質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇号

元日赤従軍看護婦の慰労給付金制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年五月十日

二宮 文造   


       参議院議長 安井 謙 殿


   元日赤従軍看護婦の慰労給付金制度に関する質問主意書

 政府は、戦時衛生勤務に従事していた元日赤看護婦に対し、昭和五十四年度から慰労給付金制度を発足させた。
 しかし、制度が発足してから未だ日が浅いとはいえ、厳しい受給条件、低い給付水準に加えて、物価スライド制への配慮が欠けており、当初、元日赤従軍看護婦や関係者が期待していた「恩給制度に準ずる処置」からは程遠い取扱いとなつている。
 よつて、次の事項について政府の明確な見解を承りたい。

一 政府は、慰労給付金制度を創設するにあたつて、この制度の位置づけを、「恩給制度に準ずる制度」であると、繰り返し国会で答弁してきた。こうした趣旨から考えれば、恩給制度にある六十歳以上の旧軍人に適用されている加算年の年額計算への算入措置に準じ、少なくとも七十歳以上の高齢者について、同様の措置を講ずるようにすべきではないか。

二 慰労給付金の受給条件は、「昭和十二年七月七日以降の事変地または戦地において戦時衛生勤務に服し、もしくはこれに引き続き海外で抑留、留用されていた元日赤救護看護婦」であつて、「その期間が三年以上にわたり、かつ、旧軍人と同様の加算年を加えて、十二年以上に達する者」が適用の対象となつている。
 その結果、昭和十二年七月七日以前に召集された者、当時の台湾・朝鮮等に勤務していた者、さらに在勤年数三年未満の者は給付金受給の適用から除外されている。
 そこで、現行の受給条件を緩和し、当時、半ば強制的に外地勤務を余儀なくされ、青春を犠牲にした、これらの元日赤従軍看護婦に対しても、適用の対象とすべきではないか。

三 慰労給付金の年額は、在勤年数に応じて、最低十万円から最高でも三十万円、平均額では約十三万円という低額である。しかも、恩給制度にあるスライド制が導入されていない。
 最近の著しい物価の高騰は、慰労給付金の実質価値を急速に目減りさせている。給付額が低額なのに加えて目減りが大きければ慰労の意味がなくなることはいうまでもない。
 そこで、給付金の実質価値を維持することが必要であり、少なくとも、消費者物価の上昇率に見合つた目減り分を補てんすべきではないか。
 なお、政府は、スライド制の採用に関連して、「将来の著しい経済変動の時点で検討する」趣旨の国会答弁を行つているが、その趣旨は昭和五十六年度予算で善処すると理解してよいか。

四 慰労給付金の支給開始年齢は満五十五歳であり、受給権は本人限りとされ、死亡した場合には支給が打切られることになつている。
 しかし、前述のように、この制度が「恩給制度に準ずる」という見地に立つならば、不幸にして受給者が死亡した際には、恩給制度の扶助料の措置に準じ、残された遺族に対し、何らかの処遇をして然るべきである。また、慰労給付金制度の発足を待たずに、既に死亡された従軍看護婦に対しても、その遺族に処遇を考慮すべきではないか。

  右質問する。