質問主意書

第91回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質九一第一一号

  昭和五十五年五月九日

内閣総理大臣臨時代理             
国務大臣 倉石 忠雄   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員秦豊君提出国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の運用の実態に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦 豊君提出国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の運用の実態に関する再質問に対する答弁書

一について

(1)(イ) 一般の場合に該当する。
   (ロ)から(ニ)まで 裁判所及び法務省関係の定期異動は、年度末、年度当初等に行われており、それ以前の適当な時期に最高裁判所に訟務担当の検事の推薦を依頼している。
 訟務担当の検事を裁判官から採用しても最高裁判所の人事計画に影響を及ぼすことはないと考えている。
   (ホ) 民事及び行政の争訟に関する事務を適正に処理し得る知識と能力を有することである。
   (ヘ) 任期はないが、訟務を担当する期間はおおむね三年である。
   (ト) 裁判官の身分は保障されており、訟務担当の検事に転官することを承諾しないことによつて何ら不利益を被ることはないと考えている。

(2) 弁護士の中にも訟務担当の検事として適任者がいないとは考えていないが、弁護士が一時期その業務を離れて検事となることに伴う経済的不利益等により、実際問題として、日本弁護士連合会から適任者の推薦を受けることは困難であると考えられ、同連合会にその推薦を依頼することは相当でないと考えている。
(3)(イ) 法曹一元の制度が実現されるためには、裁判官の給源となるべき多数の優れた法曹の確保を必要とするが、法曹となるための国家試験である司法試験は、資格試験であつて、その合格者数がそれほど多くない現状にある。
   (ロ) 裁判官二千七百四十七名(昭和五十五年度定員)、検察官二千九十二名(昭和五十五年度定員)、弁護士一万一千四百三十八名(昭和五十五年四月一日現在における日本弁護士連合会弁護士名簿登録者数)である。
 飛躍的増加が達成された後の法曹人口を実数で示すことは困難である。
   (ハ) 国によつて制度が異なるので、一概に比較はできないが、我が国においては、司法書士等は、公証人を除いて、いずれも法曹資格を有しないのが通常であり、裁判官の給源となり得ないので、これらを法曹人口に含ませることは相当でないと考えている。
   (ニ)及び(ホ) 弁護士の地域的分布の平均化がなされていないと、全国に一定水準の裁判官を弁護士から採用して配置することが困難となるからである。
 弁護士の地域的分布の平均化が阻害されているのは、経済事情等に地域的な格差が存するためであり、一般的に事件数の多い地域ほど弁護士数も多い傾向にあると思われる。
   (ヘ) 優れた弁護士が、裁判官となることによつて、収入面等で不利になることがないようにするためである。
 裁判官の待遇を改善するには、国の財政事情及び他の公務員の給与体系との均衡等を考えなければならない。
   (ト) 具体的、定量的に示すことは困難である。
 最高裁判所長官の待遇は、現時点においては妥当なものと考える。
   (チ) 法曹一元の制度は望ましい制度の一つとして考えられてはいるが、政府としていまだその採用を決定しているわけではない。

(4) 裁判官、検察官、弁護士は、司法修習生の時期においてのみならず、その後においても、相互に他の職務を経験することが法曹として望ましいと考える。
(5) 一についての(1)(イ)において答弁したとおりであり、他に理由はない。

二について

(1) 別表のとおりである。
(2) 小川英明参事官の日常業務は、右各事件に関する事務を処理することである。

三について

(1)(イ)及び(ロ) 指定代理人に要求されるのは、適正な事務処理を行うことに尽きると考えている。
 法務大臣としては、適正な事務処理を確保するという観点から人事管理を行つている。
   (ハ)及び(ニ) 御指摘のとおりと考える。

(2)(イ)から(ハ)まで 御指摘の文書は、新東京国際空港公団が新東京国際空港に係る「用地買収の経過と収用手続に関する業務資料」として内部的な事務処理の必要上作成したものであり、御指摘の事件における被告建設大臣の処分の適法性を立証する書証として提出したものである。
   (ニ)及び(ホ) 小川英明参事官は、御指摘の文書が新東京国際空港用地の買収及び収用手続の経過の概要を立証する書証として適当であると考えていたものと承知している。

(3) 小川英明参事官は、城野好樹証人による立証を必要と認めた段階で証拠申請を行つたものであり、右申請について裁判官から依頼があつた事実はないと承知している。
 同参事官は、行政処分の適法性の立証責任について十分に承知していたものと考えている。

四について

(1)から(4)まで 民事、行政事件を担当する裁判官につき、民事訴訟法所定の事由があるときには、除斥、忌避及び回避の制度が設けられている。
 藤田耕三裁判官と小川英明参事官との間には、右の民事訴訟法所定の事由に該当するような関係は何ら存在しないと承知している。
(5) 御指摘のとおりである。
(6)及び(7) 具体的年月日は明らかにできない。
(8) 承知していない。

五について

 御質問の事件は東京地方裁判所昭和四二年(行ウ)第六一号のことと思われるが、同事件の原告代理人は小長井良浩、葉山岳夫、小林 優、藤田一伯、木内俊夫、大森 明、金子光邦、川村 明、後藤孝典、糠谷秀剛、山根伸右であり、被告代理人は脇 征男、水田嘉憲、三澤 明である。
 また、同事件の口頭弁論期日は昭和四十二年九月二十七日付けをもつて追つて指定となつている。

別表 小川英明参事官が法務大臣の指定代理人として関与している事件 1/3

別表 小川英明参事官が法務大臣の指定代理人として関与している事件 2/3

別表 小川英明参事官が法務大臣の指定代理人として関与している事件 3/3