質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

温泉保護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年五月七日

鈴木 一弘   


       参議院議長 安井 謙 殿


   温泉保護に関する質問主意書

 温泉は昔から疾病の治療・機能回復・健康増進等に有効とされ、わが国では国民の間で広く利用されてきた。
 公害・環境破壊や過密、機械化といつた現在の様な悪化し、かつ複雑な社会環境と構造の中で暮さなければならない国民にとつて、温泉の価値は従来に増して高くなつている。
 こうした温泉の、保護・利用の適正を図るため、現在温泉法が施行されているが、その法の目的が十分に達成されていない。特に大都市近郊の温泉地については、都市開発等の影響による枯渇や荒廃が顕著に見られる。このまま推移すれば、温泉の枯渇、荒廃がさらに進行する状況にある。
 従つて、温泉の保護を十分に考慮した施策が一層充実されるべきである。
 以上の観点から次の質問を行う。

一 国及び地方公共団体は、温泉保護のため、具体的にいかなる対策を現在講じているか。

二 大都市近郊の温泉及びその周辺地域の景観などを都市開発等による破壊や荒廃から護るためにいかなる具体策を講じてきたか。

三 (1) 都道府県知事は、温泉法第十一条に基づいて温泉涌出目的以外の土地掘さくを行つた者に対し、温泉に著しい影響を与えた場合、その影響を阻止するに必要な措置を命ずることができる、とあるが、この行政措置を命じたこれまでの具体例について、温泉名、措置の内容、年月日を明らかにせよ。
  (2) 同法第十一条の規定は、いわゆる事後対策である。これでは温泉は十分に保護されない。事前に影響があるかないかを調査して、必要な措置を行わせるべきではないか。
  (3) 同法第十一条を事前措置ができるように改正すべきではないか。

四 神奈川県秦野市の鶴巻温泉の件につき具体的に質したい。

(1) 小田急線鶴巻温泉駅前に最近、高層建築物の建設計画があり、この計画が実行されると、温泉地の景観が損なわれ、また温泉の採取などへの影響が懸念されている。この件につき、政府は当該建設計画の温泉への影響等について、どのように把握・認識しているか。
(2) この件につき、温泉の保護及び温泉地の景観保持の立場で政府はいかなる対策を講じる考えか。
(3) 温泉保護の理念に照らし、温泉の湧出以外の行為が温泉やその周辺地域の景観に著しい影響を与えるおそれがある場合は、国も積極的に当該行為が温泉等に与える影響を調査、把握した上で、当該建設業者または関係都道府県知事に対し、その影響を阻止、または最小限に止めるために、必要な措置を事前にとるよう行政指導をすべきではないか。
 従つて当該鶴巻温泉もそのような見地に照らし、適確な行政指導を行うべきであると考えるが如何。

  右質問する。