質問主意書

第91回国会(常会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質九一第八号

  昭和五十五年四月八日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員二宮文造君提出野菜の供給安定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員二宮文造君提出野菜の供給安定に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 被災後、政府においては、野菜価格安定対策として次の措置を講じてきたところである。

ア 台風直後には、主産県に対し、被災野菜の適正な肥培管理、再播種、再定植、ほうれんそう等代替野菜の追播等についての指導要請を行つた。
イ 昭和五十四年十一月には、京浜地域及び京阪神地域への並級野菜の出荷奨励措置並びに徳島県のだいこんの大被害に対処するための京阪神地域へのだいこんの出荷奨励措置を決定するとともに、同年十二月にはこのための事業を開始し、その後並級野菜については、対象地域及び対象品目を追加しつつ、昭和五十五年三月まで実施し、だいこんについては、同年一月まで実施した。
ウ 昭和五十五年一月下旬には、京浜地域及び京阪神地域において、野菜供給安定基金が契約栽培の対象としているキャベツのうち、収穫可能なもの約八百トンの安値販売を行つた。

 しかしながら、冬野菜は作型による制約が大きいため、再播種、再定植されたキャベツ、レタス等の出荷は三月以降とならざるを得ず、春野菜の出回りを待たなければ野菜の本格的な供給増加が期待できない状況にあつた。
 幸い、春野菜は作付面積が十分確保されており、生育もおおむね順調であるとの見通しが得られたので、その時点をとらえ、これら春野菜の早期出荷を基軸とし、野菜供給安定基金の契約キャベツの集中的放出、輸入の指導、小売価格の適正化等を内容とする野菜価格安定緊急対策を決定したところである。
(2) 野菜の出荷については、共同出荷、個人出荷及び商人出荷の三つの経路が併存しており、いずれの経路によるかは基本的には生産者の判断に委ねられている。しかし、野菜の計画的安定的供給を図るため、従来から生産出荷団体の共同出荷体制の整備に努めてきており、近年逐次共同出荷の比率が高まりつつある。政府としては、今後とも野菜集団産地育成事業の計画的推進及び価格安定制度の対象範囲の拡大を進めるとともに、需給の不安定な野菜については、昭和五十五年度から、新たに、重要野菜需給調整特別事業を行うこととしている。
 野菜は、いずれの出荷経路をとるにしても、ほぼ全量が卸売市場を経由することとなるので、産地での「畑買い」等の商人の行動が全体としての卸売価格の形成に影響を及ぼすものではないと考えている。ただ、「畑買い」は、立毛中に取引されるものであるので、それが安い段階で購入された場合には農家の利益が商人に転化されることとなる(逆の場合は商人のリスクとなる。)が、これについては、農家の自覚と系統農協の指導力の強化にまつところが大きいものと考えている。
(3) 野菜供給安定基金の契約キャベツについては、台風等の影響による生育の遅れもあつて昭和五十五年一月には約八百トンの放出にとどまつたが、三月には約三千トンを集中的に放出し、野菜価格の安定にかなりの効果があつたと考えている。
 この事業は、災害等による不作に備え野菜を追加的に生産しておくものであり、通常は当該野菜を廃棄することとなるので、この事業の拡充については農業政策上及び財政上の観点も踏まえて慎重に検討する必要があるものと考えている。
(4) 野菜の消費上重要なウエイトを占めるはくさい、キャベツ等の重量野菜の加工保管については、単価が安いため、冷凍野菜、乾燥野菜等に加工して保管する経費が著しく割高となるという問題点があり、加工野菜として売買保管事業の対象とすることは経済的観点からも現実的でない。
 一般の野菜産地における計画的生産出荷については、野菜の安定的供給を図るため、今後とも一層努力することとしているが、災害等による不作時にのみ活用される契約栽培の拡大については前述のとおり慎重に検討する必要があるものと考えている。

二について

(1) 野菜指定産地の指定要件については、昭和五十一年に面積要件をそれまでのおおむね二分の一に緩和し、中規模産地も対象として指定を進めているところである。また、野菜供給の安定を図る上で中小規模産地の育成も重要であるので、野菜集団産地育成事業、特定野菜等価格安定対策事業等により地場野菜産地等の振興を図つているところである。
(2) 近年の地力の低下傾向等に応じた適切な土壌管理の推進を図るため、土壌調査、地力診断等を実施するほか、地域農業生産総合振興対策において、有機物増投、耕土改良等を拡充して実施しているところである。

三について

(1) 重要野菜需給調整特別事業における需要見込量については、その適正を期するため、生産、消費、流通等各方面の関係者の意見を十分に聴いて作成する考えである。また、生産出荷団体の作成する生産出荷計画については、作付けの段階で通常の不作にも対処できるようある程度余裕をみるとともに、出荷の段階で十分調整するよう指導することにより、この事業が野菜の需給の安定に資するよう配慮してまいりたい。
(2) 野菜価格安定緊急対策事業の昭和五十五年度予算額は、前年度より減少しているが、これは野菜供給安定基金に既造成資金があることを考慮したことによるものであり、事業実施のための資金は十分確保されている。
 野菜価格の安定は、生産者、消費者双方にとつて重要な事柄であり、今後とも長期的視点に立つて需要に見合つた計画的、安定的な生産出荷を進めるとともに、短期的価格変動に対しては適時適切な対策を講じてまいりたい。