質問主意書

第91回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質九一第一号

  昭和五十五年一月十八日

内閣総理大臣臨時代理             
国務大臣 倉石 忠雄   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員吉田正雄君提出原子力発電所に就労する者の放射線被曝対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員吉田正雄君提出原子力発電所に就労する者の放射線被曝対策等に関する質問に対する答弁書

一について

 原子力発電所における各原子炉ごとの従事者の被ばく線量の積算値(以下「総被ばく線量」という。)は、関係電力会社を通じて調査した結果によれば、別表第一及び別表第二に示すとおりである。
 なお、昭和五十三年度における従事者の被ばく線量については、法令で定める許容線量を超えた者はいない。

二について

1 電力会社は、各原子力発電所における総被ばく線量についての管理目標値を定めているとは聞いていない。政府としても、炉型、保修・改造工事箇所等により事情が異なることから、原子力発電所単位の総被ばく線量についての管理目標値は、定めていない。
2 従事者の被ばくについては、法令により許容被ばく線量が三月間につき三レム及び許容集積線量が五(N-一八)レム(Nは年齢)と定められているが、電力会社等は、これを遵守するための一方法として被ばく管理上の目安線量として一日当たり百ミリレムを用いており、また、作業内容等に応じ一日ごとの計画被ばく線量を設定する場合もあると聞いている。
 政府としては、定期検査期間中の被ばく管理について電力会社から事前に説明を受けるなど、従事者の被ばく線量ができる限り低く抑えられるよう所要の指導を行つている。
3 全原子力発電所の年間の総被ばく線量については、原子力発電所の基数の増加に伴いある程度増加することもあると考えられるが、政府としては、通商産業省が実施してきた原子力発電設備改良標準化調査の成果も踏まえつつ、今後とも従事者の被ばく線量ができる限り低く抑えられるよう電力会社等を指導してまいりたい。
4 法令に定められている許容被ばく線量及び許容集積線量は、外部被ばくと内部被ばくとを加算したものについての基準であり、また、従事者の呼吸する空気又は飲用する水中の放射性物質の濃度についてもそれぞれの許容濃度が定められている。
 電力会社は、原子力発電所における管理区域のうち、空気中又は水中の放射性物質の濃度等が法令に定める値を超え又は超えるおそれのある区域を特に汚染管理区域として定めており、電力会社等は、この区域内で従事者に作業を実施させる際には、防護具を着用させる等被ばく管理を特に厳重に行つている。また、従事者の内部被ばくの有無は、従事者全員についてホールボディカウンター等による測定を行うことにより確認することになつており、昭和五十三年度には、全原子力発電所において、延べ約三万五千人の従事者が約十万回のホールボディカウンターによる測定を受けたが、有意な内部被ばくの例はなかつたと聞いている。

三について

1 請負事業者は、従事者に作業を実施させるときは、当該業務における安全又は衛生を確保するため、管理区域入退域手順、被ばく線量測定器の取扱い方法、各種防護具の使用方法等について教育を行つており、また、外部放射線が強い雰囲気における特殊な作業を実施させるときは、作業時間の短縮により被ばくを低減するため、モックアップ設備等による作業訓練を行つていると聞いている。
2 請負事業者は、放射線業務に従事していた者を雇用して放射線業務に従事させるときは、労働安全衛生法に基づき、当該労働者の被ばく歴を確認し、放射線業務に従事することによる被ばく線量及び集積線量が許容線量を超えないよう管理するとともにこれらを記録することとなつている。また、電力会社は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づき、下請労働者を含め、従事者について同様のことを行うこととなつている。
 なお、従事者の被ばく線量を一元的に登録管理することによつて、職場を変える下請労働者を含めた従業者の被ばく管理に万全を期す観点から、昭和五十二年十一月財団法人放射線影響協会に放射線従事者中央登録センターが設置されている。
3 請負事業者は、労働者を雇い入れたときは、労働安全衛生法に基づき、当該労働者に対し、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行わなければならないこととなつている。
 なお、電力会社は、下請労働者を従事者として指定するときは、当該下請労働者が放射線業務に関する安全又は衛生のための教育を受けていることを確認していると聞いている。
 放射線業務における不要な被ばくを防止することは、放射線業務における安全又は衛生のための教育を徹底し、放射線管理の責任者を選任して放射線管理を徹底することにより、可能と思われる。
4 下請労働者を含めた従事者に対する許容線量は、その安全と健康とを確保する観点から、年齢、性別等に応じて定められたものであり、また、電力会社等において用いられている被ばく管理上の目安線量は、この許容線量を遵守するための一方法として設けられたものである。したがつて、これらは、従事者の技能、知識等により区別して定めるべきものではないと考えられる。

四について

1及び2 東京電力株式会社福島第一原子力発電所第一号機の第七回定期検査が昭和五十四年十二月から昭和五十五年六月頃まで実施されるが、同期間中通常の検査のほかに、東京電力株式会社は、応力腐食割れ対策工事、給水スパージャー取替関係の工事等を行うこととしており、また、これらの工事内容等に応じた一日ごとの計画被ばく線量を定めていると聞いている。
 なお、同社は、当該給水スパージャー取替関係の工事の一日ごとの計画被ばく線量については、圧力容器内関係の作業にあつては千ミリレム、圧力容器外の作業にあつては三百ミリレムと定めていると聞いている。
3 通商産業省は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所第一号機の第七回定期検査を実施するに当たり、同期間中に実施される検査及び保修・改造工事について、同社から事前に説明を受けており、特に、給水スバージャー取替関係の工事については、その工事の方法、被ばく管理等の妥当性を通商産業省の原子力発電技術顧問会に諮つた上で、確認している。

別表第一 原子力発電所における各原子炉ごとの定期検査期間、運転期間、その他別の総被ばく線量〔昭和53年度〕 1/2

別表第一 原子力発電所における各原子炉ごとの定期検査期間、運転期間、その他別の総被ばく線量〔昭和53年度〕 2/2

別表第二 1/5

別表第二 2/5

別表第二 3/5

別表第二 4/5

別表第二 5/5