質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第五号

国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の運用の実態に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年二月十九日

秦 豊   


       参議院議長 安井 謙 殿


   国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律の運用の実態に関する質問主意書

 成田空港建設に伴う事業認定・特定公共事業認定の各取消請求事件(昭和四十五年(行ウ)第四八号・昭和四十六年(行ウ)第一〇五号)が、東京地方裁判所民事第二部(藤田耕三裁判長)で、建設大臣を被告として係属中であると聞く。また、松原・下筌ダム建設に伴う事業認定無効確認請求事件(昭和三十五年行第四号)が、東京地方裁判所民事第三部に同じく建設大臣を被告として係属したが、この事件において裁判所(司法権)と被告側の指定代理人(行政権)との間に発生したものと同様の事態発生への危惧が、成田空港建設事件にもあるのではないかと、土井たか子代議士が昭和五十四年十一月十六日付の質問主意書(質問第四号)で既に指摘されている。
 成田空港建設が、行政権乱用の所産であるといわれて久しい。行政権の乱用から行政作用の法適合性を保障し、国民の権利救済を図るべき行政事件訴訟において、司法権と行政権の間に癒着があつてはならないことは、いうまでもない。
 そこで、成田空港建設事件に係る「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」の運用の実態に関し、内閣答弁書(内閣衆質八九第四号)をベースにして、大平正芳首相の御見解を以下賜りたい。

一 司法権と行政権との人事交流について

(1) 訟務担当の検事は、どのような手続きにより、裁判官の中から採用されているのか。
(2) 訟務担当の検事は、どのような手続きにより、弁護士の中から採用されているのか。
(3) 法務省の訟務担当の検事のうち、裁判官出身者、弁護士出身者、その他の比率を示されたい。
(4) 「法曹一元の理念」の概念規定の具体的な内容を示されたい。
(5) 法曹一元の実現を阻んでいる要因を列挙されたい。
(6) 裁判官が訟務担当の検事となり、再び裁判官となることについて、日本弁護士連合会の同意、了解が得られているのか。
(7) 裁判官が裁判事務以外の法曹の職務を経験することは、その識見を高める意味で有益とのことであるが、弁護士としての職務の経験はどのようにして確保されているのか。
(8) 検察官及び弁護士が、それぞれ裁判官・弁護士及び裁判官・検察官としての職務を経験することは、どのようにして確保されているか。

二 成田空港建設事件の被告筆頭指定代理人の小川英明法務省訟務局参事官が関与している事件は、東京地方裁判所民事第二部(行政部)では、なぜか同事件のみであるという。

(1) 東京地方裁判所民事第三部(行政部)に現在係属している事件について、法務大臣の指定代理人が関与している全事件の事件名、事件番号及び原・被告名をそれぞれ示されたい。
(2) 右において、小川英明参事官が指定代理人となつている事件は、それぞれどれか。

三 小川英明参事官の成田空港建設事件の指定代理人としての適格性には問題がないとのことであるが、

(1) 指定代理人としての適格性の判定基準を具体的に示されたい。
(2) 成田空港建設事件で被告指定代理人が提出した書証(乙第四七号証)には、虚偽表示があり、立証趣旨が犯されている。立証趣旨を犯す虚偽表示を含む書証をそのまま証拠として維持することが、指定代理人としての適格性が欠如していることにならないのであれば、その理由は何か。

四 藤田耕三裁判長と小川英明参事官との関係には問題がない、とのことであるが、

(1) 右両氏が、二人の連名で「不動産訴訟の実務」を編集し、昭和五十三年三月三十日付で出版するに至つた経緯を示されたい。
(2) 藤田耕三裁判官が成田空港建設事件が係属する東京地方裁判所民事第二部の裁判長となつた年月日、それが内定した年月日をそれぞれ示されたい。
(3) 小川英明裁判官が、成田空港建設事件の指定代理人になるべく法務省訟務局に配属になつた年月日、それが内定した年月日をそれぞれ示されたい。

  右質問する。