質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第一六号

郵趣に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年四月二十一日

二宮 文造   


       参議院議長 安井 謙 殿


   郵趣に関する質問主意書

 明治四年四月二十日に最初の普通切手として、竜文四種の手形切手が発行されてから一〇九年。国家的文化遺産である郵便切手、郵便はがき、あるいはそれらが使用された封筒類、初日カバー、消印等を収集する郵趣人口は、老若男女を問わず、四百万人とも、五百万人ともいわれており、落ち込みを続ける郵便財政を大きく下支えしている。従つて、政府は郵趣を度外視して郵便財政の好転は望めない時代に入つていることを深く認識し、真に収集家の要望に耳を傾け、郵趣動向を的確に把握するとともに、積極的に施策の改善に取り組むべきである。
 よつて、切手趣味週間に因む特殊切手発売の初日に際し、次の諸点について政府の明確な答弁を求めたい。

一 郵便財政に占める郵趣の貢献度について

(1) 最近年次における郵便切手及び郵便はがき等の収入総額を、それぞれ発行目的別、あるいは使用目的別に細目にわたつて報告願いたい。また、印刷等の製造原価総額は、それぞれに対応し、どうなつているか。
(2) 昭和五十四年三月十四日に発行された「全国電話自動化完了記念切手」(グラビア四色刷、額面五十円、シート構成二十枚)の一シート当りの製造原価は十六円六十九銭(つまり五十円切手一枚当り八十三銭四厘五毛)であるといわれているがどうか。また、これより高額、あるいは低額のものがあれば、その実例を報告願いたい。
(3) 発行される記念・特殊切手の九〇%以上が、その都度、収集家の手元に退蔵されるといわれている。これに普通切手等の分が加わるので、その退蔵総額は莫大で計り知れない。この際、政府はこれまでの郵趣に対する認識の欠如を率直に反省するとともに、施策の充実に努めるべきではないか。

二 記念・特殊切手の発売方法の改善について

(1) イギリス、フランス、西ドイツ、アメリカ等の郵趣の先進諸国では、記念切手を発行後、暫くは普通切手の代りに発売し、勤労者や学生が発売初日に無理しなくても、容易に求めることができるようにしているが、わが国においても、そのように改めるべきではないか。
(2) 東京中央郵便局の切手普及課が担当している記念・特殊切手の通信販売は、未だに、収集家の改善要望の声を無視し続け、発売一カ月前もの締切り日を設け、しかも、単片の二枚とか、三枚という少数は受け付けず、一シート単位でしか販売しない。郵趣の先進諸国では、数は自由であり、寄託金制度等を設け、自動的に少数の販売に応じている。現在の一シート単位での販売方法は早急に改めるべきではないか。
(3) (2)に関連して、コイル切手(ロール切手ともいう)とか、一部の半端な額面の普通切手を求めようとする場合には、わざわざ大都市の郵便局まで足を運ばなければ入手できないのが実情である。収集家から要望の多い普通切手の通信販売も行うようにすべきではないか。

三 新コイル切手の発売方法の改善について

(1) 昭和五十四年四月二日から、一部の郵便局で十円、二十円、五十円、百円の四種類の新しいコイル切手が自動販売機により発売されているが、その発売局、製造枚数、これまでの発売枚数を、それぞれ報告願いたい。
(2) 本年十月まで割当て制を採用することにしていると聞くが、その理由は何か。また、今後の発売計画も明らかにしていただきたい。
(3) 割当て制を採用し、発売局を限定していることから、目下、品薄状態にあり、多くの切手店では、これらの未使用切手を額面の三倍から五倍で販売しており、初日用日付印が押印された十円と百円の初日カバーに至つては千円以上の値段を付しているところもある。こうした実情を把握しているか。
(4) 郵趣の先進諸国では、コイル切手は自動販売機で発売するためではなく、窓口で担当者が一枚二枚と売り易くするために製造している。また、大口利用者には一巻単位で発売し、使用の便を図つている。郵趣の健全な普及・育成の観点からも、今日のような発売の在り方は早急に改めるべきではないか。

四 切手帳の積極的な販売について

 諸外国では、郵便切手を家庭に買い置きし、いつでも郵便物の差し出しができるようにする「郵便切手帳」の普及に努めている。わが国にも同じような切手帳はあるが、周知の不徹底、組み合せ方の不合理、あるいは発売局を限定している等の理由から、ほとんど普及されていないのが実情である。これらの点を早急に改善して、積極的に発売し、利用者の便を図るべきではないか。

五 普通切手の図案の統一化について

 わが国の普通切手の図案には統一性がない。人物があつたかと思えば、動物、植物、仏像もある。また、三十年前の図案もある。よくいえば「バラエティに富んでいる」が、大多数の収集家の目には「支離滅裂な構成」としか映らず、諸外国から「普通切手の開発途上国」「世界の郵趣界の不思議」と酷評されている。世界の大勢は、統一した図案でまとめるのを原則としており、四、五年ごとに全面的な図案の改正を行つている。例えばイギリスやフランスでは同図案で額面ごとに刷色を変えており、カナダやオーストラリアでは同じ構図の中に違つた図案を組み入れている。こうしたやり方を手本に、普通切手の図案の統一化を図るべきではないか。

六 「銭位」の切手等の取扱いについて

(1) 現在、使用禁止の措置が講じられている切手等にはどのようなものがあるか。また、その禁止規定はどうなつているか。
(2) 「銭位」の切手等の強制通用能力をめぐつて、しばしば疑問が提起されるが、今日の通貨価値からみて、これら「銭位」の切手は使用禁止等の措置を講じ、すつきりさせるべきではないか。

