第87回国会(常会)
答弁書第八号
内閣参質八七第八号 昭和五十四年四月二十七日 内閣総理大臣 大平 正芳
参議院議員秦豊君提出憲法第三十二条と昭和四十二年改正土地収用法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員秦豊君提出憲法第三十二条と昭和四十二年改正土地収用法に関する質問に対する答弁書 一について (1)から(3)まで及び(6) 現行憲法下における行政訴訟制度は、行政に関する具体的紛争についての司法裁判所の判断を通じて裁判による国民の権利の救済を図るものであるとともに、行政作用の法適合性を保障しようとするものである。
二について (1)から(3)まで 「当事者公平の原則」という原則が、訴訟手続において当事者双方が公平に扱われなければならないということを意味するのであれば、それは民事訴訟の基本原則であり、この原則は、行政事件訴訟手続においても妥当する。
三について (1)から(4)まで 昭和四十二年法律第七十四号による土地収用法の改正においては、土地等に対する補償金の額の算定の基準時を事業の認定の告示の時とし、事業の認定の告示があつた後、土地所有者等は、権利取得裁決前であつても、起業者に対し、補償金の支払を請求することができることとし、土地所有者等の利益の保護を図るための措置を講じたものである。改正後の土地収用法の体系の下で同法第七十一条の規定によつて算定される補償金の額は、憲法第二十九条第三項に規定する正当な補償である。
四について (1)から(3)まで 収用又は使用の裁決の申請及び明渡裁決の申立ての期限については、土地調書の作成等の手続に一定の期間を必要とすること、土地所有者等の権利関係を早期に安定させることが望ましいこと等を勘案して定められている。
五並びに六の(1)から(8)まで及び(11)について 土地等を収用される者が事業の認定又は収用の裁決に関し不服がある場合、行政事件訴訟法等の定めるところにより訴えを提起し、その違法性について争うことは可能であり、土地収用法第七十一条の規定が右の訴えの提起に何らの制約となるものではない。
六の(9)及び(10)について 土地収用法に基づく事業の認定は適正に行われているところであるが、昭和三十九年五月二十二日建設省告示第千三百五十四号により行つた事業の認定が取り消された例が一件ある。 |