質問主意書

第92回国会(特別会)

質問主意書


質問第一号

砂利石材船の一元化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年七月十九日

田代 富士男   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   砂利石材船の一元化に関する質問主意書

 自家用砂利石材船の営業への転用によつて砂利船業界の輸送秩序の維持正常化を図る一元化問題については、運輸省の指導のもとに、四年有余にわたつて、日本内航海運組合総連合会(以下「総連合会」という。)と全国砂利石材自家用船組合連合会(以下「全自連」という。)との間で話し合いが進められてきたが、今日なお問題の結着をみるに至つていない。
 本問題を未解決のまま放置し、運輸省通達によつて自家用船に対し営業類似行為として規制等が強化されるならば、円滑な砂利等の輸送の確保が阻害されるばかりでなく全国各地の公共事業の施工にも支障が生ずることになりかねない。
 運輸省は、本問題の早期円満解決のため公平な立場にたつて適切な指導を行い、一日も早く一元化の実現を図り、砂利船業界の輸送秩序の正常化と健全化を図るべきと考えるが、本問題に対するこれまでの経緯並びに今後の処理方針に関して、次の諸点について質問する。

一 自家用船の定義の具体的な解釈にあたり、運輸省の見解が一貫せず、今日の混乱の原因となつているといわれているが、海運局内航課長通達等により示されている自家用船と営業船との業法上の区分について運輸省としての明確な解釈を示されたい。

二 運輸省は、内航海運業法第二十五条の二の自家用船の届出の規定の運用にあたり、昭和四十八年の内航課長通達で、砂利等を購入し、販売のために当該砂利等を運送する行為は自家用運送と判断されるとしながら、営業砂利船との間に問題が発生した段階で、昭和五十年に再度内航課長通達を出して、同じ行為を自家用運送とはいえないとし、営業類似行為であるとの判断を示しているが、このように行政当局が一片の通達で一方的に法の解釈を変更することは不当ではないか。
 さらに昭和五十年の内航課長通達では自家用船の届出処理にあたつて総連合会の意見を徴することを義務付けているが如何なる根拠によるか。

三 このような販売の目的をもつて買砂等を運送する行為を営業類似行為であると断定する根拠は何か。
 業界の業務形態や実情を無視した机上の解釈を強制するよりも業務実態に即した弾力的な解釈をとることが砂利運搬船業界の秩序の正常化につながると考えるが運輸省の見解はどうか。

四 営業船について総連合会が実施している船腹調整事業については、その前提となる適正船腹量の算定と告示が、砂利運搬船業界の実態を十分把握しないまま、他船種と同じ区分の中で行われていることについて、昭和五十二年に行政管理庁が船種区分の見直しと細分化を勧告しているが、新たな区分を設定し、砂利等の専用船部門を設けてその適正船腹量の算定と告示を行うべきではないか。
 現在砂利運搬船が不足し、一般貨物船にガットを設けて砂利等を運搬している実情であり、各地の公共事業の施工状況等を勘案すれば将来にわたつて需給の逼迫が予想されるが、適正船腹量の算定に砂利等の専用部門の需給見通しを的確に反映させる方策を早急に講ずべきではないか。

五 総連合会は、以上のような砂利運搬船業界の実態にそぐわない不正確な適正船腹量の告示をよりどころに営業船の過剰船腹解消策をすすめており、自家用船の営業への転用にあたつて、自家用船側にその総保有船腹量の三十分の八の解撤を要求している。
 営業への転用を余儀なくされていた全自連も一旦はこれに合意せざるを得なかつたといわれているが、現時点でもなお自家用船の営業への転用の前提として三十分の八の解撤を総連合会が全自連に要求する科学的な根拠は何か。今日砂利運搬業界の需給状況からみて、この総連合会の解撤要求は妥当性を欠くと思われるが、運輸省の見解はどうか。

六 自家用船の営業への転用により、砂利運搬船業界の輸送秩序の正常化を図ろうとする一元化問題は、一杯船主といわれる零細業者を含めより多くの業者を対象としたものでなければその効果をあげることができない。
 しかし、全自連結成後に加入したこれ等の零細な一杯船主に対して保有般腹の一定量の解撤を求めることは、即営業そのものの存続を不可能とするものであり、組合員に廃業を強制するような解撤要求には応じかねるという全自連の主張には一理があるが、一元化問題の解決にあたつて運輸省は、これら零細な一杯船主の事情についてどのような配慮をしようとしているのか。

七 総連合会は、自家用船の営業への転用にあたり解撤不足量について解撤保証金として解撤不足量一重量トンにつき金五万円を預託させているが五万円とした根拠は何か。
 総連合会の融通事業における老朽船等の買上げ単価は、鋼装貨物船で一重量トンあたり四万円であると聞いているが、これとの関連について運輸省の見解はどうか。

八 自家用船の営業転用後の代替建造引当権について既存の営業砂利船と格差を設けることは公平の原則に反する。
 運輸省は、転用船一重量トンに付き代替建造引当権一重量トンを認めるよう総連合会を指導すべきではないか。

九 運輸省は昭和五十四年に総連合会と全自連との間で結ばれた基本協定が全自連側の事情で実現困難となつた今日、基本協定は白紙還元されたとの見解にたち、従来認めてきた自家用船の臨時内航使用扱いを打ち切る意向と伝えられているが、現在なお両当事者間で問題解決のための話し合いが進められているので、話し合いがまとまるまでの間、現在の臨時内航使用扱いを継続すべきではないか。
 なお、現在内航海運業法第二条の三による最高限度量が設定されていないので、当然自家用船の使用制限はないものと理解してよいか。

  右質問する。