下にある以上、少なくともそれが存続する間は、国際航空需要に対応すべき東京地区における供給力の確保・拡大は、羽田空港においても国際線スロットを確保することにより、国内航空需要に対応しつつ可能となるのではないのか。少なくとも、技術的には可能となるのではないのか。なぜか。
(8) 成田空港の開港は、東京地区における国際航空需要に対し、どのように供給力を増大したのか。開港前と開港後における実態の差に基づいて、具体的に示されたい。
(9) 昭和五十二年の羽田空港における国際線(定期便及びチャーター便を含む予定期便)の年間の発着回数及び昭和五十三年六月から一年間の成田空港におけるそれをそれぞれ示されたい。一日当たり平均に換算すると後者は、前者に比べ何回又は何往復多いか。
(10) 現在、東京地区への新規乗り入れまたは増便要請し、いまだに応じていない国または航空会社名を示されたい。

四 首都圏に二つの国際空港があるという踏まえ方をして、国際線の一部を羽田空港に、国内線(の競争力のある路線)の一部を成田空港にという二つの第一種空港をかかえる東京地区での国際空港の供用方式について、来年四月一日(昭和五十六年度)以降、少なくとも、成田空港の航空燃料の供給問題が安定して解決するまでの当分の間の両空港の供用方式について、

(1) 右供用方式の実現を阻害する法律上、政令上または閣議決定上の根拠があれば、根拠となるものをそれぞれ示されたい。
(2) 成田空港から国際線を一部、羽田空港にうつすことにより、その数倍の国内線スロットが成田空港で創出されるのであるから、地崎運輸大臣が答弁した「全国的な基幹空港として地方ローカル航路の乗り入れの非常に多い希望」に対し、かくして創出された国内線スロットで少なくとも当分の間は対応しきれるのではないのか。量的には対応しきれるのではないのか。
(3) さらにまた、松本航空局長の答弁にある如く「現在の羽田は何せ過去のピークに比べると非常に便数も減つて」いる以上、右(2)の国際線を受け入れた上、三の(10)で受け入れられなかつたという国際線を少なくとも当分の間、来年三月までに「何らかの手当てをした」、たとえば、CIQを常設化した羽田空港で受け入れることが可能となるのではないのか。量的には可能となるのではないのか。
(4) 成田空港を利用する国内線の東京方面の旅客は、「空電車」を走らせているという京成電鉄を専ら都心とのアクセスに利用することになろうから、少しは京成電鉄の労使関係の安定に寄与することになると思うがどうか、理由を付して説明されたい。
(5) 国内線の利便を成田周辺で増加することになるのであるから、千葉県も茨城県も了解すると思うがどうか、理由を付して説明されたい。
(6) そもそも成田空港は羽田空港の騒音対策として設置されたのではないと思うがどうか。
(7) 夜十時以降、内陸空港である成田空港での航空機の発着が非常に混雑し、窮屈であるのに対し、半海上空港である羽田空港のそれが、ガラガラに空いているのは、成田空港が事実上羽田空港の騒音対策空港化していることを示していると思うがどうか、理由を付して説明されたい。
(8) 東京都は、羽田空港を第二種空港に格下げして、非国際空港化するのに反対ではないのか。
(9) 日航、全日空及び東亜国内の航空三社は、東京地区におけるスロットが増加するのであるから、右供用方針に反対するとは思えないがどうか、理由を付して説明されたい。
(10) 運輸省を除く行政各府省庁は、右供用方針に反対するとは思えないがどうか、理由を付して説明されたい。
(11) 国民が航空サービス(公共サービス)を受けるということは、憲法上や実定法上の権利ではなくして、反射的利益にすぎないのではないのか。
(12) 羽田空港と成田空港とを法令どおりに供用せんとする右供用方式の実現につき、運輸省はただちに大蔵省や内閣官房と協議に入る考えはないか。
(13) 航空行政も法令に従つて行われるべきではないのか。

  右質問する。