質問主意書

第91回国会(常会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質九一第七号

  昭和五十五年四月四日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員鈴木一弘君提出酪農経営の安定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員鈴木一弘君提出酪農経営の安定に関する質問に対する答弁書

一について

(1)ア 一般的に、補助金(奨励金を含む。以下同じ。)に対して輸入国がとり得る措置としてガット上認められているものは、相殺関税を賦課することであるが、相殺関税を賦課するためには、

(ア) 補助金の交付の事実があること、
(イ) 補助金の交付を受けた物品の輸入により国内産業に実質的な損害が生じている等の事実があること、という要件を満たす必要があり、補助金の交付を受けた物品の輸入事実のみでは相殺関税を課することはできない。

   イ 乳製品の輸入によつて国内産業が損害を受けているかどうかについては、我が国は、主要乳製品については、昭和四十一年度より畜産振興事業団による一元輸入の対象としているほか、輸入貿易管理令上の輸入割当の対象とする等の国内産業保護措置を講じており、主要乳製品については、基本的にはこれらの措置によつて輸入品による国内産業の損害という事態が生じることは回避されているのではないかと考えているが、相殺関税の適用の可否について、更に事情を調査し、慎重に検討してまいりたい。

(2) カゼイン及び乳糖は国内生産がなく、本来それぞれ工業用、医薬品用等の固有の用途に供されるものであることから、他の乳製品に比し低い関税率が設定され、また、自由化品目とされているところである。
 なお、最近、一部において、脱脂粉乳等と競合するような使用の状況が見られるので、その輸入、使用の実態をみながら、必要に応じその対策を検討することとしたい。
(3) 乳製品にどの程度のココアが含まれていればココア調製品とみるべきかについては、国際的な解釈の問題でもあるので、国際的な場における検討をも含めて、更に慎重に検討してまいりたい。

二について

(1) 昭和五十四年十一月に公表した「昭和六十五年農産物の需要と生産の長期見通し」(試算)においては、牛乳・乳製品の需要は、従来のような高い伸びは期待できないものの、なお安定的に増加するものと見込んでおり、将来の酪農については、需要の動向に即応した生産が行われつつ、経営の合理化が更に進むものと考えている。
(2) 第四次酪農近代化基本方針については、昭和五十五年半ばに公表される予定の「昭和六十五年農産物の需要と生産の長期見通し」に即し、昭和五十五年度中に定める予定であり、この策定後、都道府県酪農近代化計画が定められる見込みである。
 第四次酪農近代化基本方針の策定に当たつては、現行の基本方針と同様、需要の動向に見合つた生産の確保、酪農経営の合理化のための生産性の向上その他酪農の近代化を図ることを基本的考え方としており、都道府県酪農近代化計画は、基本方針と調和するように定められることとなつている。

三について

(1) 最近における生乳需給の緩和にかんがみ、昭和五十四年度から生産者団体による自主的計画生産が実施されているが、その計画目標の設定に際しては、都道府県酪農近代化計画の生産数量目標が考慮されており、地域条件に対する配慮が払われているものと考えている。
(2) 現在、生乳需給均衡の回復を図るため、生産者、乳業者及び牛乳販売業者が一体となつた飲用牛乳の消費拡大事業及び生産者団体による生乳の自主的計画生産対策が推進されており、政府としても、昭和五十五年度において、昭和五十四年度と同様畜産振興事業団から生乳需給調整対策費三十三億円の助成を行うなど、積極的に支援することとしている。
(3) 現在、生乳需給は大幅な緩和状態となつており、限度数量を超過して発生した加工原料乳について財政措置を講ずることは、生乳の過剰生産を助長することとなるので、そのような措置をとる考えはない。

四について

(1) 我が国の乳製品を援助に使用することについては、国産乳製品の価格が国際価格に比して著しく高いことから財政負担が必要となり援助として必ずしも効率的でないこと、伝統的乳製品輸出国に対する影響を十分に配慮する必要があること等の事情があるので、今後慎重に検討してまいりたい。
(2) 乳製品の過剰在庫について、飼料用、学校給食用等への処分を年次計画に基づいて行うことは、多大の差額負担を要するため、これを財政負担により行う考えはなく、また、民間の負担により行うことも極めて困難であると考えている。

五について

 酪農経営は、他作目に比べ負債は大きいものの、規模の拡大に伴い、農業粗収入、農業所得及び資産額も増加してきている。
 酪農経営の負債対策については、従来から低利融資措置を講じているところであり、昭和五十五年度においては、酪農経営安定のための特別融通措置を畜産振興事業団の助成事業として講ずることとしている。
 制度資金の償還条件の緩和措置については、現行制度の下で、資金の種類及び借入者個々の実情に応じて対応してまいりたい。

六について

 御質問の栃木県酪農業協同組合の行つている乳価対策積立金等の措置については、当該組合の適法な決定手続により自主的に行われていると聞いているが、詳細につき調査の上、必要があれば県を通じて指導してまいりたい。