七 広告入りはがきの発行について

(1) 昭和二十四年八月から昭和二十七年五月にかけて、「広告入り消印」を実施したことがあるが、その実施要領はどうであつたか。また、使用標語にはどのようなものがあつたか。
(2) 「広告入り消印」は、利用度が高まるにつれて、郵便物に差出人の予期しない広告が現われることに非難が浴びせられたために廃止されたというが、今国会に提案されている「郵便法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれている「広告入りはがき」も、廃止に追いやられる結果とならないか。
(3) 「広告入りはがき」への広告挿入はどのような形式にする考えか。
(4) 「広告入りはがき」の料金は「普通はがき」に比べて、どの程度安くする考えか。
(5) 多くの収集家から「広告入りタバコのように、『広告入りはがき』が知らない間に、次から次へと発行されたら、収集ができない」という声が寄せられているが、どう対処する考えか。

八 特別日付印(記念スタンプ)の押印サービスの改善について

(1) 名所・史跡・天然記念物等の所在地の郵便局において使用するその地の代表的な風景、産物等を描いた「風景入り通信日付印」の使用局が二三〇〇局もあるのに対し、国家的、国民的な重要記念事項、あるいは規模の大きな博覧会開催等に因み、期間を限つて使用する「特殊通信日付印」の使用局は、多くても一〇六局に絞つているが、容易に収集できるように使用局を拡大すべきではないか。
(2) ハトの印をあしらつた「初日用通信日付印」の記念押印は、現在、切手の発売初日に限定されているが、諸外国の例に倣つて、一週間ぐらいは押印するように改めるべきではないか。また、さらに進めて、米国等で行つている、切手発行後に収集家が封筒等に貼り付けたあと、期間を限つて記念押印を行う扱いも考えるべきではないか。
(3) ローカル的な記念行事・催し等の際に関係郵便局、あるいは切手展の会場等に開設する郵便局臨時出張所において、期間を限つて使用する「小型記念通信日付印」(小型スタンプ)を多様化し、収集対象の拡大を図るべきではないか。
(4) 「小型記念通信日付印」の記念事項名称の表現をめぐつて、しばしば申請者との間にトラブルがあるようであるが、その名称基準はどうなつているか。

九 普通通信日付印の改善について

(1) 「普通通信日付印」の中で、よく使われている「櫛型印」は、明治三十九年から実に七十五年間も、同型式で使用されているが、多くの収集家から「美的感覚に欠け、国家的文化遺産である切手等を台無しにしている」との声が絶えない。もつと美しいものに変えるべきではなか。
(2) 「標語印」は、現在、「郵便事業に関するもの」に限定しているようであるが、この多様化についても検討すべきではないか。

十 海外施策の充実について

(1) 現在講じている海外施策にはどのようなものがあるか。
(2) 民間主催の切手展に、昨年はアメリカ郵政局の「月の郵便局」が、本年は国連本部の郵便局が、それぞれ特別ブースを出し、新切手の額面販売や記念カードの贈呈等を行い、大変な人気を博したが、わが国としても、郵趣の国際交流に積極的に取り組むべきではないか。
(3) 日本語版による「世界切手カタログ」の出版が渇望されているが、郵政省の所管する公益法人等に、その出版を検討させてはどうか。

十一 民間切手展に対する助成について

(1) いずれの郵趣団体でも、切手展の開催に要する会場費、記念カード作成費等の諸経費の捻出に腐心しており、その助成を求める声が強い。助成制度の創設について検討すべきではないか。
(2) 将来の方向として、一定地域ごとに展示場を備えた郵政会館のような施設を整備し、低廉な賃料により、切手展のために貸し出しが行えるようにすべきではないか。

十二 収集家の意見反映機会の増大について

(1) 郵政審議会並びに同専門委員会のメンバー構成について再検討を行い、現在発行されている切手等を収集している人達をそれに加え、意見反映機会の増大を図るべきではないか。
(2) 広範な地域に会員組織を有する民間の郵趣諸団体から、郵趣に関する意見を聞く会合を、適宜に開くようにすべきではないか。
(3) 郵政省郵務局切手室に「郵趣に関する意見箱」(仮称)を設置するようにしてはどうか。

十三 財団法人全日本郵便切手普及協会(全郵普)の在り方について

(1) 「全郵普」の事業内容をめぐつて、「公益事業よりも、収益事業が中心になつている」との批判が絶えないが、業務別に最近年次の事業実績を詳細に報告願いたい。
(2) 民間で十分に対応できる商品販売から手を引かせ、収集家をブレーンとした普及・育成活動に専念する組織に改組させるべきではないか。
(3) 使用済切手を「全郵普」に一括払い下げているが、その払い下げ価格及びその根拠規定はどうなつているか。

十四 東京国際切手展の対応について

(1) 財団法人日本郵趣連合の呼びかけで組織された「東京国際切手展組織委員会」の主催により、いわゆる「切手のオリンピック」が、昭和五十六年十月九日から十八日までの十日間にわたつて、東京で開かれると、海外に向けて案内されているが、その概要を報告願いたい。
(2) 開催諸経費は四億円とも、五億円ともいわれているが、資金計画はどうなつているか。
(3) 諸外国の例では、開催資金調達のため、寄附金付きの記念切手を発行したところが多いが、その予定はあるか。
(4) フレーム(切手展示用額縁)製作費を郵政省が丸抱えするといわれているが、その所要額、予算上の処理はどうなつているか。
(5) 海外向け案内書の発送状況並びに参加申込み状況は、現在、どうなつているか。
(6) 国内向け案内書が未作成のようであるが、どのような形で周知徹底を図つているか。
(7) 国内の出品資格は、ここ十年来の「全日本切手展」において、銀賞以上に輝いた者に絞られているといわれているがどうか。もしそうだとすれば、出品有資格者は何人いるのか。

  右質問する。